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北 の 狼

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Feb 29, 2004
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『スケアクロウ』(73年、アメリカ、主演;ジーン・ハックマン、アル・パチーノ)

茶褐色の野原を、遠くから一人の男がとぼとぼと歩いてくる。その男は、転びながらも有刺鉄線の壁をなんとかくぐり抜ける。その様子を木陰からじっと眺める、もう一人の男がいる。「だいじょうぶか」と声をかけ自己紹介をするライオネル(アル・パチーノ)に対して、マックス(ジーン・ハックマン)はそっけない態度をとる。その二人の前には、長い道路が・・・・「ロードムービー」の始まりだ。

オープニングでは音楽は一切流れない。荒涼とした大地と、それを引き裂くアスファルトとをバックにして、乾いた風の音が響くだけである。
道路を挟んで向き合う、二人の男。マックスは鞄をさげ、ライオネルは白い箱包みを抱えている。
風埃のなか、ヒッチハイクの二人に、たまに通りかかる車はつれない。
チビのライオネルは、ゴリラや電話の真似をしておどけてみせる。対して、デカのマックスはじっと本(預金通帳)に見入っていてチビを無視の体勢。
そんな二人を近付けたのは、一本のマッチであった。葉巻きを吸おうとしたマックスであったがライターの火がつかない。道路の向こう側から、ライオネルが最後の一本のマッチをかざして微笑む。小さなマッチの火に寄り添うチビとデカ。
こうして、二人の奇妙な旅がはじまった。

マックスは6年の懲役を終えて刑務所から出てきたばかりで、洗車店を始めるために(銀行にお金を預けてある)ピッツバーグへ向かう途中。そして、デンバーに立ち寄って、たったひとりの肉親である妹コリーを訪ねてみるつもりだった。
ライオネルの方は、5年ぶりに船員生活から足を洗い、身重ののままデトロイトに置き去りにした妻アニーに会いに行くところだった。今年5歳になる子供がいるはずだが、男か女さえも知らない。働いてえたお金をすべてアニーに送金していたライオネルは、彼女との再開と子どもに土産(白い箱包み)を渡す喜びを唯一の支えとしていたのであった。
その2人は気が合いコンビを組み、洗車屋をともに始めることにし、ピッツバーグへ向かう途中デンバーとデトロイトとでのそれぞれの用事を済ませる事で話がまとまった。

「人は信用しねえ。愛したこともねえ。
だが、喧嘩なら像が相手でも負けねえ」

こう豪語するマックスは、喧嘩屋だ。
二人が出会って始めて泊まったホテルで。

「殴るより、人を笑わすことだよ」
「下らん」
「カカシの話しを知ってるかい? 
 カラスはカカシをこわがる」
「そうらしい。なぜだ」
「ところが、違うんだな」
「いや、カラスはこわがる」
「違う。笑っている」
「ウソつけ」
「本当だ笑ってる。
 カカシはおかしな帽子をかぶり、おかしな顔だ。
 だからカラスはそれを見て笑うんだ」
「カラスが笑う?」
「ひっくり返って笑い、
 『百姓のジョーンズはいい奴さ』
 と云う。
 『だからこの畑は止めておこう』」
「カラスが笑うのか。
 じゃ云うけどな。
 そんな出まかせ、聞いたことがない」
「本当さ。笑うのさ」

「なぜ、おれと?」
とライオネルは、ベッドの上のマックスに尋ねる。
「最後のマッチをくれたし……笑わせてくれた」
とマックスは、照れくさそうに答える。

「カカシ、女房に追い出されたらどうする」
「まず笑わせるね。
 笑わせれば、誰も怒らない」

マックスは行く先々で喧嘩の種をまくが、ライオネルは気転をきかせては笑いを誘い、なんとかその場を切り抜ける。
映画では、ライオネルの過去の私生活は一切明らかにされない。しかし、これらから、彼の過去がいかに過酷であったか、いかに苦悩の生活を送ってきたか、凡そ察しがつく。そして、その経験(トラウマ)が、彼の精神を深く蝕んでいることも。

トラックや汽車を乗り継いでデンバーに着いた2人は、早速花で飾られたコリーの家を訪ね歓待される。そこで一緒に生活していたフレンチーという女とマックスは出逢い、ライオネルもコリーが気に入ったようだった。意気投合した4人は、これからずっとデンバーで行動を共にしようという事になった。
ピッツバーグから戻るまでしばしの別れだが、お別れパーティのドンチャン騒ぎが始まった。例によってマックスと町の連中と喧嘩になり、二人は30日間の強制労働を課せられた。
その収容所で、ライオネルは看守役の受刑者(男)から性的関係を迫られる。笑わせて、その場を乗り切ろうとするライオネル。しかし、通じなかった。
顔を散々殴られ大量に血を流して戻ってきたライオネルをみて、翌日マックスは看守役に復讐する。

30日の刑を終えて、2人は連れ立って目的地へ急いだ。
デトロイトのアニーの家の前で、ライオネルは公衆電話へかけ込んで彼女を呼んだ。だが、なつかしさと期待にあふれる彼の気持ちは一瞬にして吹き飛ばされた。アニーは5歳になろうとする男の子の顔を見ながら、出産直前に階段から落ちたために子供が死んで生まれてこなかった事、洗礼を受けていないその子は地獄に落ちたまま永遠に天国へは行けないだろう、そして自分は再婚しているとまくしたてた。それがアニーの悲しい嘘である事をライオネルは知る由もない。
電話を切ると、ショックを隠して、わざと明るくボックスを飛び出し、おどけた調子でマックスに話して聞かせた。

ライオネルの様子がおかしいのにマックスが気づいたのは、その直後だった。公園の大きな噴水のそばで子供たちと遊んでいたライオネルは、その中の一人をいきなり抱き上げると、氷のような冷たい水の中にザブザブ入って行った。あわてたマックスが、彼を水の中から連れだした。
病院に収容されたライオネルは正気に戻るまで当分の間精神療法が必要だ、という医者の診断であった。マックスの心は決まった。洗車屋を始めるために貯金した金をそっくりそのまま親友の治療費につぎ込もうと。

ピッツバーグ行きの切符を買おうとして、駅員に「往復?」と尋ねられ、マックスは即座に「そうだ」と答える。
しかし、ポケットのお金のみでは往復切符に足らない。
靴底に隠しておいたなけなしの10ドル札をナイフで取り出すマックス。
冒頭の「最後のマッチ」のシーンが甦る。



Curtains

   by Bernie Taupin

I used to know this old scarecrow
He was my song, my joy and sorrow
Cast alone between the furrows
Of a field no longer sown by anyone

I held a dandelion
That said the time had come
To leave upon the wind
Not to return
When summer burned the earth again

Cultivate the freshest flower
This garden ever grew
Beneath these branches
I once wrote such childish words for you

But that's okay
There's treasure children always seek to find
And just like us
You must have had
A once upon a time





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Last updated  Mar 1, 2004 02:06:47 AM
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