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2020.01.24
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カテゴリ:仕事と人間心理

「工場のおばちゃん〜あしたの朝子」(山口恵以子 作)。


食堂で働きながら執筆を続けた、「食堂のおばちゃん」こと山口恵以子の、これは、ご自身のご母堂をモデルに書かれた伝記小説。

「戦後」がまだまだ色濃く残る昭和20年代半ば。旅館の跡取り娘、朝子は、親のお膳立て見合いをすっぽかして家出し、都内の喫茶店で働くうち、成り行きで町工場の2代目と結婚する。
折しも日本が高度成長期に向かう目まぐるしい中、夫の家族との確執やら夫の浮気やら工場の雑用やら住み込み工員たちの世話やら契機の浮き沈みなど、様々な困難を超え、たくましく生き抜いていく、、、。

私がちょっとひっかかったのは、夫と夫の父親が経営する町工場が時代の流れでうまくいかなくなった1970年代初め、朝子は外に働きに出る決意をするのだが、その際、朝子が
「資格も特技も何もない専業主婦に出来る仕事は限られている」
と思い、周囲もそれを認めていたこと。

はあ?
工場の事務を担ってきたことや住み込み工員たちの世話をしてきたことは、珠算や簿記や調理師やカウンセラーの資格はなくても立派な「特技」ではないの?

とは言え、私も当時の世相を知っているから、わかる。
あの頃は、そういう家庭内の用事は、仕事とみなされなかったんだよね。
どんなにきちんと、かつ手際よくこなしても、「主婦なら当たり前」とされてきたのだ。

現在では違う。
効率よく家事を片付けられることはスキルの一つ。
どこにでもある素材で栄養バランスもとれている美味しい食事を作ったり、限られた時間内に部屋をきれいに出来る主婦力は、まさに稼ぎ力なんだよ。
家事代行サービスが熱い視線を浴びているのも、そこが認められてきたからなのだ。

そんな理屈はともかく、この本は、昭和という時代に思い出を持つ人間なら、作中でえがかれる社会背景や下町風景にもノスタルジアを感じて楽しく読める内容だ。







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最終更新日  2020.01.24 16:38:30
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