カテゴリ:読書
前のお買い物マラソンで購入して、昨日読み終わりました。 岩波文庫的 『月の満ち欠け』。 ベテラン作家 佐藤正午の直木賞受賞作です。 長崎在住の作家さんで、中央文壇につてがないためか、 大きな賞を逃してきた過去があります。 なので、ファンとしては本当にうれしかったですね。 ここ数年、ありがちですが、 選考委員よりずっといい作品を書いている人が落選という、 笑えないお話。多かったので。 さて、単行本は姉妹に貸したまま返ってこないので 文庫版を買い換えました。まあ、解説が伊坂幸太郎だったというのもあり。 装丁が「岩波文庫的」というのもあり。 私はこういう遊び心商品に弱いです。 以下、未読の方は何も先入観を持たずに読んでいただきたいです。 飛ばしてください。 私も単行本は佐藤正午の最新作、直木賞受賞という知識のみで読みました。 **************************************** 人は人をどこまで愛することができるのか―。 そもそも、愛とは何なのか―。 古今東西、ある種の小説のテーマです。 それを手練れの現代作家が描くと、 一筋縄ではいきません。 ストーリーは小山内堅という初老の男性が上京し、 1組の親子と待ち合わせるところから始まります。 さほど親しくなさそうな両者。 その親子、特に娘の態度が不思議。 なぜか、小山内に対して挑戦的です。 少女は小山内の亡き娘の記憶を持っているということなのですが、、、。 前世の記憶を持つ少女、困惑する親、 度重なる不幸な事故。 現在、過去と錯綜する時間、 複数の視点。 生まれ変わりという、一見すると荒唐無稽なストーリーに リアリティを持たせ、 忘れがたい作品に仕上げてあります。 決してファンタジーにも、おきれいなだけのラブストーリーにも なっていないところが佐藤正午らしい。 切なく、胸を締め付けられるストーリーですが 作者の目は公平。 恋愛の持つ残酷さ、排他性、他者に対する無神経などもしっかりと描かれています。 小説の終盤に ウラジミール・ナボコフの『ロリータ』がちらっと出てきます。 そこでは触れられていないのですが 実はあの作品にも生まれ変わりの話が出てきます。 そのほか、与謝野晶子、吉井勇、『アンナ・カレーニナ』など 様々な文学作品がセンスの良い使われ方をしています。 本好きにはおすすめです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2019.11.29 21:15:48
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