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北 の 狼

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Apr 15, 2005
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『ホラー映画の魅力 ファンダメンタル・ホラー宣言』より、(観客を恐怖させるための)「小中理論」の紹介を続けます。


2)脚本描写

 ・イコンの活用
    説明する台詞なしで、視覚的に伝える怖さというものは
    強い。音響にも同様の効果がある。
 ・霊能者をヒロイックに扱ってはならない
    説明不能な不条理にこそ恐怖が宿るのであり、霊能者の
    解説をその物語の真相としてしまうと、作品は「因縁話」
    に堕してしまうことになる。あくまで、解釈の一つに留
    めておくべきである。
 ・ショッカー場面はアリバイに
    観客を「びっくりさせる」ショッカー場面はもっとも印
    象に残るものであるが、これはほんとうの怖さとは違う
    ものである。ただ、ショッカー場面は、「あなたが見て
    いるのはホラー映画なのだ。怖がっていいのだ」という
    メタ・メッセージとして伝わり、観客を自動的に「怖が
    るモード」へと移行させる手段として有効である。
 ・幽霊の「見た目」はありえない
    これから襲われようとしている人物を幽霊の「見た目」
    (=幽霊からみた主観描写、Point of View; POV)から
    描写するのは安易な手法であり、観客を「はらはら、ど
    きどき」させる効果はあるであろうが、ほんとうの怖さ
    とは別の感覚である。
 ・幽霊はどう見えたら怖いのか
    半透明や青い照明を当てたような古典的な幽霊は怖くな
    い。ぼうっとボケたような不確かな見え方のほうが怖い。
    また、不自然な場所に現れる幽霊や、不自然な大きさの
    幽霊は怖い。
 ・幽霊ナメはやってはならない
    幽霊の背中越し(撮影用語でナメると言う)に犠牲とな
    る人物を映すアングルはホラー映画ではおなじみである
    が、これは恐怖する人物を客観視するアングルであり、
    いわば「醒めた」観点といえる。人物の主観的な恐怖感
    こそが観客に伝播されるべきものであり、幽霊ナメは
    やってはならないショットである。
 ・幽霊はしゃべらない
    人情話的な怪談ならいざ知らず、実話怪談では幽霊に会
    話させるべきではない。幽霊が話すと肉体感が強調され、
    「役者が演じている幽霊」にしか見えなくなるケースが
    多い。ただし、幽霊の声そのものは、怖さの有効な要素
    である。
 ・恐怖する人間の描写こそが観客の恐怖を生みだす
    観客に恐怖を感じさせるには、その場面に登場する人物
    が感じている恐怖を伝播させることが最大の決め手にな
    る。ファンダメンタルな恐怖を生成する最大の要素とは、
    そこに映し出されている人物のリアクションなのだ。
 ・つまり、ほんとうに怖いのは幽霊しかないのだ
    ホラー映画でほんとうに怖いのは、怪物、吸血鬼、ゾンビ、
    SF的な存在などではない。ほんとうに怖いという感覚を醸
    し出す怪異は、結局のところ幽霊しかないのだ。



小中氏は、以上のような「小中理論」=「恐怖の方程式」を示した後、最後を以下のようにしめくくっています。


==============
よく、サイコ・ホラー物を評すときに、「一番怖いのは人間の心だ」などとしたり顔で書かれているのを目にするが、私は問いたい。「あなたは、本当に怖いものに遭ったことがあるのか」と。暴力的なまでに不条理な存在と対峙したことがあるのかと。
私はホラーを愛している。怪物が登場する作品は大好きであるし、私自身も作り、またこれからも作りたいと願っている。コメディ仕立てのホラーだって愛している作品もあるし、ホラーの様式ということについても、まだまだこれから掘り下げていくべき事柄だろう。だが、観客が座席から尻をずらしていくような、映画を観た後でも、悪夢にうなされるような本当の恐怖を与え得るホラーは、幽霊しかないのだ。
==============


この辺、私と小中氏とでは考え方が異なります。
小中氏が「本当に怖い」と思っているのは幽霊”そのもの”ですが、私の場合はちょっと違う。
私は過去の日記で以下のように述べています。


===============
我々は、作品を通してなにか「ほんとうのもの」を感じ取る。だからこそ、それが表面的な感情としては「快」を呼び起すものであれ、「不快」を呼び起こすものであれ、感動を覚えるのである、と。

・その「ほんとうのもの」というのは、結局は、自分(鑑賞者)自身の「心のありよう」のことではないでしょうか?

芸術作品の鑑賞のように主観が大いに関わってくる場合は特にそうなのですが、物事の「見え方や感じ方」を規定するものは、結局はその人の「心のありよう」だろうと思います。
例えば自分の心がはずんでいる時は、普段はなんでもないものも心地よく感じられることがありますし、逆に心が沈んでいる時は、なにを見ても不愉快に思えるものです。恋愛なんかの経験を思い出していただければ、このことがよく納得できると思います。

つまり、自分が物事から受け取る印象というものは、自分自身の「心のありよう」の”逆投影”である、といえると思います。

ですから、芸術作品は、鑑賞者自身の「心のありよう」を映しだす鏡のようなものということになり、さらに、優れた芸術とは、それを通して人の「心のありよう」をより深く、またはより明瞭にえぐりだすものということになります。

そうしますと、芸術作品によって覚える「感動」の正体とは、「快」や「不快」の感情の生起をきっかけとして、我々が普段認識しえていなかった(認識することを拒んでいた)自分自身の「心のありよう」を新たに自覚する、そのことによって生じる「驚き」の感覚のことである、ということになるかと思います。
つまり、「ああ、自分はこういうモノに魅力を感じる人間だったのか!」とか、「自分は本当はこういうモノを欲していたのだ!」とかいった感覚ですね。この現象は、作品を通した「自己了解」、もう一歩すすんで「自己確認」といっていいとも思います。

自分の「心のありよう」というものを知る場合、自分自身で自己の心を把握するという努力(「内省」)が必要不可欠なのですが、純粋に「内省」するだけではなかなか窺い知ることができないものです。何故なら、自分の心を把握しうるのは、自分自身の心に他ならないのですから。
例えば、人の心がある観念によって強固に捕らわれている時は、その観念によってその人の物事の見方(=心の作用)がいかに歪められていようとも、自分自身ではなかなか認識できるものではありません。典型例が、カルト宗教による洗脳でしょう。ですから、脱洗脳において重要なことは、心が抱いている絶対的な観念をいかに相対化するか、ということになります。

普段は認識しえない、または種々の因習や慣習や道徳によって縛られていて認識することが拒まれている、「心のありよう(の深層)」=「ほんとうのもの」というもの、それを垣間見させてくれるのが芸術作品というものではないでしょうか?
===============


上は芸術一般について述べたものですが、当然ホラー映画にも通じるものがあります。
普段は気づかないが自分自身の心のうちに潜んでいる残酷さを垣間見させてくれるホラー映画こそが、ほんとうに怖い作品である、私はそう考えているわけです。
つまり、「一番怖いのは人間の心だ」と考えている者とは、私に他ならないことになるわけです。

次回は、私と小中氏の違いをもう少し深く掘り下げて考察してみます。





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Last updated  Apr 16, 2005 01:40:05 AM
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