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辻嘉一さんの「懐石傅書」を読み続けている。 今回は「御飯と味噌汁」の味噌汁について紹介したい。 読むごとに、この本は四十年前に書かれた本とは思えない新鮮さを覚える。 そして、この本は、料理の本ということだけではない。 当時の食生活のゆたかさを教えてくれる。 平成の世になって、私達は急速にそれらを放棄している。 この本を読むにつれ、そのことが寂しく思われる。 そうそう、味噌汁の話だ。味噌汁にはいろいろな約束ごとがあるらしい。 お汁の蓋をとった時に、椀の中が乱れていると失礼になる。 だから、中身を必ずひとつ入れの形に大きく切っておくそうな。ふむふむ。 その大切りの中身をひきたてるために、歯ざわりの違うワキ役を添える。へーえっ。 そこに、白味噌の仕立てのおいしさの余韻を消すのと 味わいを添えるために「ときがらし」を落とすそうだ。 からしは一時間前に熱湯で固く練っておき 使う直前に味噌汁を徐々に注ぎながらほどよいやわらかさにのばすのだ。 その「やわらかさ」は、美しくからしが落ちる固さと心がけることが肝要らしい。 また、味噌汁は出す時の温度にも注意をしなくはいけないと書かれている。 ご亭主が「どうぞ箸をお取りあげ下さい」と言って 正客から連客からと挨拶を戴いておもむろに食事にかかるまでかなりの時間がかかる。 生ぬるい温度の味噌汁では温度が下がってまずいものとなる。 温場であたためていたお椀の湯を捨て、すぐに盛り付けて差し出さなくてはいけない。 そのように心がけて「心地よい温度」の味噌汁を出すことができる。ふむふむ。 懐石の味噌汁は必ずお替わりするのが約束らしい。 最初の量はひと杓子の御飯に対しての量である。 お替わりの御飯の量は多くなるから、味噌汁も多くなる。 つまりですね、最初の御飯と味噌汁は「とりあえず」のものだそうな。 「とりあえず」というところに利休の懐石の心があるのだろうな。 だから、「お替わり」に重点をおかなくてはいけないのだ。 ところが、その頃になると、仕方は煮物や焼物に追われておろそかになる。 形がくずれたり温度がぬるくなる傾向にある。そのようなことも書いている。 それだからこそ、「心を尽くして」の味噌汁であるように心がけなくてはならない。 辻さんは丁寧な言葉でそう書いている。 うん、日本料理、懐石料理は奥深い、ため息を吐きながら思った。 人気blogランキングへ←ランクアップのために良かったらクリックして下さいな! お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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