|
カテゴリ:書評
早稲田大学で心理学の博士をとり、今は広島大学で教える若手の研究者が、学位論文に手を加えただけで出した、純然たる学術書。産業・組織心理学を専門に研究して、臨床に応用しているという感じの人かな。
まだ読んでいる途中なのだが、3000人とか、7000人とかのサンプルを集めて詳細な質問紙調査を行い、精緻にデータ解析を行ってあって、ほとほと感心する。説得力も十分だ。 職務ストレスを、ストレッサー(質的負荷、量的負荷)とストレス反応(疲労、抑うつなど)に分解して因果関係を探り、さらにどういうコーピング(対処)が有効かをストレッサーの種類別に詳細に研究してある。考えられるコーピングの種類を、「積極的に問題解決する(立ち向かう)」「逃避する」「他者からの援助を求める」「あきらめる」「行動や感情を抑制する(しばし我慢する、性急な行動に出ない)」という5種類に分類してあって、大まかに言うと、「逃避する」「あきらめる」という対処の仕方だとかえって疲労や抑うつが増してしまうのだそうだ。で、有効度が高いのは「性急な行動に出ないでしばし我慢し、周りの人に相談して援助を得ながら、積極的に立ち向かう」というパターンだという。 うーーーーん。なるほど。直感的にはそうかなと思うことだけど、精緻なデータの裏づけをもってそう言われると、感心しきり。 この論文を読みこなすにあたっては、少し前に読んだ産業・組織心理学の教科書と、最近勉強した統計学の知識が非常に役立っている。そのへんを勉強してなかったら読めなかっただろう。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2005年07月27日 09時40分34秒
[書評] カテゴリの最新記事
|
|