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カテゴリ:歩く図書館と本の虫
前に書評を書いてからだいぶ経ってますので、あれから読んだ本は様々あるのですが、今日はその中でもデイヴィッド・ブリンの作品をピックアップします。ブリンは様々な作品を書かれているSF小説家ですが、私が読んでいるのは知性化シリーズですので、これについてです。
知性化シリーズの設定はこんな感じ。 五つの銀河系の共同社会のほぼすべての種族は、始祖と呼ばれる失われた種族から連綿と知性化されてきた種族である。知性化を果たした知性生物がさらに別の準知性種族を知性化し、知性化された種族は類族として、知性化してくれた主族にかなりの期間契約奉仕をする。契約奉仕期間を終えた類族は、さらに準知性種族を知性化し、彼らが類族となり・・・と延々と知性化が続いていく世界。 そんな五つの銀河系の共同社会の中、まれに主族の導きなくして知性化を果たした種族が存在する。 それが宇宙の鬼子(ウルフリング)。 この物語は宇宙の鬼子としてもっとも新しく発見された種族、地球の人間が五つの銀河系の共同社会を震撼させていく様を描いたものである。 地球の人間は、すでにイルカ、チンパンジーの2種族の知性化を果たしているが、主族なく(あるいはかつていたかもしれない主族に放擲されながら)知性化を果たしたこの種族を敵視する列強諸国は多く、地球の味方はごく少数。 にもかかわらず地球は、列挙種族の思いもよらぬ発見を成し遂げ、ますます苛烈な環境に追い込まれていく・・・。 スタータイド・ライジング 邦訳されている『知性化シリーズ』の第一作目。 上下巻に分かれたなかなかの分量の作品ですね。 偉大なる『始祖』に連なる可能性がある、謎の漂流船団と接触を果たしたばかりに列強種族に追い回される羽目になった、人間・ネオドルフィン・ネオチンプの乗った船、ストリーカー号が追いつめられキスラップという惑星の海に逃げ込んだところから物語は始まります。 ストリーカーの発見の顛末は、おそらくこの前の作品である”Sun-Diver”で描かれていると思うのですが、こちらはまだ邦訳されていないようです。いや、それから邦訳してほしいんだけど^^; しかし、第一作目を読まずともいきなり物語に引き込まれるのはさすがというべきでしょうか。 ストリーカーの乗組員のほとんどが知性化されたイルカ、ネオドルフィン族なので物語も彼らの視点が中心になっていきます。 列強諸国がストリーカーを手に入れようと大艦隊戦を繰り広げている中、キスラップからいかに脱出するか。物語はそこに収斂していきますが、その過程でまたもストリーカーはある大発見をしてしまいます。とにかく手に汗を握る展開と、どことなく明るいというか、地球の種族に輝かしさを感じさせる展開が非常に読んでいて気持ちいいですね。 ちなみにブリンは日本文化に対しても相当な思い入れがあるらしく、俳句や禅の精神がでてくるのも面白いところ。日本人クルーも乗っていてなかなか活躍してくれるのもたのしいところです^^ 知性化戦争 こっちは2作目なのですが、実は私はこちらを先に読みました。 こちらは、ストリーカーの発見が地球にもたらした影響を描く作品とでもいいますか、ストリーカーは名前だけが出てきて、結局どうなったかは最後までわかりません。 舞台は地球の植民星ガース。ストリーカーの発見から目の敵にされるようになった地球はいまや列強種族の攻勢おされる一方。そんななか、鳥ににた列強種族グーブルーがガースを侵略してきます。 しかし頼みの綱の主族、人間は最初期のグーブルーの毒ガス攻撃でいきなりほとんど無力化してしまいます。そうなれば出番は類族であるネオチンパンジーに譲られます。 地球の数少ない味方であるトリックスター、ティンプリーミー大使の娘アサクレーナらに率いられたネオチンパンジーたちがグーブルーたちを追い出すために活躍していくのが非常に面白い作品です。 前作のさらに倍に及ぶような分量なのに、ものすごい勢いで読めてしまう一級のエンターテイメント作品ですね。 アサクレーナもいいキャラをしていますが、一番男前なのはネオチンプのファイベン・ボルジャー。人間の登場人物はイマイチ見劣りするくらいの大活躍を見せてくれます。アサクレーナの父ウサカルシンや、地球の敵対種族たるテナニンの大使コールトも良い味を出しています。味方側だけでなく、敵役のグーブルーもなかなか魅力的な連中で、ちょっとだけ最後の方ではグーブルーの某キャラにちょっと救いがあったら良かったのになあと思ってしまうくらいです^^ そして気恥ずかしくなるくらい手放しの大団円。これには思わずほおもほころびます。 オススメ^^ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2007/10/03 09:25:29 PM
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