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北 の 狼

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Jan 5, 2004
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猿の惑星


本日(1月4日)、朝日テレビで『猿の惑星』を放映していました。『猿の惑星』といいましても多数あるのですが、今回放映されたのは第一作目(1968年、フランクリン・J・シャフナ―監督、チャールトン・ヘストン主演)です。

ストーリーは、殆どの方はご存知でしょうから、簡単に。
テイラー(チャールトン・ヘストン)を船長とした宇宙探検船が200光年以上(地球時間で2000年にもなる)の旅をしていたところ、突如宇宙船が故障をきたし、或る惑星の海に不時着した。
ここはどこの星なのか? 
星を探検中にテイラー達は人類達の群れと出会うが、彼らを生け捕りに来た軍隊によって一緒に捕えられてしまう。その軍隊はすべて猿(ゴリラ)だった。猿がしゃべり、馬を操り、人間を捕まえているのだ。テイラー達は動物として扱われるが、(その星の他の人類と違って)言葉を話すテイラーに猿達は驚き、突然変異として恐れられる。科学者のコーネリアスとジーラというチンパンジー夫妻はテイラーを理解し、抹殺しようとする上層部からテイラーを守る。
この星では、どうして猿と人間とで立場が逆なのか・・・・。そして、テイラーが「禁断地帯」で見たものは、自由の女神の残骸であった。
「ここは地球だったんだ。人間はとうとうやっちまったんだ!」
猿の惑星の正体は、核戦争後の地球の姿だったのだ。

この映画、一見すると単なるSF的な逆転物語ですが、本当はアメリカの人種問題を扱った寓話です。つまり、映画内の人類は白人、猿は黒人に相当します。当時(60年代)のアメリカは、白人による黒人に対する差別的支配がまだ継続していた社会ですが、その支配関係を逆転してみせたのが『猿の惑星』という映画なのです。

原作は、フランス人作家ピエール・ブールによる同名の小説で、ピエールは過去に『戦場にかける橋』という小説を書いており、それが映画化されてアカデミー賞を受賞しています(1957年)。
ピエールはビルマでプランテーションを経営していましたが、第二次大戦で日本軍によってビルマが占領され、捕虜として収容所に送られています。そこで、日本軍から家畜以下の扱いを受けた、とピエールは主張しています。その経験をもとに、『戦場にかける橋』を書いたわけです。
ピエールは、農園でアジア人をこき使っていたわけですが、今度は逆に日本人にこき使われるという「逆転」が生じたわけです。西欧では、古くからアジア人を猿として蔑視していましたが、その「猿」によって支配されるという立場の逆転が生じ、それが『猿の惑星』における人間と猿の逆転の発想につながっています。

原作『猿の惑星」における西欧人(フランス人)とアジア人(日本人)の逆転を、アメリカの白人と黒人の逆転に変奏させて映画として脚色したのが、ロッド・サーリングというユダヤ系のテレビ製作者です。サーリングは過去、日本軍を虫ケラのように殺そうとした米軍将校がいきなり日本人になってしまう『日本人の洞窟』、美しさと醜さが逆さまになる世界を描いた『醜い顔』など、差別と被差別の関係を逆転させる作品をつくっていました。余談ですが、S. スピルバーグもこの手を時々使っています。
サーリングはかつて、「エメット・ティル事件」をテレビ・ドラマ化しようとしたことがあります。この事件は、55年に、14歳の黒人少年エメット・ティルが白人女性に「ベイビー」と声をかけただけで白人たちに惨殺されたというもので、裁判では白人たちは全て無罪になりました。サーリングがこの事件のドラマ化を発表したところ、KKK(クー・クラックス・クラン)がテレビ局を強迫したため、舞台は南部から東部に、黒人はユダヤ人に変更されています。このように、人種差別を直接の題材とすることに困難を感じていたサーリングは、映画『猿の惑星』では、猿に黒人を象徴させたのだそうです。
映画の最終シーン「猿の惑星の正体は、核戦争後の地球であった」という大ドンデン返しを考案したのもサーリングです。

60年代アメリカの最大の問題は人種闘争で、国内では黒人による「公民権運動」、国外では有色人種とのベトナム戦争と、「このままでは、白人優位の社会は崩壊するかもしれない」という恐怖を味わっていたのですが、それを反映したのが『猿の惑星』といえます。

主人公にチャールトン・ヘストンが起用されていることも示唆的です。ヘストンは、アメリカ白人の象徴的存在なのです。映画『エル・シド』、『北京の55日』、『カーツーム』、『ダンディー少佐』と、ヘストンは白人の代表として常に異民族・異人種と闘ってきたのです。その白人の象徴たるヘストンが、白人が黒人にしてきたことを体験させられているわけです。
映画評論家のポーリン・ケイルは「これは強烈なブラック・ジョークだ。なぜなら、たくましい肉体と鉄の意志で異国に戦いを挑むヘストンは、アメリカそのものだからだ」と述べています。

最後に、この映画で描かれている猿の社会は、現実のアメリカ社会の人種的ヒエラルキーの鏡にもなっています。
体が頑健ですが知能が低そうで、戦闘的で軍事に従事しているゴリラは黒人ですね。
聡明ですが冷たい性格で、政治的・法的に官僚として猿社会を支配しているのがオランウータンです。彼らは一種の貴族で、赤みがかった金髪からも分かるようにWASP(イギリス系白人)ですね。
そして、体が弱く権力もありませんが、ユーモアがあり温厚な性格を有し平和的で、科学や芸術など文化的職業に従事し、リベラル色が強いチンパンジーは、ユダヤ系ということになります。





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Last updated  Jan 5, 2004 12:22:05 AM
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