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カテゴリ:清水 明 ゴルフ小説
書き下ろし連載小説 「華蘇芳」 清水 明 2-5.人生論 「三郎さんに捨てられたくなかったら、こどもの話、私も飲むわ。 人間って、変わらないこともあるけど、変わることもあるでしょう。 変わってくれれば嬉しい。 変わらなければ、やっぱりと思って諦める。 三郎さんとふたりで居られたら、それで充分よ。」 狭い台所でテキパキと肴を造り、テーブルに置き久子は三郎に並んで座った。 化粧の香りが彼の鼻孔をくすぐった。 「乾杯しましょう。 ふたりがこうしてお酒を飲めることに。」 軽く合わせたグラスが明るい音をたてた。 「今日の私って、随分おしゃべりね。 煩いかしら。 おしゃべりは嫌いでしょう。三郎さん。」 「いや、ふたりでしばらく話そう。 話に乗ってくれるのはありがたい。」 「小菊さん、三郎さんのこと大好きだけど、ご両親と同じ心配をしている。 臆病なのよ。 臆病だから、三郎さんに飛び込めない。 私は飛び込める。 飛び込んだわ。 選ぶのは三郎さんだけど、私は自分の決断に賭けて行動した。 三郎さんに選ばれなくても、賭けには後悔しない。 自分で決めたから。 小菊さんは、結局親をとったのよ。 賭ける勇気がなかったのよ。 女に勇気が必要かどうかは分からないけど。」 「飛び込むひとが居たら、受け止めなければならないのだろうね。」 「そんな事はないは、飛び込むのも勝手、受け止めるのも自由。 それぞれ自分で決めなくっちゃ。 責任はそれぞれ。 今夜の責任だって、私は私の責任。」 「あなたは強い女性だ。」 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2011.07.19 20:33:42
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