こんにちは。角栄だよ。元気かね？
私は汗っかきでな。こんな真冬でも
ハンカチで拭うほど、汗が出てきて
困るんだよ。先程、やっと、全国各地
からの相談を終えたところだ。

今日はお金についてでも話すとするかね。

諸君、お金を貸すなら黙って貸せ、そして
その金を返すよう催促してはならない。

納得のいかぬ話よの。相手に善意をほどこしても
他人様にいちいち吹聴する必要は全くない。
しかし、これを呑みこんでいるというのも難しい
ものである。

やってやったと誰かに意思表示して、やっと落ち着く
のが人間だ。確かに誰かに言いたい。「オレがあいつ
を救ってやった」

それを口外してはならぬ。墓場まで誰にも言わぬ覚悟
で善意を施しなさい。お金の貸し借りの善意について
言えば、自分さえ口外しなければ、金銭の貸し借り、授与
を第三者が永遠に知る事はない。

借りた奴は第三者から「アイツ、そんなに台所がくるしか
ったのか」と思われることもない。

ある選挙候補者にお金を渡して、「あいつの応援をしたよ」
と誰かに言ってしまえば、日を経ずしてその候補者の耳に
入る。魅力は半減する。黙っておいてくれた人が大きく
みえるのは当然だ。

私の親友がお金で困っていてね。お金を授与したことが
あった。プライドの高い男だったので、黙っておいた。
一切、会ってもそのお金の話はしなかったし、返せという
そぶりもみせなかった。するとどうだろう。その親友は
みんなに「角栄からお金を借りたが、奴は返せとも言わない。
いつか必ず、この金は角栄に返す。そして、あいつが
ピンチの時一番に飛んでいく」と方々で話しているとの
噂を聞いた。周りの人間の態度も変わっていったよ。

昨日の話とちょっと、かぶるね。広大な好意的な中間層
はそうやってできあがるのだよ。

これをテクニックと切り捨てるのは早急すぎる。
私が大事にしているのはなにより人との接し方だ。
戦略や戦術じゃない。相手のことを本気で思えるか
どうかだよ。

その根底に流れるものは愛だ。うわべだけのテクニック
でことに臨んだら、火傷することも付け加えておこう。

がんばるのだぞ。諸君、未来は明るい。また、相談しに
おいで。