テーマ:趣味の英語(406)
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東大寺の起源の続き。
"for the repose of the spirit of Crown Prince Motoi" 聖武天皇が早世した息子の皇太子基の霊を供養するため金鐘山寺が、この地に最初に建てられました。 "repose"は強調の"re"と英語のpause(休止)を意味する"pose"から成り立ち、「休息」を意味する言葉。さらに「永久の眠り」を意味し、死を婉曲に表現することもあります。 電子辞書で検索すると "for the repose of the souls of the dead"で 「死者の霊が安らかに眠れるように」 "for the repose of the spirit of"と似ています。"soul"と"spirit"が入れ替わっているだけ。 "pray for his soul" 「彼の冥福を祈る」 娘の最初のホームスティ先のお父さんが亡くなった時に、お悔やみのことばを英会話の先生に添削してもらったのですが、その時教えてもらったのがこの表現です。"his"のところは亡くなった人のファーストネームを入れたほうがいいそうです。 辞書には "pray for the souls of the dead" 「死者の冥福を祈る」とあります。 英語では死者の霊のことは"soul"で表現するようです。 エミリー・ブロンテの嵐が丘"Wuthering Hights"のなかでも、ヒースクリフが瀕死のキャシーのことを"my life, my soul"といい、永遠に自分のものだと叫びます。 "soul"は「魂、霊」を意味することばで、"heart"や"mind"と同じくゲルマン語が起源のことばです。目には見えない、抽象的な概念でありながら、生きていくには欠くことのできない言葉たちで、古くから使われゲルマン民族の移動と共にブリテン島にもたらされたのでしょう。 一方"spirit"は「呼吸」が原義でフランス経由でイギリスにもたらされたラテン語起源の言葉。「精神、魂」の意味。"soul"が本能に近い熱い心を感じさせるのに対して、"spirit"は研ぎ澄まされた精神的なものを感じます。ゲルマン語も根元をたどれば、ラテン語かギリシャ語に辿り着くのでしょうが、先祖代々使われた言葉と、文化によってもたらされた言葉の差を感じます。 映画の「嵐が丘」を初めて観た時、ヒースクリフがキャシーの墓を掘りかえす場面に仰天しました。当時はまだ中学生だったせいもあるかもしれませんが、私が想像するような愛とはかけ離れたものでした。墓を暴く行為が恐ろしいのはもちろんですが、もうそこには魂が残っていないのに、と思ったのです。 その辺が"soul"と"spirit"の違いであり、東大寺のパンフレットで"soul"を"spirit"に置き換えた翻訳者は日本文化に精通した方だと思いました。 追記 私が観たヒースクリフはローレンス・オリヴィエではなく、ティモシー・ダルトンです。誤解のないように。(笑) レイフ・ファインズではないので若いとは言えませんが。(涙) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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