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2022.04.16
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カテゴリ:カテゴリ未分類
 ウイルスに感染した細胞は死に、その細胞から新しいウイルスが放出され、また他の細胞に感染して体内に広がっていきます。

 このウイルスの性質を利用して、がん細胞だけを殺すウイルスを投与することでがんを治そうという治療が、がんウイルス療法です。

 ”がん治療革命 ウィルスでがんを治す”(2021年12月 文藝春秋社刊 藤堂 具紀著)を読みました。

 人間の体に害をなすものとして認識されているウイルスを利用してがんを治そうという、画期的な治療法を紹介しています。

 投与するウイルスは、遺伝子を改変してがん細胞内だけで増殖できるように作られ、正常な細胞は傷つけることはありません。

 がん細胞は、正常な細胞に比べて増殖が早い特徴がありますので、この治療用ウイルスに感染したがん細胞は、増殖によりウイルスが周囲に速いスピードで拡散し、がん細胞を次々と死滅させていく効果が期待されます。

 2021年に、世界で初めて脳腫瘍を対象としたがん治療用ウイルス薬が日本で承認されました。

 ウイルスを人類の味方にするという画期的な発想から生まれたG47Δ=ジーよんじゅうななデルタは、副作用が比較的軽く、あらゆる固形がんに適用できるといいます。

 藤堂具紀さんは1960年生まれ、1985年に東京大学医学部を卒業しました。

 独エアランゲン・ニュールンベルグ大学研究員、米ジョージタウン大学助教授、米ハーバード大学マサチューセッツ総合病院助教授などを経て、2003年に東京大学脳神経外科講師となりました。

 2008年より同大医学部附属病院トランスレーショナルリサーチセンター特任教授、2011年より同大学医科学研究所先端医療研究センター先端がん治療分野(脳腫瘍外科)教授となりました。

 現在、医科学研究所先端医療研究センター先端がん治療分野の分野長を務めています。

 博士(医学)(東京大学)で、専門分野は脳神経外科学、研究テーマは遺伝子組換えウイルスを用いたがんのウイルス療法の開発です。

 遺伝子組換え技術を用いてがん細胞のみで複製するウイルスを作製し、がん治療に応用します。

 特に、三重変異の単純ヘルペスウイルス1型(G47Δ)は、高い安全性と強力な抗腫瘍効果を有し、臨床応用を展開しています。

 異なる抗がん機能を発揮する様々な次世代ウイルスの作製や、悪性脳腫瘍から分離したがん幹細胞の研究活用を通じて、再発や転移を克服する革新的がん治療法の開発を目指しています。

 現在行われているがんの治療法には、主に、手術療法、放射線療法、化学療法、免疫療法の4つがあり、これらをがんの四大治療法と呼んでいます。

 日本では、これまで手術ががん治療の中心にありましたが、近年は化学療法や放射線療法が進歩し、がんの種類やステージによっては手術と変わらない効果が認められるようになってきました。

 四つの治療法を、場合によって2つ以上の治療を組み合わせることもあり、手術療法、放射線療法、化学療法、免疫療法を組み合わせた治療をがんの集学的治療と呼びます。

 四大治療法を効果的に組み合わせ併用することで、より大きな治療効果が期待できます。

 手術療法は、外科手術によりがんの病巣を切除する治療法です。

 また、周辺組織やリンパ節に転移があれば一緒に切除します。

 しかし、手術により身体にメスを入れるため、創部の治癒や全身の回復にある程度時間がかかる治療法です。

 しかし最近では、切除する範囲をできるだけ最小限にとどめる縮小手術や、腹腔鏡下手術、胸腔鏡下手術など、身体への負担を少なくする手術の普及が進んでいます。

 放射線療法は、放射線をがんに照射してがん細胞の増殖を防ぎがん細胞を殺してしまう治療です。

 放射線は細胞分裂を活発に行う細胞ほど殺傷しやすい性質を持っています。

 そのため、がん細胞は正常な細胞に比べて放射線の影響を受けやすく、一定の線量を小分けにして何回も照射することで、正常な細胞にはあまり影響を与えず、がん細胞を殺傷することができます。

 化学療法は、抗ガン剤などの化学物質によってがん細胞の分裂を抑え、がん細胞を破壊する治療法です。

 がんは次第に転移し全身に広がっていく全身病であり、 抗がん剤は内服や注射により血液中に入り、全身のすみずみまで運ばれ、体内に潜むがん細胞を攻撃します。

 そのため、全身的ながんの治療に効果を発揮します。

 免疫療法は、私たちの体の免疫を強めることによりがん細胞を排除する治療法で、化学療法同様、全身に効果がおよぶ全身療法のひとつです。

 2018年にノーベル医学生理学賞を受賞した本庶佑教授が開発した、ニボルマブ=オプジーボという免疫チェックポイント阻害剤と呼ばれる画期的な薬が代表的です。

 現在保険診療の範囲は一部のがん種に限られていますが、今後適用範囲の拡大が期待されています。

 がんの治療は、この4つの治療を組み合わせ併用する事により、より大きな効果をあげることができます。

 そして、がんウイルス療法は、1990年代から欧米などを中心に開発が進められていましたが、2021年6月11日に、神経膠腫という悪性の脳腫瘍の治療薬として、日本ではじめて承認されました。

 手術や放射線治療などの、従来の治療で効果が見られなかった人が対象となります。

 ウイルス療法は、腫瘍細胞=がん細胞だけで増えるように改変したウイルスを腫瘍細胞に感染させ、ウイルスそのものが腫瘍細胞を殺しながら腫瘍内で増幅していく、という新しい治療法です。

 ウイルスが直接腫瘍細胞を殺すことに加え、腫瘍細胞に対するワクチン効果も引き起こします。

 手術、放射線、化学療法など従来の治療法とも併用が可能であることから、近い将来悪性神経膠腫の治療の重要な一翼を担うと期待されています。

 普通、医薬品は厚生労働省の承認が正式に決まって初めてニュースになるのですが、G47Δの場合、厚生労働省の専門部会が製造販売の承認を了承した5月24日の段階から大きな反響があったといいます。

 新聞各紙をはじめ、あちこちで大きく報道されたため、問い合わせの電話が東大医科学研究所に殺到し、附属病院の電話はパンクしてしまったそうです。

 G47Δは、悪性神経膠腫に対する治療薬で、一般名はテセルパツレブ、製品名はデリタクト注(「注」は注射薬のこと)といいます。

 悪性神経膠腫のなかでも、代表的な疾患である膠芽腫は、最も悪性度が高い脳腫瘍です。

 標準治療は、摘出手術に加え放射線治療と薬物治療がありますが、再発は必至で、再発後の平均余命は3ヵ月~9ヵ月程度、1年後の生存率は14%ほどしかありません。

 しかし、臨床試験で、この膠芽腫の患者にG47Δを投与したところ、最終的な1年後の生存率が84.2%と、標準治療の結果に比べ6倍以上の延命効果が認められました。

 先行した臨床試験の被験者のうち1人は、治療後の再発もなく、なんと11年以上生きています。

 脳腫瘍を対象としたウイルス療法薬が承認されたのは世界初であり、ウイルス療法製品が承認されたのは日本初です。

 また、開発から製造までのすべての工程を日本で行なっている、日本初の国産ウイルス療法薬でもあります。

 そして、製薬会社ではなくアカデミアが単独で発明し、臨床試験を経て製造販売承認に至った医薬品も、国内では初めてのことでした。

 今回承認された治療薬に使われているのは、東京大学医科学研究所附属病院で研究・開発されたG47Δというウイルスです。

 これは、単純ヘルペスウイルスの3つの遺伝子を操作して、正常細胞では増えず感染したがん細胞内だけで増える治療用ウイルスです。

 これまで行われた臨床研究では、治療1年後の生存率が従来の治療に比べて高いことが示されており、さらにデータを収集して有効性と安全性を評価する期限・条件付き承認となっています。

 現在、第三世代の遺伝子組換え単純ヘルペスウイルスI型G47Δを用いて臨床試験を行っています。

 この治療では、ウイルスの作用で直接的にがん細胞を殺傷する効果に加え、体内の免疫の働きを強めてがんを抑え込む、免疫療法としての効果も期待されています。

 単純ヘルペスウイルスはもともと免疫からその姿を隠す働きをもっていますが、 G47Δウイルスはその働きを欠いていますので、治療用ウイルスが感染したがん細胞は、免疫の攻撃を担う細胞に発見されやすくなります。

 また、ウイルスの感染によりがん細胞が破壊されると、体内の免疫反応も活性化しますので、がん細胞をさらに攻撃することが期待できます。

 このウイルス療法薬の優れている点は、正常細胞に感染しても増殖できないしくみを備えていることです。

 そのため、正常組織を傷つけることはなく、従来のがん治療のような強い副作用や後遺症が起こる心配がありません。

 G47Δに使われているウイルスは単純ヘルペスウイルス1型で、成人の8割程度が一度は感染して抗体を持っている、ごく身近なウイルスです。

 単純ヘルベスウイルス1型のように研究が進み、人為的に制御できるウイルスならば、がんの治療に活かすこともできます。

 単純ヘルペスウイルス1型の遺伝子のうち1つを改変したものを第一世代、2つを改変したものを第二世代と呼びます。

 今回は、単純ヘルペスウイルス1型の3つの遺伝子を改変したもので、第三世代と呼ばれています。

 この第三世代は、安全性を格段に高めながらも、がんへの攻撃力を強めることに成功した、いわば、最新型のウイルス療法薬です。

 G47Δウイルスは、全ての固形がんに同じメカニズムで同じく作用することから、今後、脳腫瘍以外にもさまざまながんを対象に研究が行われ、新たな治療となることが期待できます。

 2013年から、前立腺癌と嗅神経芽細胞腫をそれぞれ対象とした臨床試験が、2018年から悪性胸膜中皮腫の患者の胸腔内にG47Δを投与する臨床試験が実施されています。

 本書は、旧版の”最新型ウイルスでがんを滅ぼす”(2012年刊)に、G47△が承認に至るまでの臨床試験の結果(第五章)、日本の薬事行政の課題(第六章)を新章として加え、全面的に加筆した増補改定版です。

第1章 革命的がん治療“ウイルス療法”/第2章 致死率一〇〇%の悪性腫瘍との闘い/第3章 がんを殺すメカニズム/第4章 G47Δ開発までの道のり/第5章 G47Δを、一日も早く患者さんのもとへ/第6章 日本への提言/第7章 がん治療の未来





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Last updated  2022.04.16 07:12:34
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