カテゴリ:小説
日本に戻ってきてから5日が過ぎた。
サラの手紙を読んだあと部屋で号泣したことや その後も元気がなかったと見られてしまい、 なにかあったのか?もしかしたらいじめらてるんじゃないのか?など 家族が思ったらしく、母が学校にまで聞きに行くという事態にまでなってしまったが それも誤解だとわかり、やっと周りが落ち着いてきた。 和樹自身も、ショックから立ち直ったというよりは やっと落ち着いた感じではあった。 サッカーに行くことはなくなったが、その分勉強をよくするようになった。 今にして思えば、それもいじめられてると思ったきっかけかもしれないと 和樹はちょっと苦笑いだった。 サラの手紙は大切にしまい、写真は みんなと写っているのを机に置き、サラだけが写っているのを手帳に入れて 持ち歩くことにした。 忘れるはずはないと思いながらも、やはり大切な思い出だからと自ら考えて。 そんなある日。 和樹は倒産して使われなくなった会社のグラウンドにいた。 空き地として野球などにはもってこいなのだが、 学校からかなり遠いので、誰も来ない場所だった。 和樹は気になっていたことを試しにきたのだ。 「よし・・・。」 目を閉じて集中する。 すると辺りの木の葉が震えだす。 そして目を開けるのと同時に、気合もろとも放つ。 火の魔法だ。 放たれた魔法はわざと弱く打ったものであったが、 もってきたりんごを焼くだけの威力はあった。 「焼きりんご出来上がりか・・・魔法はまだ使えるみたいだな。」 そう、和樹は魔法がまだ使えるかどうかを試しにきていたのだ。 「ま、目立ちたくもないし、魔法は人前では見せられないな・・・。 簡単に出せるものじゃなくてよかったよ。 もし簡単なことだったら思わず使ってしまいそうだったもんな・・・。」 その後、落ちていた長い木の枝を拾い、 剣の素振りをしてみる。 まったくの素人から2年で同じ冒険者からも「強い」と言われた剣の腕。 これだけはさび付かせるわけにはいかなかった。 「また冒険するとき、弱くなったなんて言われたくないしな。」 和樹はまたサラに会えると信じて、またリデューラで冒険できることを信じて この日から毎日、剣と魔法の鍛錬を欠かさないことにした。 また、和樹はなんと、リデューラ語の本格習得を狙っていた。 もともと、多少の英語の心得がある和樹。 (4年のころまで、アメリカ人の知り合いがいた。現在は帰国) 外国語を勉強するのとまったく関係がないとは言えないという考えから 本気に挑戦することになった。 とはいえ、リデューラ語の辞書や教科書などはない。 そのため、勉強はさすがに簡単ではなかった。 時計をしていると言葉が勝手にリデューラ語になることを利用して 何でもいいから物、りんごやみかんなどを時計をしたまま文字にする。 すると無意識にリデューラ語を書いていることになる。 あと、発音も録音して、これがこの物の発音という風にひたすらやっていく 気の長い勉強だ。 本気で時計なしで話ができるようにしたいというよりは 少しでも時計なしで理解できたらという考えであった。 和樹はサラのこと、旅で出会った人たちのこと、 そしてリデューラでの出来事をただ懐かしむだけではなく 前向きに、そして再び旅立つ日が来ることを信じて まっすぐな道を歩くことにした。 またサラに会うことは夢なのかもしれない。 でも、自分が信じなければ道に光がともることもない。 だからその日が来るまで、信じ続ける。 それが和樹のこれから進む「夢と光の道」であった。 夢と光の道 第1部 完 第52話 第54話 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2006年11月04日 14時20分03秒
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