|
カテゴリ:カテゴリ未分類
今日、私の恩師の演奏会がありました。彼はもう80歳をこえています。でもまだ現役で演奏活動を続けておられます。技術的に早い音符の動きなどでは指がややまわりにくくなったり、記憶力が衰えてきて覚えにくい曲などは最近では必ず私に譜めくりを頼まれます。でも、先生の音は本当に素晴らしい。音が空間に漂って我を忘れるほどここちよいきらめく瞬間があります。年輪を重ねていなければ出せないような音。
今日の演目はオールドビュッシーで、初期の作品から晩年(晩年といってもドビュッシーは47歳のころから体調を崩して後に直腸がんになって56歳で亡くなっているのだけれど)の作品まで。後半の最後の3曲はとても悲しい静かな曲でしめくくられました。 前半は客席で聞き、後半は先生の隣に座って数曲だけ譜めくりをしながら聞きましたが、今日の演奏は本当に素晴らしかったです。フランスものは先生がもっとも得意とする分野で、特にフォーレとドビュッシーは先生のおハコです。それにしても、80歳をこえてもなお弾き続けていられるというのはすごいことです。ローマ法王と同じくらいの年令なんですから。確かにテクニックは若い全盛期にくらべればつらそうなところもあり、記憶力がぶっとぶ瞬間もありますが、それでもあの集中力はすごいです。先生の心臓にはペースメーカーが入っているんです。演奏していないときは、本当にお年寄りなんです。紙のような軽いものを持つ手もふるえてしまうくらい、、、。 老いて記憶力が低下して暗譜で弾けなくなったって、楽譜をおいてあの素晴らしい演奏を聞かせてもらえるなら、それだけでも我々は幸せです。古き良き時代を生きてこられた先生の貴重な演奏をできるだけ長く聞きたい。この貴重な瞬間をできるだけ長く共有したい。きっとこの最悪の天候条件にもかかわらず客席がほぼ満席になるほどのお客さんはそんな思いで先生のコンサートに足を運んできたんだろうなと思いました。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2004.01.30 21:07:54
|