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北国の根魚 やっちゃん..さん
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気持ち 田中将大ブ… 田中 将大さん
Sep 2, 2006
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 ◇8月31日  苫民  (4)真 価


  ◇準決勝(8月19日)

   智弁和歌山 120100000=4
   駒大苫小牧 40102000X=7


 智弁和歌山は駒大苫小牧とエースの田中将大(3年)に異常なまでの対抗心を燃やしていた。

 準々決勝で大会記録となる5本のアーチを放った打線の、4番橋本良平(3年)は

 「3連覇を止めるのは僕たちしかいないと思っていた。田中君を打って勝つ自信はある」と眼光
 鋭く語った。

 夏の甲子園最多の30勝を挙げた名将、高嶋仁監督も自信をのぞかせた。

 「田中君は最高の投手。ずっと目標にしてきた。やっと対戦できる」。

 マシンで160キロの直球と140キロのスライダーを打たせ、打倒王者の意識を選手に植え付けて

 きた。

 試合が始まると、智弁和歌山の打ち気をそらすかのように、先発マウンドには菊地翔太(2年)が

 立っていた。

 初回、失策絡みで先制されたが、直後に本間篤史(3年)の3塁打など打者9人で4点を挙げ、

 逆転に成功。両校先発投手が1イニングもたずに降板し、乱打戦を予感させる幕開けだった。

 2回、1点差に詰め寄られ、予定より早く田中が救援。

 相手の中軸を打ち取って流れを引き戻し、5回には自らの適時打で貴重な追加点を挙げた。

 「2、3点はすぐにひっくり返る。セーフティーリードじゃない。受け身になるな。攻め続けろ」。

 駒大苫小牧監督の香田誉士史はナインを鼓舞する一方で、自らにも言い聞かせていた。

 采配(さいはい)が弱気になれば、選手は守りに入ってしまう。

 田中と小林秀(3年)のバッテリーには、「インコースをしっかり攻めろ」と指示。

 一発長打の危険性はあったが、外一辺倒で抑えられる相手ではなかった。

 強気に見えた監督だが、内心は穏やかではなかった。

 「田中も疲労があったし、かなり研究されていたと思う。怖くて怖くて」。

 それでも試合中、不安な感情を表に出すことは一切なかった。

 昨季から4番に座る本間篤(3年)の復調が大きな収穫になった。

 長打3本を放ち、「チームの足を引っ張ってばかりだったので打てて良かったです」

 と人懐っこい笑顔を見せた。

 甲子園を前に田中から主将のバトンを受け取った。

 これまでも豪快なプレーと明るいキャラクターでチームをもり立ててきた。

 今春、センバツ甲子園の出場辞退が決まって、「もう野球をやめたい」と思うほどに傷ついた。

 だが、仲間の前では、「悔しさは夏にぶつけよう」と前向きな姿勢を崩さなかった。

 打順を固定しない香田も「4番は篤史しかいない」と断言する。

 打撃で調子を崩しても守備や走塁、元気な声でチームに勇気を与える。

 精神的な柱として全幅の信頼を寄せていた。

 3年連続の決勝へ名乗りを挙げた北国の雄。

 3連覇を懸けた大一番はナインが歩んできた道のりを象徴する壮絶な試合になった。
   




 ◇9月 1日  苫民  (5)緊 迫


  ◇決勝(8月20日)

   駒大苫小牧  000000010000000=1
   早稲田実業  000000010000000=1

 
 エース対決が最大の焦点となった決勝。

 試合前、早稲田実業(西東京)の斎藤佑樹(3年)は相変わらずのポーカーフェースで、

 「(田中は)同じ高校生。ビビるという感覚はない。自分が上だという気持ちで投げる」と

 プライドをのぞかせた。

 駒大苫小牧の田中将大(3年)は「(斎藤は)僕と正反対の性格。

 クールと言われて格好いいけど、自分は自分ですから」とマイペースを崩さなかった。

 現在の堂々とした立ち振る舞いは貫録を感じさせるが、昨夏、日本航空との3回戦で初めて

 先発したときは「緊張で足ががたがた震えた」そうだ。

 2人とも持ち味は直球と落差の大きいスライダー。

 マウンド上でのしぐさ、表情は対照的だが、打者に向かう気迫、執念は相い通じているのかも

 しれない。

 開始2時間前の時点で入場券はすべて売り切れ、甲子園は超満員の観衆で埋め尽くされた。

 注目の両校は今大会の乱打戦の傾向を覆し、白熱の投手戦を展開する。

 わずか1安打で8回を迎えた駒大苫小牧は三木悠也(3年)が均衡を破る。

 カウントを取りにきた低めの直球をジャストミートし、センターにソロ弾。

 しかしこの裏、犠飛ですぐに追い付かれた。延長戦に突入。

 1点勝負の色合いが濃くなり、肌を刺すような緊張感が球場全体を包み込む。

 11回、今度は1死満塁の絶好機を迎えた。

 さまざまな選択肢が考えられる局面で、監督の香田誉士史が仕掛ける。

 「何か意表を突くことをしたかった。迷わずに決めた」。

 代打の岡川直樹(3年)にスクイズのサインを送った。

 斎藤がここで驚異的な集中力を発揮する。

 投球動作に入ってからのとっさの判断でスライダーをショートバウンドさせた。

 岡川も懸命に飛びついたが、バットに当たらない。

 15回には2死から本間篤史(3年)に対して最速147キロの真っすぐを連発し、力でねじ伏せた。

 早稲田実業の捕手、白川英聖(3年)は「正直、驚きますね。できれば最初から投げてくれよ、と

 思いますけど、結果的に抑えているから何も言えないですね」と、冗談交じりに斎藤のすごみ

 を言い表した。

 最終打席で三振した本間篤も「延長15回でまた速くなった。どこにこんな力が残っているのか」

 と、目の前に立ちはだかる右腕の底力に脅威を感じていた。

 37年ぶりとなる決勝戦の引き分け再試合。

 3時間半を超える熱戦を終え、本塁付近に整列した両チームに総立ちの観衆から温かい拍手

 が送られた。


 3連覇か、初優勝か―。


 翌日に持ち越された頂上対決。

 精根尽き果て、疲労困憊(こんぱい)のはずの球児たちの目にはまだ光が宿っていた。




 ◇9月 2日  苫民  (6)伝 説


  ◇決勝再試合(8月21日)

   駒大苫小牧 000001002=3
   早稲田実業 11000110X=4


 前日の激闘からおよそ20時間が過ぎ、駒大苫小牧と早稲田実業のナインは再び夢の舞台に
 立っていた。

 駒大苫小牧の田中将大(3年)は45分間のマッサージを受け、右肩にテーピングを施していた。

 「ひじ、肩が張っていて疲れはあるけど、最後は気持ちの勝負。辛抱強く投げていく」。

 体力は限界に達していたが、闘志をかき立て、再戦の頂上決戦に懸けていた。

 ただ、早稲田実業の斎藤佑樹(3年)の言葉には余裕さえ感じられた。

 「驚くほど疲れが残っていない。体が軽い。きのうはマウンドで笑っている姿を思い浮かべなが
 ら眠りました」。

 今春の選抜大会で引き分け再試合の連戦を投げ切り、スタミナには絶対の自信があった。

 駒大苫小牧は菊地翔太(2年)から田中への継投を選択し、初回と2回に1点ずつ失う。

 斎藤の投球にすきはない。

 無得点のまま5回を終了し、全校応援の1塁側アルプス席が重苦しい雰囲気に包まれる。

 何度も奇跡を演出してきたチームはここでも底力を発揮する。

 6回に三谷忠央(3年)が真ん中のカーブを左中間スタンドへ放り込み、2点を追加されて後が
 なくなった9回には中沢竜也(3年)がセンターに2ラン。

 必死にもがき、勝利をつかみ取ろうとする精神力は常識のはかりを超えていた。


 9回2死。


 一球一球にざわめきと歓声が巻き起こる。


 ファウルで粘って強振し続けた田中が斎藤の144キロ直球に空振り三振し、2日間にわたった
 名勝負の幕が下りた。

 すべての力を出し尽くしたエースは笑った。

 「すっきりした」。

 久しぶりに味わう敗者の感覚はある意味で新鮮だった。

 試合翌日、北海道に帰ってきた選手たちを大勢のファンが出迎えた。

 その熱狂ぶりは優勝した昨年、一昨年を上回る勢い。

 駒大苫小牧の野球には見ている者を夢中にさせる魅力があった。

 期待された3連覇は成し遂げられなくても、2006年夏の軌跡は人々の記憶にしっかりと刻ま
 れた。

 大黒柱の田中は「野球を通じていろんな人と知り合い、輪が広がった。仲間に助けてもらった
 試合も多かった」と3年間を振り返り、少し照れくさそうに言った。


 「みんなに『ありがとう』と伝えたい」


 勝負強い打撃が光った三谷は「胸に突き刺さるほどの応援が聞こえて感謝しています。

 最後に負けた悔しさは今後の人生に生かしたい」と語り、

 投手陣を献身的に支えた捕手の小林秀(3年)は「死ぬまで好きな野球とかかわっていく」と

 声を弾ませた。

 高校野球を通して得た財産は選手たちにとっても一生の宝物になった。

 全国4112校の頂点を決める長い戦いが終わった。

 この夏、苫小牧の球児が残した伝説は、高校野球の歴史にさんぜんと輝き続けるだろう。

 そして、彼らが白球に込めた夢は次世代の後輩たちにも引き継がれる。






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最終更新日  Sep 6, 2006 02:03:08 AM



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