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カテゴリ:熱砂の約束
第21話 『生きる約束』 <全25話>
──────────────────────────────────── グウェンは彼を見つめ、思っていたことを口にした。 「本当に落ち着いているのね……」 「蛇にかまれて死ぬ人はそう大勢いるわけじゃないよ、グウェン」 レイフは言った。 「ひとかみされただけだから、さほど毒は入っていないだろう。致命的な臓器のそばではないし、動脈をやられたわけでもない。それに、ぼくは子どもではない。子どもは体が小さいから、蛇にかまれて死ぬ確率が大人よりも高いんだ。考えられることとしては、痛んで吐き気がし、熱が出るだろうな。でも、乗りきれるさ」 「それは……約束なの?」 「もちろんさ」 それは彼の本心なのだろうか。 わたしを安心させようとして、乗りきる自信のある口ぶりをしているだけなのでは?かといって、その自信がないようでは困る。 だから本心は尋ねないでおこう。 できるだけ体を動かさないほうがいいのだとレイフは言った。 とにかく今は、毒のまわりを遅らせることがいちばん大切なのだと。 つまり静かにしていること、そしてじっとしていることだ。 二人がいる場所は、砂浜を上がりきったところの椰子の木陰で、グウェンはレイフをできるだけ楽な姿勢にさせてやった。 そして救命胴衣を二つとも取ってくると、それにレイフをもたれさせた。 彼は、砂浜が下り坂になっているのがちょうどいいと言った。 足を海のほうに向けて、心臓より低くなるようにしている。 「水を飲む?」 グウェンは尋ねた。 「喉が渇いたでしょう?」 レイフはうなずいた。 グウェンは急いでココナッツの殻をいくつか取りに行き、それに水をくんできた。 彼は水を二杯飲み、それから止血帯をゆるめて、また縛り直した。 毒のまわりを遅らせたいけれど、血を完全に止めてしまうのはよくないからと説明しながら。 レイフは自分の隣の砂をたたいてみせた。 グウェンはそこに腰を下ろした。 傷はさらに腫れて、気味の悪い紫色になってきている。 グウェンは傷を見ないようにした。 レイフは言った。 「キャンプファイヤーの番を忘れるなよ。燃やし続けておくんだ。合図用の薪に点火するときに、その火が必要になるからね」 合図用の薪は五メートルほど先で、今いる場所とキャンプを設営した小さな半洞窟との間にあった。 準備は万端で、頭上の飛行機の音か、青い波に浮かぶ船の姿を待つばかりになっている。 「ココナッツの殻を取りに行ったときに確認したわ」 グウェンは言った。 「火は弱かったけど、炭火はたくさんあった。少ししたら、もっと木を足すわ」 「それでいい」 <8/24公開 第22話へつづく> ──────────────────────────────────── この作品の一部、または全部を無断で転載、複製などをすることは著作権法上の例外を除いて禁じられています。 All rights reserved including the right of reproduction in whole or in part in any form. This edition is published by arrangement with Harlequin Enterprises II B.V./ S.a.r.l. All characters in this book are fictitious. Any resemblance to actual persons, living or dead, is purely coincidental. Published by Harlequin K.K., Tokyo, 2008 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2009年08月21日 10時02分05秒
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