内臓脂肪が多くなると、「メタボリックシンドローム」の状態になり、やがて「動脈硬化」に至るという記述を、数回に分けて掲載したが、「動脈硬化」のことについては詳しく記述していなかった。
今日から数回にわたって、「動脈硬化」について、その原因や症状、予防と治療に関する情報を掲載する。
情報源は、世界最大級の米国の製薬会社「メルク社」が、2004年に発刊した「高齢者医療メルクマニュアル家庭版」である。この書籍は、専門家以外の方にでも理解されやすい平易な言葉で、高齢者特有の健康上の問題を取り上げている。
動脈硬化とは
動脈が硬くなることを意味する「動脈硬化」は、動脈の壁が厚くなって弾力性が乏しくなる複数の病気に対して一般的に使われている総称です。
動脈硬化には、アテローム動脈硬化、細動脈硬化、メンケベルグ型動脈硬化の3つのタイプがあります。
最も多いタイプのアテローム動脈硬化は、脂肪性物質が沈着して形成されたアテローム(粥状)と関連した動脈硬化です。この動脈硬化による損傷は、中動脈や大動脈に生じます。
細動脈硬化は、細動脈、つまり細い動脈に起こる動脈硬化です。それは主に細動脈壁の内層と中間層を傷つけます。細動脈の壁が厚くなり、内腔が狭くなります。その結果、細動脈が血液を供給している器官は、十分な量の血液を得られません。腎臓がよくこの悪影響を受けます。この細動脈の障害は、主に高血圧や糖尿病の患者にみられます。これらの疾患のある人では、細動脈壁に圧力がかかり、結果として細動脈壁が厚くなります。
メンケベルグ型動脈硬化は、細動脈や中動脈を傷つけます。動脈壁内へのカルシウムの蓄積が動脈壁を硬くしますが、内腔は狭くなりません。これは本質的には無害な障害で、50歳以上の男女に普通に認められます。
アテローム動脈硬化
アテローム動脈硬化(粥状[じゅくじょう]硬化)とは、脂肪性物質のまだらな沈着物(アテローム、あるいはアテローム硬化斑[プラーク])が、中動脈や大動脈の内壁で大きくなるため、血流が減少したり、遮断されたりする病気です。
ほとんどの欧米諸国で、アテローム動脈硬化は主要な病因および死因です。米国だけでも1996年のアテローム動脈硬化による死亡者数は100万人近くと、癌(がん)による死亡の2倍、事故による死亡の10倍を占めています。
医学の著しい進歩にもかかわらず、冠動脈疾患(心臓に血液を供給する冠動脈に生じるアテローム動脈硬化)による心臓発作と、脳卒中(脳へ続く動脈に生じるアテローム動脈硬化)は、ほかのすべての原因を合わせたよりも多数の死亡の原因となっています。
アテローム動脈硬化は、脳、心臓、腎臓、その他の命にかかわる臓器や脚の中動脈や大動脈に損傷を与えます。アテローム動脈硬化は、動脈壁が肥厚して弾力性がなくなる病態の総称である動脈硬化の中で、最も重大で、最も多くみられる種類です。