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本との関係記

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2003/05/28
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カテゴリ:カテゴリ未分類
 ジョン・マルコヴィッチの出ている、映画「二十日鼠と人間」のビデオの前で悩み、面倒くさい気持ちに襲われて結局借りなかったことと、「ビリー・ザ・キッド全仕事」で西部に引き寄せられていたことが伏線。どこで買ったかもらったか覚えてもいないこの本がふと目に入った。
 とても、良い。
 主人公の少年が歩く姿が見える。子馬に対する気持ちが手に取るように分かる。それを失う場面、感情が吐露されることはない。行動が全てを物語る。百行の心理描写よりも胸を打つ。雨に打たれた後病気で弱る子馬が死ぬのは大人しく馬小屋の中でもいいものだと、多分そうなるだろうとこちらは考える。だが子供はうっかり眠り込み、子馬は外へ彷徨い出て行き、ハゲワシに目玉を啄まれ、全身を食いちぎられ、死ぬ。少年に出来たのはハゲワシ一羽を殴り殺すことだけだ。
 情景描写が退屈だなどと思い始めたのはいつ頃からだろう。自然主義は受け付けないなどと思い込み始めたのはいつ頃からだろう。そう思いながら、引き算された文章ばかりの最近の小説に物足りなさを感じていたのは、多分それらに触れた最初の時からだろう。「最近のものは、こういうものだ」とろくに知らないのに決めつけ、その約束事の中で満足していた。だからと言ってその辺りのもの全て否定する気はないけれど。
 やっぱいいなあ、スタインベックはいいなあ、こういうのこそ本物だよ、と感嘆の言葉に工夫する気もなくなってしまうほど・・・・・・。
 やはり感想は読んだすぐ後に書いた方がいい。土曜読んだものについて火曜に書いても衝動が薄れている。法事の日に、顔も見たことのない遠くの親類が一人亡くなった。アドマイヤグルーヴがまた負けた。虎の貯金が増えた。地震が届かなかった。本の整理を諦めた。古本屋がまた一つ潰れた。


「もう行く場所は一つもないよ。海があってそこから先へは行けないのだ。海岸へ行ってみると、自分たちの邪魔をしたからって、海を憎んでいる年寄りが、そこここに何人もいるんだよ」


スタインベック「赤い小馬」西川正身 訳(新潮文庫)





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Last updated  2003/05/28 02:03:42 AM
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