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賢治と農

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2024.05.19
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#宮沢賢治 #AIイラスト




一〇六三

五、九、

これらは素樸なアイヌ風の木柵であります

えゝ

家の前の桑の木を

Yの字に仕立てて見たのでありますが

それでも家計は立たなかったのです

四月は

苗代の水が黒くて

くらい空気の小さな渦が

毎日つぶつぶそらから降って

そこを烏が

があがあ啼いて通ったのであります

どういふものでございませうか

斯ういふ角だった石ころだらけの

いっぱいにすぎなやよもぎの生えてしまった畑を

子供を生みながらまた前の子供のぼろ着物を綴り合せながら

また炊爨と村の義理首尾とをしながら

一家のあらゆる不満や慾望を負ひながら

わづかに粗渋な食と年中六時間の睡りをとりながら

これらの黒いかつぎした女の人たちが耕すのであります

この人たちはまた

ちゃうど二円代の肥料のかはりに

あんな笹山を一反歩ほど切りひらくのであります

そして

ここでは蕎麦が二斗まいて四斗とれます

この人たちはいったい

牢獄につながれたたくさんの革命家や

不遇に了へた多くの芸術家

これら近代的な英雄たちに

果して比肩し得ぬものでございませうか









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最終更新日  2024.05.19 04:02:20
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