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2009年08月11日
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カテゴリ:熱砂の約束
第16話 『オアシスの発見』 <全25話>

────────────────────────────────────

二人は口を閉じて耳をすませた。

灰色の猫は彼らの間に座り、二人の顔をかわるがわる見た。


「鳥ね」


グウェンはささやいた。


「鳥の声だわ。それに、藪の中でかさかさと小さな音がしている」


レイフはその方向に頭を傾けた。


「ここで待つんだ。すぐに戻る」


彼は向きを変え、茂みに入っていった。

グウェンは言われたとおりにした。

悪いことは考えないでおこう。

大蛇や恐ろしい虫が絡み合った木の根の間に潜んでいて、レイフの哀れな素足に醜い毒牙やおぞましいはさみを食いこませるチャンスを狙っているかもしれない、などということは。

レイフが出発してから二分もたたないうちに、彼がグウェンの名を呼ぶのが聞こえた。


「おいで!こっちだ!」


グウェンは茂みに分け入り、大きく露出した灰色の岩の向こうにまわりこんだ。

すると、レイフの姿が見えたと同時に、小さな澄んだ淵と、そこからあふれた水が小川になって流れているのが見えた。

レイフは淵のそばにひざまずき、透明な水を両手いっぱいにすくい上げていた。
そしてその水を飲むと、にっこりした。


「真水だ」

彼は目を輝かせて言った。


「真水だよ、グウェン。おいで。飲んでごらん」


二度言われるまでもなかった。

グウェンは水際へと急ぎ、岸に身を投げ出して流れに直接口をつけ、冷えたすばらしい水を飲んだ。

二人は水を存分に飲んだ。

それから小さな淵の中で服を着たまま泳ぎ、泳ぎながら塩を洗い落とした。

この淵に浮かんでいると、天国のようだとグウェンは思った。

なめらかで澄んだすばらしい水が、乾燥して塩分でひりひりする肌をなでていく。

グウェンは指で頭皮を隅々までこすって塩を洗い流し、塩分によるかゆみを和らげた。

そして頭を水につけたまま、指でなんとか髪をとかした。

服を脱いでしまいたかった。

それが乾くのを待っている間、この小さな青い淵に裸で浮かんでいたかった。

レイフも、それはすばらしい考えだと言った――あとでなら。

今は、砂浜に戻って合図用の焚き火を準備し、簡単なキャンプを設営する必要がある。

小さめの火もおこして、救助されるまで消さないよう番をしなければならない。

この小川は、流れの向きから考えて、どこか岸の近くまで通じているだろうとレイフは言った。

つまり、キャンプを張ろうと考えている場所にもっと近いところに、水源が見つかるかもしれないということだ。

水を運べるような入れ物がない以上、真水の場所は近ければ近いほどいい。

喉の渇きが満たされると、今度はひどく空腹なことにグウェンは気づいた。

彼女はレイフにそう言った。

すると彼は笑った。


「食べ物のことはあとで考えよう。念のため言っておくけど、人の体は食べ物がなくても何週間も耐えられるんだよ」


グウェンはぞっとしたふりをした。


「そこまで待たなくても食べられることを願うわ」


レイフがつぶやいた。


「ぼくもだ」

                            <8/17公開 第17話へつづく>

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この作品の一部、または全部を無断で転載、複製などをすることは著作権法上の例外を除いて禁じられています。

All rights reserved including the right of reproduction in whole or in part in any form. This edition is published by arrangement with Harlequin Enterprises II B.V./ S.a.r.l.  All characters in this book are fictitious. Any resemblance to actual persons, living or dead, is purely coincidental.

Published by Harlequin K.K., Tokyo, 2008





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最終更新日  2009年08月11日 12時07分23秒
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