カルシウムはホントにカルシウム?
「牛乳はカルシウムの宝庫」というのは誰でも知っていると思います。確かに牛乳にはカルシウムが豊富に含まれています。そしてカルシウムは骨を作ると信じられています。同様にレバーは血を作る、タンパク質は筋肉を作る、など、広く一般に信じられている栄養学上の俗説は多くあります。もちろん、成分からすれば、一理あるでしょう。しかし、この論法には二つの欠陥があります。まず第一に指摘できるのは、カルシウムが骨を作るのではない、という点。体内に入ったカルシウムが骨になるためには、脳からの指令を受けた自律神経がキチンと作動して、骨を作るべき働きをすることが条件なのです。第二点は、「レセプター」の問題です。これは、ふつう脳神経科で用いられる用語で、かんたんにいえば、“受け手”という意味です。神経と神経をつなぐホルモンには、送り手と受け手があり、レセプターの異状があると、神経は伝達しないのです。同じことが栄養についてもいえます。たとえば、カルシウムが体内に取り入れられたとしても、まずレセプターがカルシウムを認知し、正確に活用できなければ、骨になるどころか、栄養素としてのカルシウムは意味を持たなくなるわけです。また、カルシウムは牛乳や小魚だけから摂るものではなく、魚介類に多くあり、イカ、タコ、貝類や野菜にも多く、またカルシウムが不足すれば、穀類のカリウムがその効力を骨の材料にしてくれることを、忘れてはならないのです。もちろん、正常な機能が働けば、カルシウムは有効で必須の栄養素ではあるのですが、だからといって、いたずらにカルシウムを摂取しても無駄だということです。従来の栄養学は、この「レセプター」を無視してきました。そのためにカルシウムが足りなければ、カルシウムを補えばいい、という一方的な発想が生まれてきたのです。これが、いま流行の栄養補助食品の考え方です。しかし、カルシウムをはじめ、ビタミンやミネラルも、ただそのものを、直接送りこんでも、どれだけカラダが受け付けるでしょうか。カラダの“もう1人の自分”の存在を無視したような、乱暴なやり方が、カラダにいい結果をもたらすことはありません。私たちの体の中、とりわけ“もう1人の自分”の働きは、私たちが考えているより、はるかに精密で高等なのです。機械のように、油が切れたからといって、油を差すようなやり方が通用するはずはありません。※もう1人の自分=脳と自律神経