再出発日記

2021/11/16(火)15:21

「諸星大二郎の世界」を紐解く

読書(ノンフィクション12~)(911)

「諸星大二郎の世界」コロナブックス 平凡社 漫画家のムック本に興味を持ったので、大好きな諸星大二郎を紐解いた。2016年発行。極めてオーソドックスな構成。大きな特徴は真ん中にひっそりと挟まれていた。 前半は、諸星作品を「古代」「民俗」「東洋」「南方」「西洋」「日常」に分けて、有名作品の原画を配し、そこに有名評者の短評を載せている。特に松木武彦(古代)と畑中章宏(民俗)の2人の評は、私がファンということもあって学ぶこと多かった。終わりは、山岸涼子対談、略年譜、主要作品解説、全335作品初出誌&単行本データと普通の構成ではある。 そして、真ん中に諸星大二郎が育った町、東京都本木町の再訪記が載っている。特別なことは書かれていない。普通の下町であり、今はほとんど面影もない。通っていた小学校は卒業直後に火事で木造校舎が焼けたそうだ。だから「ぼくとフリオと校庭で」はあんなに郷愁に満ちていたのか?「95の質問」で東京で1番好きな所と書いた「(お化け煙突が見える)荒川土手」も歩いたようだ。それを含めて、60年代の帝国書院地図が載っていた。まだ田んぼが多く、紡績工場跡もある。一度この地図を基に、西新井駅経由、大師前で降りて、大師の山門の仁王像を眺め、興野神社に寄り(作者家宅跡は分からないだろうから諦めて)本木小学校は寄り、最後に荒川土手に出てみたい。諸星大二郎に決定的な影響を与えた景色かどうかは、行ってみないとわからない。 もう一つ圧巻だったのは、仕事部屋の本棚を、写真だけでなく、活字の資料として、1000冊近く、すべて一覧にしてくれていたことである。畑中章宏さんが取材しているのだが、「まるで学者の書斎か研究室を見るようである。考古・民俗・歴史・宗教・美術・日本・東洋、西洋まで広範囲にわたるこの書棚の主は、本の配列を十分に記憶し、必要な本を、すぐに取り出すことができるだろう」と述べる。ざーと眺めただけでもくらくらした。一冊たりとも、簡単に手に入れたり、簡単に読み通せる本は置いていなかった。

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