テーマ:趣味の英語(406)
カテゴリ:Christmas
お蔭さまで「サンタクロースはいるのでしょうか?」が完訳できました。とても満足できるものではありませんが、拙いながらも、訳し通せたことが嬉しく、みなさんに御礼申しあげます。
ところで、この社説を書いたチャーチさんのことについて、もう少し書いておきたいと思います。Francis Pharcellus Churchさんは"Baptist minister"、バプテスト派(米国では最大のプロテスタント教派)の牧師の息子でした。ニューヨークタイムズ社の記者として南北戦争(1865年終結)に従軍し、この社説を書いた当時はサン新聞社のベテラン記者でした。宗教の問題だけでなく、こういった議論の余地のある問題は、十分な考察のできるチャーチさんに任せられることが多かったそうです。この新聞の社説は無記名で、その後もこの新聞社が廃業するまで毎年掲載されたにもかかわらず、彼の名が公表されたのは1906年に彼が亡くなってからのことだそうです。さぞかし優しいお父さんだったのだろうと思われるかもしれませんが、彼に子供はなく、"sardonic man"「冷笑家、皮肉屋」だったそうです。その彼が、この心のこもった社説を書いたのは一見不可解かもしれません。この不可思議をとく鍵は、彼のモットー、"Endeavor to clear your mind of cant"にあるかもしれません。 "endeavor"は「義務を果す」が原義、スペースシャトルの名前にもなっていますね。"endeavor to do"で「~しようと(真剣に)努める」 "clear"は「じゃまものや不要なものがなく視界がさえぎられない」が本義で他動詞として、"clear A of B"で「AからBを取り除く」 "cant"は訳語が難しいのですが、ここでは「偽善的な決まり文句、口先だけの説教」などの辞書の訳語から「真理を追究しない表面的な考え方」とでも訳しましょう。 つまり「表面的な考え方をせずに真理を追究することに努める」が座右の銘だったチャーチさん。子供を言いくるめる気持ちがなくて、ヴァージニアの気持ちを大切にながらも真理を求めたから、この社説は百年以上受け継がれてきたのでしょう。子供のいない彼がこの社説で世に名前を残すことになるとは皮肉なものですが、案外、希望の光を残していくことにまんざらでもなかったのではないでしょうか。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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おはようございます♪
"Endeavor to clear your mind of cant"…表面的な考え方をせずに真理を追究することに努める。 僕の"Easy come,Easy go!"とはずいぶん違う座右の銘ですが…(苦笑)。 10年前の自分を思い出すと、その言葉の意味がわかるような気がします。 いいフレーズです(メモしておきます)。 日記に書いた例のイタイ話は約10年前のことなので。。。 (December 27, 2004 08:39:59 AM)
この社説のことは知っていましたが、じっくり読んだことはありませんでした。
美しい文章ですね。 読みながら、指輪物語を読んで物語の持つ力というものに気づき始めた私には、心にしみ入る文章でした。 「ねぇ、バージニア」と話しかけている様子が感じられる暖かい文章ですね。 くるみもちさんのおかげで良い機会が得られて良かったです。有り難うございました。 (December 27, 2004 05:18:47 PM)
くるみもちさん、
いや~、お疲れ様でした。力作ですね。よくここまで掘り下げて・・・。 riri_55さんやポンチョ♪さんたちのコメントもとてもレベルが高く「う~ん」と唸ってしまいました。皆さんスゴイです。プリントしてゆっくり読み返したいです。 本当にお疲れ様でした。よい、お正月が過ごせますね。Woody (December 27, 2004 07:35:44 PM)
おはようございます。
チャーチさんの言葉がお気に召したようで良かったです。 june17thさんは魅力的な方なので、罪作りも多いのかも。でも自覚があるのだから、逆に肥やしにして成熟できる可能性大です。 "But a person who is forgiven little shows only little love." (From Luke 7:47) 「許されることの少ない者は愛することも少ない」 これは新約聖書の言葉。いろいろあるでしょう。 覚えるのなら欽定聖書(キングジェームズ版)が格調高くていいかしら。 "but to whom little is forgiven, the same loveth little." (December 28, 2004 07:09:42 AM)
コメントありがとうございます。
私も訳しながら、詩のように美しい文章だと思いました。形の美しさはもちろん、媚びることのない優しさも感じました。mimoさんに喜んでいただけて嬉しいです。 「指輪物語」は原書を手にとったことがあるのですが読み通す自信がなくて置きました。並べられていた「ホビットの冒険」から挑戦してみようかしら。 うっかりものですが、これからもよろしくお願いします。 (December 28, 2004 07:11:06 AM)
温かなねぎらいのお言葉ありがとうございます。
英語の素養がない私が訳せたのは、もちろんriri_55さんやポンチョ♪さんのサポートのお蔭ですが、怠け者の私も、読んで下さる方がいると言うだけで奮い立つことができました。Woodyさんはじめ、読んでくださったみなさんに感謝しています。 お正月はのんびり過ごしたいところですが、○○暇なし、を地で行く生活です。(笑) Woodyさんこそのどかなお正月を迎えられますように。 (December 28, 2004 07:11:39 AM)
チャーチさんとその時代
Francis Pharcellus Church (February 22, 1839 - April 11, 1906) チャーチさんは 米国が大きく変わろうとしていた時代 南北戦争(the Civil War 1861-1865)や西部開拓(1860年代から1890年代)タフな時代を体験し もうフロンティア(辺境)もなくなった1890年代の終わり 58歳の頃にこのYes,Virginiaを 20世紀を 生きる次の世代に 心温まるメッセージを贈られて 現在の私たちにまで届いてる・・なんか不思議ですね ちなみに OK牧場の決闘(1881)西部劇でも有名なワイアットアープ保安官(Wyatt Earp 1848-1929) チャーチさんより年下だったようです (December 28, 2004 03:12:44 PM)
こんばんは。
さらなる情報ありがとうございます。 よくチャーチさんの生没年月日まで判りましたね。 さすがriri_55さん、やっぱりドラえもんのどこでもドアを持っていらっしゃるのかしら?まるで今見てきたみたい。 西部劇はあまり見ないのですが、19世紀半ばなんですね。チャーチさんは同じ時代を生きてきた。そして大都会のニューヨークで教育者としていきたヴァージニアに社説を残した。チャーチさんとヴァージニアはちょうど50歳違い。二人が生きた100年の、なんという変遷でしょう。二人が重なって生きた時から、さらに100年経ってそれでもこの社説は残っている。百年の時空も私には悠久の彼方です。本当に不思議ですね。 (December 28, 2004 09:48:55 PM)
英文を読むと言ってもあらゆる知識が必要だと言うことをあらためて実感しました。
ここに来られる方々の博識振りにも驚かされています。 くるみ もちさんの考察力にも脱帽です。 私は単に英語(言語学)の方面の興味関心のみに終始しているので,もっと幅広い知識,奥深い考察をしないといけないなあと反省しています。 とは,言ってもなかなかできないので,ここで勉強させていただくのを楽しみにしています。 いつも,くるみ もちさんのところに便乗して勉強させていただいて,感謝感謝!です。 (*^^)/。・:*:・°★,。・:*:・°☆Thanks a lot! (December 29, 2004 07:28:49 AM)
こんなに誉められると、おもはゆいです。(*^o^*)
このブログでは、みなさんが私の足りない分を補うだけでなく豊かなものにしてくださるので、ひとりで勉強するより何倍も楽しくて、感謝しています。ここに集(つど)ってくださる方々にも喜んでいただけているのなら、こんなに嬉しいことはありません。 ここは趣味の英語、ありとあらゆる方法で英語を楽しめたらいいなと思っています。どうぞ、これからもよろしくお願いします。 (December 30, 2004 03:50:04 AM) |