カテゴリ:うつくしいもの
これはしばらく前に大徳寺を歩いた時にすぐ近くで撮った扉です。アルバム『大徳寺 京都紫野』に入れようかとも思ったのですがこれが入ると全体の調子が崩れそうなので後日アルバム『つちをみる』のほうに入れました。 鉄の簡単な扉に荒々しく赤い錆び止めペンキが塗られているのですが、手に触れるあたりを中心に自然に塗装の剥げた跡も、また傷からひろがる錆びの調子も美しいものです。裏側にはおそらくL字鋼で補強されているのでしょう。中央で交差するこれを打ち付けたリベットのリズムもなんとも調子が強く印象的でした。 室町時代から桃山時代に根来と呼ばれている美しい漆器があります。根来の確かさはまずそのかたちにあるのですが、上塗りの朱漆が長年の使用で磨り減って下塗りの黒漆がのぞいているのも美しいものです。当時の生活からの要望と木漆の仕事の材料と工程がこういう漆器を産んだのでしょう。そうして寺院常用の什器であるということで日々使い込まれたことがこういう美しさと結ぶ機縁となったのではないかと想います。 一方は数百年の歴史を重ねた貴重な漆器であり、一方は今なお雨ざらしになっている粗末なペンキ塗の鉄の扉ですが誠実な用に仕えるものであるという点では同じ性質のものであり、その美しさもまた非常に近いものだと想います。今では大変高価な根来と同じふうに美しいものがこのように普通に在るということはなんとも興味深く、ありがたいことだという気がします。 ・・・・・ 今年の夏は京都五條坂の陶器祭に初めて参加しようかと考えていたのですが場所を取ることが出来なくてダメでした。一度野外の陶器祭という場で思い存分展示がしてみたかったのですが残念です。 仕方がないので何処かで個展でも、と考えていたところにちょうど頂いた仕事の話を受けて大変忙しくしています。陶器祭に出すつもりで進めていた様々はいったん置いてこの仕事のために方向転換です。ちょっと不慣れなことなどこなさねばならないという事情もあり、また時間的にも余裕がないのでかなり大変なのですがお受けした以上はやらねばなりません。 そんな訳でしばらくはこのページもあまり更新することが出来そうもありません。せっかく楽しく写真日記をつけ始めたのですがしばらくは中断になりそうです。とはいえ仕事の合間などに相変わらずMacを覗くことはあるかと思います。書かねばならないことがあれば、あるいは気が向けば何か書くかも知れません。何も鉄の扉を閉め切ってしまうという訳ではないのです。(笑) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2004.08.01 10:35:50
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