藁畳には、ほとんどの場合防虫加工処理が施されています。
・畳表
・畳床
・縁下紙 縁の下に使用している
・糸 逢着用の糸
・裏シート 畳の裏面のシート
畳床について、JIS(日本工業規格)では、「ダニ、その他の害虫が発生しないように、適切な防虫処理をしなければならない。
但し、防虫処理には人体に悪影響を及ぼす薬剤を使用してはならない」として防虫処理が義務付けられています。
その防虫処理の方法には、「防虫加工紙、誘電加熱処理、真空殺菌処理、さらに防虫加工畳糸の使用など」があり、殺虫剤にはフェンチオン、フェニトロチオン、ダイアジノンなどの有機リン系農薬が高濃度で使われています。
防虫処理とは、農薬を使用することと同じであるという認識が必要です。
■ 誘電加熱処理
畳全体にマイクロ波や高周波を当て、65~70℃程度に加熱し、殺虫する方法です。
この場合、その時点で発生しているダニを殺すことはできても、いずれ部屋に敷き詰め使用して
いる間に湿気を吸い込み、ダニが再発生します。
さらに、水分の多いところでは非常に高温になり、裏に防虫紙が張ってあってビニールシートが
当たっていると蒸れたような状態になり、藁の弾力性もなくなり、畳が傷むという欠点がありま
す。
■ 真空殺菌処理
真空状態にし、酸素を奪う方法です。
■ 熱風乾燥処理
熱風乾燥と熱とで殺虫する方法です。
■ 防虫加工紙
畳の下部に縫いこまれており、そこに防虫用の殺虫剤を染み込ませています。
藁床の防虫処理に殺虫剤を使用した場合、農地でのそれを使用するよりはるかに高濃度に
なるといわれます。
【使用される主な殺虫剤】
・フェニトロチオン(MEP)
・フェンチオン
・ダイアジノン
■ 防虫加工不織布
防虫加工紙同様に畳床に縫いこんであり、そこに防虫用の殺虫剤を染み込ませています。
■ 裏シート(裏打ちシート)
床面からの湿気から畳床を保護するためのシートに、防虫加工されているものです。
防虫シートとして畳に縫い込まれる場合と、防湿及び防虫シートとして畳の下に敷き込まれて
いる場合があります。
使用される薬剤は、有機リン系のものやホウ素系化合物などです。
■ 防虫加工畳糸使用
麻、ポリエチレン、ポリエステルなどの畳糸
防虫畳糸、防虫畳縁、防虫縁下紙など、いたるところで防虫加工されていますが、いずれも
防虫加工紙と同じように農薬をしみ込ませたものです。
■ 防虫剤
畳の下に撒く。
【使用される薬剤】
・ナフタリン
・フェニトロチオン(MEP)
藁畳(建材床の一部を含む)において注意すべき点は下記のようになります。
(畳床)
・畳床の防虫処理方法及び薬剤
・稲わら床の原料である藁の残留農薬
(畳表)
・畳表の着色料
・畳表の原料である藺草の残留農薬
・畳表の防カビ・防ダニ処理薬剤
日本伝統の藁畳は良い面が多くあります。しかし、建物が高気密化されていき室内の密閉度を上げた結果、藁畳の特質を生かすことが困難になってきました。それは密閉された中で、室内の湿気が逃げることなく常時高湿度の状態のため、藁畳が湿気を吸い上げ、藁の中にいる微生物が活動しやすい環境をつくってきたからです。
そこで従来の藁畳に固執しない建材床などの畳や防虫対策を施した畳が普及してきました。その反面、上記の問題(防虫薬剤などによる健康影響)が起きてきたのも事実です。
現在では、防虫処理の問題の改善をした畳など様々な畳が生産され、流通されつつあります。このように畳原料の生産者の方、畳を製造されておられる方は日本の伝統である畳を守るためにも改善、努力をしておられます。