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キータンのひとりごと~昭和せつなく懐かしく

キータンのひとりごと~昭和せつなく懐かしく

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キータン.

キータン.

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2007.09.26
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♪なじかは知らねど心わびて
 昔の伝説(つたえ)はそぞろ身にしむ
 寥しく(さびしく)暮れゆくラインの流れ
 入日(いりひ)に山々あかく栄ゆる(はゆる)


ハイネの詩『ローレライ』の中の一節である。
この節は、誰でも一度は口ずさんだことがあるだろう。

夕方、陽が静かに沈んでいく。
なんともやりきれない気持ちになる。
そういう時……「なじかは知らねど、心わびて」と、ドイツ人はなるらしい。

「なじかは知らねど、心わびて」

それをメランコリーというそうだ。
ドイツ人特有なものとはいえないまでも、
ドイツ人によく見られる傾向と言ってもいいらしい。

イタリア人は、マンジャーレ、カンターレ、アモーレと言われるように
喰って、唄って、愛してと日々を楽しんでいる。
フランス人は、華やかなレストランなどで豪華な食事や音楽を楽しむ。

しかし、メランコリーだからといって、ドイツ人が暗いのではない。
ドイツ人のメランコリーが「哲学」を生んだといってもいい。

「またまた、キータンの怪しい憶測だね」
そういう人がいるかもしれない。

言わば言え、私の憶測は続く。

二十年前、私はドイツの夕暮れの風景を見たことがある。

ひとり旅、四十になったばかりの私はバスでドイツの小さな田舎の町に着いた。
小高い丘に登った。
広大な平野に紫に染まった靄が漂っていた。

薄く靄った西空が茜色に揺れていた。
鳥のさえずりもなく、風もなく、静かな時が過ぎていた。
そして……私はいつのまにか「心わびて」いた。

心わびてどうなったったかって……。
せつなくなった。胸が痛くなった。泣きたくなった。

誰を思ってもいなかった。何を思ってもいなかった。

ただ、黄昏の風景の中にひとりだけ、そう、ひとり「心わびて」いた。

はじめての海外ひとり旅、三十日間の旅の途中、
確かに「心わびて」、そしてひとり自分の人生を振り返っていた。

「生きる」ということは、どのような意味があるのだろう。

私はこれからどのような人生を生きていくのだろう。

そう、私はなじかは知らねど「哲学者」になっていた。ああ。

エッ、それからどうだって……う~ん、ただの人に戻っていたね。
そして、今、欺瞞と怠惰に満ちた日々を生きている。ああ。


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Last updated  2007.09.26 07:45:53
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