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2006.09.06
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カテゴリ:うつくしいもの


 沖縄の赤い瓦と並んでいるのは丹波の黒い瓦です。この瓦は春の筍の時期に友人の家の裏の竹薮に散らばっているのを見付けて一枚大切に頂いたもの。むかしここに家があったそうでその時代からするとさして古いものでも無くあるいは昭和前期頃のものかも知れないとのことです。ただし緩やかに反った板状の姿もその肌合いもうつくしさは飛鳥や斑鳩のお寺にあるものにも少しも負けていない瓦だと思っています。やきものとして見れば荒めの土を型に当てて炭素が染み込むほどに煙を出しながら焼き上げたもの。白黒の斑も目立つことからすると炎も煙もむらの多い窯だったように思われます。
 丹波のやきものといえば八百年の歴史を背負いまた現在なお沢山の窯元が並ぶ篠山の立杭村が有名ですが、実際には旧丹波の国にはあちこちにやきものを焼いたところがありました。そしておそらくは庶民階級の家さえ瓦葺きが普及し始めた明治以後のことかと思いますがさらに多くの村で瓦窯が煙を上げていたのだと思います。瓦の場合は一軒の家にさえ相当な数を必要とする訳ですから器など以上に需要も多く長距離輸送が発達していないその時代には近在の村で作るより無かったのではないかと思うのです。この瓦にしても同じ集落に瓦屋が近年まであったといいますからおそらくはここで作られたものと考えて間違いないでしょう。以前にこの日記に藍の布なんとも魅力的な筒瓦を拾った廃業した瓦屋を訪ねたことを書きましたが、このように瓦屋も長距離輸送の発達と瓦の生産自体が大きな工場でのより工業的な規格品へと変化してゆくに伴って静かに窯の火を消したところも多かったのではないかと思います。こういうことは消えてしまえばそれまでのことでなかなか記録は残っていないのかもしれません。
 愛好家も多い壺や茶碗やそういう普通のやきものはその歴史や研究も少しづつ進んでいます。瓦にしても平安以前の古瓦などはやはり多くの方が様々な考察を重ねているようですが、時代も若いこういうなんでもないやきものにはいまだに光が当てられないままなのです。考古学はどうも時代の新しいものには冷淡過ぎるのではないかという気がします。うつくしければそれでよい、そういう立場の自分たち以外に誰もこのような仕事の価値を振り返ってくれる人は無く、こういう場でこのような無名瓦工の仕事を少しでも紹介出来るのはなんともありがたく幸せなだと思っています。





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Last updated  2006.09.06 21:20:56
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