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キータンのひとりごと~昭和せつなく懐かしく

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キータン.

キータン.

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2007.07.10
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担当の男からいろいろ言われたがアルバイトとしては割と楽なものだった。
調査する対象は、ひとりで二十人の人に会えば良かった。
アルバイト代は、交通費込みで四千円だった。

当時のアルバイト代は一日千五百円程度だった。
ラーメン一杯が百円だった。
四千円、調査に二日、それに交通費ということだろう。

私、いや私だけではなかった。
アルバイトの学生達は、みんな、一日で二十人を回ろうと決めていた。
一日で四千円、フフフフ、これは凄いアルバイトだ。

みんな、それぞれの策を考えていた。

私の担当は隣の町だった。電車で十五分はかかる距離の町だ。
電車で行くと、歩いての調査になるので、私は自転車で行くことにした。
早朝に起きて隣町まで自転車を走らせた。
久し振りの長距離のサイクリングだ。私はアルバイトということを忘れていた。

うん、もうひとつ忘れていた。普通の日だった。ほとんどの人が家にいなかった。
当然のことながら、みんな働きに出ていた。
夕方の五時になっても、会えた人はわずか五名の人にしか会えてなかった。

五名のほとんどが主婦と老人だった。
主婦に対する調査はややこしかった。

「投票するのはどこの政党かだって……恥ずかしいわね
「いや、そこのところを、調査ですから、はっきりとお聞かせ下さい」

「隣の奥さんは何て言ってた……えっ……この辺で選ばれたのはあたしだけ」
「そう奥さんだけです。ちゃんと答えて下さいよ」
「いやね、あなた学生さん……お茶を飲んでいく」
「いや、お茶を飲んではいけないと決められていますから」

「投票に行きますか?」
「そうね、天気にもよるわね。晴れたらどこかに行きたいし、雨だったら面倒だしね」
私はイライラしてきた。イライラしたら調査にならない。
じっと我慢である。じっと耐えることである。

「政治に何を期待しますか。次の中から選んで下さい」
「その前に、学生さんは、独身と既婚どちらの女性に憧れるの?」
私は絶句した。赤面をしたはずだ。
「アラッ可愛いわね。顔を赤くして、学生さんって純情なのね」

おいおい、私の身元調査ではないだろう。
こうやって二十問程度を質問するのだ。
二十問質問しながら、主婦のほとんどが政治に無頓着ということがわかった。

うん、私にしてもそんなに大きな顔をできるものではない。
理系の私は学園紛争にはなかなかついていけなかった。
各セクト問題などはややこしくて「わずらわしい」そのものでしかなかった。
ただ、ベトナム戦争反対、安保反対などのデモには参加していた。

当時の家庭だけでなく、今でも同じことなんだろう。
いや、現在の方が、主婦だけでなく、政治に無関心な人が多くなっているのであろう。
おっとと、そういうことではない。私の世論調査はまだ続く。(つづく)

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Last updated  2007.07.10 06:59:22
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