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カテゴリ:hitori goto......
![]() ある日森の中 くまさんに 出会った 花咲く森の道 くまさんに 出会った くまさんの 言うことにゃ お嬢さん おにげなさい スタコラ サッササノサ スタコラ サッササノサ ところが くまさんが あとから ついてくる トコトコ トコトコと トコトコ トコトコと お嬢さん お待ちなさい ちょっと 落とし物 白い貝がらの 小さな イヤリング あら くまさん ありがとう お礼に うたいましょう ラララ ララララ ラララ ララララ の再現小説をご紹介します。m(_ _)m ある日、駐在の熊田春吉巡査(33)は、県警本部から全国指名手配中の連続窃盗犯が森に入ったらしいとの連絡を受けて、単身捜索に向かった。本来は応援の到着を待って山狩りを行うのだが、この村出身で正義感の強い熊田は、応援の到着を待たずに、日常の警邏のふりをして森へ向かった。 熊田が一人で森へ向かったのにはもうひとつの理由があった。 この窃盗犯の陰に若い女性の姿、しかも、かつて地元での就職を希望していた熊田を駐在に取り立ててくれた大恩ある前村長の娘の名前が、非公式にではあるが取り沙汰されていたのである。熊田はお嬢さんの無実を信じていた。そして決心していた。万一お嬢さんが犯罪に関係していたとしても、お嬢さんだけは守ってみせると。窃盗犯が警察官である自分に対してお嬢さんの名前を口にしようものなら、その場で射殺してもよいとまで思っていた。 このとき、熊田の胸の奥には、本人も気づかぬ娘に対する秘められた熱い想いがあったことは疑いがない。 森の中深く、熊田が花咲く森の道にさしかかった時である。見慣れた女性の姿をみとめて、熊田は愕然とした。お嬢さんではないか。 娘の髪は乱れ、ブラウスも胸元が大きく裂けている。 娘は蹌踉とした足取りで、熊田が近づくまで気づかなかったという。 「お嬢さん、いったいどうなさっただ」 娘は、はっとして振り返ったが、それが熊田であることを認めると、観念したようにかたわらの茂みを指さした。 熊田は再び腰を抜かさんばかりになった。手配中の窃盗犯が頭から血を流して倒れているではないか。男が死んでいることは一目で見て取れた。そして、そばに血だらけの石塊が落ちていた。 「お嬢さんお逃げなさい。じきに大勢の警官がやってきます。ここは私にまかせて」 娘は我に返ったようにあたりを見回し、熊田に深くお辞儀をすると無言で走り出した。 熊田は近くの岩場から死体を投げ落とすつもりだった。そうすれば殺人は露見しない。男の死を転落事故に見せかけるつもりだった。 死体を持ち上げたとき、熊田の足元で何かがキラリと光った。娘のイヤリングだ。熊田の背中から冷や汗が吹き出した。白い貝殻のイヤリングなど、この村に一組しかないことは、村の娘ならば全員知っている。 熊田はそれをつかんで走りだした。日ごろ柔道で鍛えた体である。若い娘に追いつくことなど造作もない。 「お嬢さん、お待ちなさい、ちょっと落とし物。これ、こんなもん残しといたらあとでどえらいことになる」 熊田は白い貝殻の小さなイヤリングを差し出した。 「あら……」 娘は絶句した。娘は深く胸を打たれた。昔の恩人の娘とはいえ、自分の職務をなげうって、この男はどうしてここまで。警察官なのに、私のような犯罪者にどうしてそこまで。 「……くまさん」 娘の大きな美しい目から、みるみる涙があふれ出した。 「ありがとう」 娘は、小さなイヤリングの乗った熊田の大きな手を両手で包み込んだ。 「お礼にうたいましょう」 娘は、男との関係とこれまでの犯罪をすべて自白した。 熊田の慟哭が森に響いた。 素晴らしい推理です。なぜこうなったか?!はこちらへ↓ http://www1.odn.ne.jp/mushimaru/bakaessay/bear.htm お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2006年05月03日 12時47分15秒
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