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日本経済新聞22日付け朝刊1面に、フランスのパリ経済学校教授のトマ・ピケティ氏(43)へのインタビュー記事(「展望・2015」)が載っている。 ピケティ氏は2013年にフランス語で「21世紀の資本」(邦訳・みすず書房)を書いた。今年4月に英語版が発売されるやアマゾンの売上高1位に輝くなど大ヒット。米国では2014年春の発売以降、半年で50万部のベストセラーとなった。多くの言語で翻訳され、「資本論」を書いたマルクスの再来かと話題を呼んでいる。 日経のインタビューで最も興味深かったのは、最後のくだりだ。 <――日本の現状をどう見ますか。 「財政面で歴史の教訓を言えば、1945年の仏独はGDP比200%の公的債務を抱えていたが、50年には大幅に減った。もちろん債務を返済したわけではなく、物価上昇が要因だ。安倍政権と日銀が物価上昇を起こそうという姿勢は正しい。物価上昇なしに公的債務を減らすのは難しい。2~4%程度の物価上昇を恐れるべきではない。4月の消費増税はいい決断とはいえず、景気後退につながった」> 安倍政権と黒田総裁率いる日銀による異次元の金融緩和、国債の大量買いの狙いは、景気回復よりも物価上昇=インフレ政策による国の借金減らしだと見ているのだ。日本のエコノミストや経営者の間でも、こうした見方は珍しくないが、安倍政権も日銀も公式にはインフレ政策とは言っていない。「デフレ脱却」のため2%の物価上昇を実現させると説明している。 それに、仏独はピケティ氏が言うように、「2~4%程度の物価上昇」で1945年にGDP比200%だった公的債務を5年間で大幅に減らしたのだろうか。 ピケティ氏が「恐れるべきではない」という数値の上限である4%の物価上昇が5年続いたとしても、21.7%しか物価は上がらない。これで実質的に目減りする公的債務は18%にすぎない。 10年間4%上昇が続けば債務は半減するが、10年間はおろか、5年間でも4%の物価上昇が続けば、当然金利も上昇する。1%金利が上がっただけでも、政府債務の金利負担は10兆円も高まる。一方、日銀の保有国債の価格は下がり、日銀の財政は大きく悪化する。 仏独が戦後、公的債務が減ったのは物価上昇もさることながら、戦後の経済再建期で高度成長が続き、税収が大幅に増えたからだろう。 成熟した今の日本経済に高度成長は期待できず、金利上昇を考えると政府債務は簡単には消えない。インフレ率を一定の幅にコントロールするのも難しく、悪くすると、数十%~数百%のハイパーインフレを招いて企業も国民も塗炭の苦しみを味わう破目に陥る危険がある。 消費増税はそうした事態を回避しつつ、政府債務を少しずつ減らす手段なのだが、ピケティ氏は「4月の増税は景気後退につながった」と否定的で、インフレを奨励するばかりだ。 ただ、悪性インフレに陥ったとしても、それは数年で終わる。インフレ政策という「荒療治」の後は戦後の日本のようにまた、焦土の中から復活できるという考え方もある。安部政権と黒田日銀はそこまで考えているのだろうか。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2014.12.22 16:55:14
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