|
カテゴリ:歩く図書館と本の虫
人一人の装束を整えるには九人の仕立屋を必要とする。
全てを示すは、九告鐘。 九告鐘は、死者を葬送する教会の響き。 九告鐘は、人一人。 というわけで、1930年代最高のミステリー小説の一つとされる、ドロシー・L・セイヤーズの『ナイン・テイラーズ』を読みました。 冬将軍の去った、沼沢地方の領主が亡くなり、彼の者の亡骸を埋葬すべく、領主一家の墓を掘ったところ、身元不明の遺体が発見される。 一体誰の遺体なのか? 何故、領主一家の墓に埋葬されていたのか? 教会を守る老牧師は、去る年の瀬、偶然交流をもったピーター・ウィムジイ郷を招請する。 と書くと、ここから物語が始りそうですし、実際物語の本筋が始るのはこのシークエンスなのですが、実はここにいたるまで88頁にもわたって、老牧師=ヴェナブルズの元にピーター卿が偶然訪れ、転座鳴鐘に狩り出される件が書かれています。 この導入部、転座鳴鐘術、すなわち教会の鐘の鳴らし方の蘊蓄に満ちていてなかなかマニアックな印象を与えるのですが、これが意外と面白いです。なにより、この導入部ではキャラクターの紹介と、そして落ちに繋がっているのですから、本筋に入らない、といって飛ばすことはできないですね^^; そして、本筋の方ですが、これがなかなか面白いです。なんとも言い難いオチといい、名作と言われるだけの事はありますね。 このようにプロット自体は大変面白いのですが、何しろ少々読みにくいというか、独特というか、そんな文章の作り方をしているので読みきるのに時間がかかってしまいました。 秋の夜長にオススメする逸品です^^ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2006/11/13 09:27:14 PM
コメント(0) | コメントを書く
[歩く図書館と本の虫] カテゴリの最新記事
|
|