T君へ
あなたの突然の死の知らせから半年が経ちました。ねぇ、知ってましたか?私があなたに憧れてたこと・・・。知ってたはずですよね?短いラブレターを出したことがありましたから・・・。高校生の頃はS君と付き合っていた私でした。でも、いつもあなたのことが頭にありました。いつも相談に乗ってもらっていたからでしょうか?異性を意識することもなく、何でも話し合える仲でしたよね?私が出した手紙に短い返事が来たのはあなたからの手渡しでした。ドキドキしながら封を開けると「君にはSがいる」とだけ書いてありました。S君とあなたは親友でした。それからは、私があなたを避けてしまうようになりました。ねぇ、T君、今頃あなたは何処にいて何をしていますか?何年か前にうんと年下の奥さんをもらったと噂で聞き「あぁ、結婚したんだ」と思ったものです。久しぶりに同級会の連絡が入り、あなたに逢えると思ってちょっぴりときめいて酸っぱい思い出に浸っていたのに、どうして突然あなたが亡くなったという知らせなのでしょう?あなたに会う機会がなくても元気でいてくれさえすれば、それでよかった。風の噂でお子さんが二人出来たと聞いたこと、少し太ったということ、もみあげが濃いのは相変わらずだということも・・・。それもみんなあなたのことを時々思い出すのが懐かしかった。みんな、それぞれに幸せを掴んでいるんだと思っていました。淡い恋心はレモンの味に似ていると、この年齢になって分かりました。ねぇ、T君、若すぎましたよ、旅立つのが・・・。色々なことがある中で、大好きな秋の月を見ながら少しお酒を飲んでいます。ふと、あなたを思い出しました。私は、もう暫く頑張って生きていきますからね。