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テレビで見た現場で、最も印象深かったのは、殺人現場となった居間の光景だった。
家業の自転車店を継いで生きていた男はある早朝、その居間でベッドの母を殺した。 もう何も置かれていないその部屋で、何年も取り替えられずにいたと思われる 畳が疲弊した表面をぼんやりと浮かべている。 すり減った畳が、男と母親の無間に続くと思われた甲斐なき生活を映し出している ように見えた。 男はその部屋で30年もの月日を、まずリューマチを患う父の介護、そして 父亡き後はやがて同じくリューマチを患い、痴呆症になった母の介護、そして 自らもリューマチを患った身でなんの頼る術もないまま、むなしさとわびしさと 淋しさとやりきれなさと報われない疲労感しかない生活を続けていたのだ。 もう住むもののいなくなった居間に敷かれた畳だけがぼんやりとした昼のうすい光に 照らされている。ここで過ごした男の無言の人生劇を反芻しているかのように... お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2012年01月25日 20時28分55秒
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