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#宮沢賢治 #AIイラスト
一〇六三 五、九、 これらは素樸なアイヌ風の木柵であります えゝ 家の前の桑の木を Yの字に仕立てて見たのでありますが それでも家計は立たなかったのです 四月は 苗代の水が黒くて くらい空気の小さな渦が 毎日つぶつぶそらから降って そこを烏が があがあ啼いて通ったのであります どういふものでございませうか 斯ういふ角だった石ころだらけの いっぱいにすぎなやよもぎの生えてしまった畑を 子供を生みながらまた前の子供のぼろ着物を綴り合せながら また炊爨と村の義理首尾とをしながら 一家のあらゆる不満や慾望を負ひながら わづかに粗渋な食と年中六時間の睡りをとりながら これらの黒いかつぎした女の人たちが耕すのであります この人たちはまた ちゃうど二円代の肥料のかはりに あんな笹山を一反歩ほど切りひらくのであります そして ここでは蕎麦が二斗まいて四斗とれます この人たちはいったい 牢獄につながれたたくさんの革命家や 不遇に了へた多くの芸術家 これら近代的な英雄たちに 果して比肩し得ぬものでございませうか
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最終更新日
2024.05.19 04:02:20
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