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カテゴリ:歩く図書館と本の虫
山本弘のハードSF小説です。
また様々な超常現象の見本市のような、超常現象小説でもあります。 物語は、一人の女性が、神の存在が明らかになり、神が何を考えているかについて一つの有力な仮説が世間にひろまった頃、神の顕在と加古沢黎の引き起こした事件について回想するというもので、形式は回想録形式。 この冒頭がぐっと読者を引きつけますね。 神の顕在? 神の真意? 加古沢黎の事件? この三つが物語の大きな骨子であることを読み手に伝えることで興味を引くように作られているのですが、実際私は以後、ずっとこの3つのポイントに興味を惹かれて読み進めていきました。 様々な超常現象の紹介(と学会会長の面目躍如!)や、事件の紹介が最終的に上記三つのポイントに集束していくため、読み始めるとなかなかとまらない。ネット社会の描写も面白いですしね。日本のSFってあまり読んだことはないのですが、これは非常に面白く、かつ読みやすいSFで好感がもてました。ストンと胸におちる結末も良い感じです。 テーマは冒頭からも明らかなように、『神』とはなんぞや、実在するとしたらどんな存在なのか、という点にあります。瀬名秀明の『Brain Valley』と同じテーマといえるかもしれませんね。 いずれにしても同じようなテーマとはいえ、アプローチは違います。『Brain Valley』は脳の存在に比重を置いているのに対し、こちらも広い意味では脳を扱っているといえるかもしれませんが、コンピュータというものに焦点をあてている感じがします。 にもかかわらず、二つの作品とも、同じテーマを書くにあたって、同じような素材を使っていることが興味深いですね。エリアンアブダクションや人工生命といった点です。 両方の作品を読んで、私自身妙に納得させられるところがあったことを考えると、日本的に神という存在を考えると、同じような素材から着想を得やすいところがあるのかもしれないなあと思った次第です。 この作品も面白くて好きですし、ブレヴァレも好きなのでどうしても比較してしまうのですが、読みやすさ筋の理解しやすさでは『神は沈黙せず』に軍配が上がるかな。ただし、クライマックスの展開はブレヴァレに軍配があがるかな、といった感じですね^^; 山本弘氏といえば、個人的にはと学会とか、グループSNEといった印象も強いのですが、昨今ではSF小説家としての側面が強くなってきたようで、結構評判の良い作品を頻出しているようです。今度他の作品も読んでみようかな? お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2007/01/20 02:53:52 PM
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