2022/04/10(日)12:20
ドラマレビュー NHK朝ドラ「カムカムエブリバディ」
番組紹介|NHK連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』
NHK朝ドラ「カムカムエブリバディ」の視聴完走した。
100年の物語と銘打っていたので、長い長い物語のように思えた。しかし、よく見ると実際は80年ほどの物語で最後は20年すっ飛ばしているし、途中も折に触れ10年ほどすっ飛ばしていた。
脈々と物語は続いていたわけだけれど、飛ばされたところどうだったのかなぁ、と思いをはせた。
脚本の藤本有紀のたぐいまれなる厚情の筆により、心にしみわたる作品となった気がする。時には不思議に思われるシーンもなくはなかったが、それが脚本のせいかどうかはわからない。とにかくいい作品を書き上げてくれた。
放送前からヒロインが三世代三人が登場すると話題になり、中でもオーディションでなく選ばれたふかっちゃんこと深津絵里の存在は異様であり、大注目であった。彼女が映像で18歳の娘を演じるということも喧伝された。本人はプレッシャーの強さがあったにせよ、朝ドラのヒロインを演じるという快感に喜びを感じていたように思う。
さて、初代ヒロイン・上白石萌音が演じる橘安子。相手役・松村北斗が雉真稔を朴訥と演じたことで純朴な安子を演じれたと思う。キャスティングされた俳優はみな素晴らしいと思うけれど、YOUと濱田岳には驚いた。YOUは芝居がはまってよかったけれど、濱田岳のうるさい芝居が気に食わないので、濱田は目障りであった。
次に二代目ヒロイン・深津絵里演じる雉真るい。不安と期待が入り混じった中での登場は喪服の黒がうまく隠して、いや引き立ててくれた。クリーニング店の竹村夫妻(村田雄浩・濱田マリ)、お客の片桐(風間俊介)、レコード会社の親子(佐川満男・佐々木希)、ジャズ喫茶での木暮(近藤芳正)・トミー(早乙女太一)・ベリー(市川実日子)と人のいい人ばかり登場する。一人訳の分からない不義理・不人情な人物が大月錠一郎(オダギリジョー)だけであった。心情を吐露しない錠一郎を一心に待つ女となったるい。彼の身勝手さに振り回されながらも彼とともに生きていく道を選ぶるいは胆が座っていたと思う。朝ドラに何度か登場している濱田マリの好演はもちろんだが、嫌なイメージのあった早乙女太一が無関心さを装いながら親身になっている様は好感が持て、惚れてしまう(笑)。ベリーもかっこよかったなぁ。短い出演であったが風間俊介の芝居、良かったと思う。
満を持しての登場となった三代目ヒロイン・川栄李奈演じる大月ひなた。注目され人気継続の最後を締めるヒロインとして気合が入ったことだろう。とないえ、そんなところはみじんも見せず、力の抜けたというか自然な感じのひなたがとても良かった。演技巧者として注目される女優だと、あらためて証明してみせた気がする。彼女の真っ白な肌は美しくとても素敵であった。ここでは著名な役者がキャスティングされ松重豊、尾上菊之助、青木崇高、松重聡、安達祐実、松原智恵子、目黒祐樹、多岐川裕美とぞろぞろ登場したことには驚いた。若手(?)も新川優愛、城田優に今話題の三浦透子。歌手・森山良子のキャスティングもちょっとした驚きであった。多岐川裕美の演技を見たのは久しぶりでとても気持ちが高ぶった。
NHKの放送コードがあるのだろう。東映太秦映画村が条映太秦映画村となったり、映画「ラストサムライ」が「サムライベースボール」になったり、ドラマ「暴れん坊将軍」が「破天荒将軍」になったりで居心地悪い気がした。反面NHKの朝ドラはタイトルは出るし映像も出た。自社なのでOKと言われればそれまでだが、BS放送などで映画放映の時に邦画で固有名詞が使われていてもそのまま放送されている気がする。そのことを思うと著作権、権利問題がある場合を除き、堂々と固有名詞を使えばよいのにと思えた。
さて、このドラマも最後をむかえた。安子・ローズウッドが100歳を迎えたのは驚きだが、彼女のアメリカでの暮らし、生きざまがほぼ描かれず、再婚した相手のその後の消息にも触れなかったので心残りを感じる。ひなたは結婚したとはきかないので独身のままだと物語が途絶えてしまう気がするけれど、そこは弟・桃太郎が結婚するので彼の子供に思いを託せばいいのだろうか。
「カムカムエブリバディ」の皆さま、お疲れさまでした。