|
カテゴリ:A Whole New World
前回の話の続きもしないまませわしい時間がやってきて、気がつけば7月も残り少ない。 私の新しい町は今曇っていて気温は20℃である。ここに来て1週間ほどになるが今夜が一番夏らしく、また夕方の雨のせいか少し湿度がある。 とうとう私は東京を離れ北海道にやって来た。これまでも移転の多い人生だったし新しい土地での暮らしはいつでも魅力的。これはきっと年齢に関係なく持ち続ける私の気質なのだろうと思うが、実は今回、自ら北海道を選んだにも関わらずここに来ることをまるで遠い外国にでも行くような違和感を持っていた。はっきりとした理由は見つからないが、とにかく少し尻ごみしていた。 引越し屋さんが私の荷物をすべて運び出してからも、私の持ち物はひとつもなくなった東京の家から数時間去ることができなかった。家中に漂う思い出を、やがて訪れるハウスクリーニングに全て消し去られるのかと思うと寂しかった。 日が暮れて、街の明かりだけが部屋をうっすらと照らす中で私は別れの時を悟り、およそ7年を過ごしたこの家のドアを閉めた。エレベーターがロビーに下りつくまで私は、あの部屋で作られた思い出をできるだけたくさん思い出そうとしていた。 その夜は深夜まで、一泊したホテルルームからそのライトが消えるまで東京タワーを眺めていた。大好きなこれも、もう見られなくなるんだなと思いながら。 そうして、私は翌朝向かう新しい町に思いを馳せる余裕もなく、土壇場で自分がどんなに東京を愛していたかを知り、切ない気持を抱いて眠りについたのだった。 #nowplaying お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
July 25, 2012 03:57:22 AM
コメント(0) | コメントを書く |