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カテゴリ:瞑月と周りの人々のストーリー
産後一年は仕事は復帰せず、育児に専念して欲しい。僕の希望に彼女は同意してくれた。心配だったのは、彼女はとても神経質なのと、頑張りすぎる事。育児書を片手に少しでも異なる点があると、些細な事でも気になってしまう。
育児はマニュアル通りにはいかないよ!ノエル。大丈夫だから、少し湿疹ができていても、あまり神経質に考えなくていいんだからね。 でも、不安なの。初めての事だし、相談できる先輩ママもいないんだもの。どの程度までが大丈夫なのかが判断できないの。 少し憔悴している彼女を見ていると、育児の大変さで自分を追い詰めていく女性が多い事、改めて感じる。男性は仕事に目を向けることで、気分転換できても、育児真っ只中の女性は、24時間子どもと向かい合わなければならない。 ベビーシッター頼もうか?そのほうが君も楽じゃない? 僕の提案に、彼女は首を振る。他人に育児を任せるのは抵抗があるの。 なんだか母親として、ちゃんと子育てが出来ていないみたいに感じてしまうのよ。 そんなことないよ。君は毎日一生懸命、育児に家事に頑張っているじゃない。それに復帰後に対応できる様、勉強も毎日欠かさずしてるじゃないか。見ているこちらが不安になるくらいだよ。 僕も出来る事は手伝うから、あまり無理はしないで。仕事に行く前にノエルと交わした会話。 彼の言葉に頷く私。解かってる、ありがとう・・・玄関で彼を見送りドアが閉まった瞬間、小さくため息をつく。 彼の慰めは嬉しい。それでも世間から切り離されたような、喪失感と育児への不安が心を支配する。 里子に出された私は心のどこかで、自分は愛されていない子だと感じていた。義父母は沢山の愛情で私を包んでくれたにも関わらず、何故長女の私が里子に出されたのか・・・ 実の母は命がけで父からの暴力から、私とシンディを護ってくれたのに。 妹は家に残り、私は里子に出されたのは一体何故。 未だに聞けないその理由。本当の事を知ったところでなんになるんだろう。だけど事実を知らない事が、自身の中に抜く事の出来ない棘となって、いつまでもヒリヒリと痛みを与え続ける。 この事はフランツは知らない。苦悩を話したのはルークだけ。 黙って話を聞いていた彼。話さないのは、君が傷つかないようにする為。本当は実母と義父母の優しさゆえだって事、君は解かっているんだろ。 事実は時にとてつもない残酷な現実を突きつける。今はまだ知るべき時じゃないんだろう。全てを受け入れる事が出来るようになった時に、事実を知ったって遅くはないんだからさ。 知らなくてもいい真実を知った時、今の君は冷静でいられる自信あるのか? 彼は私の顔を見据えて言い切った。首を横に振ると、言葉を続ける。 俺は君の全てを受け入れる覚悟で、プロポーズしたんだぜ。どんなノエルでも、好きになった女性には変わりがないんだから。 少し照れたように、そっぽを向きながらのルークの言葉に涙が浮かぶ。 握りしめられた手に力が込められると、幸せな気分になった・・・今でも忘れる事が出来ない罪深い私。 残酷ね。今でもフランツを裏切っているんだわ、彼の優しさに甘えながらも、亡くなった恋人をいつまでも心に住まわせているなんて。 沢山の苦しみがあるのは、天が与えた私への咎なんでしょう。 ルークに対する想いと、フランツに対する想い、どちらも大切と思うのは罪深い事なのでしょうか・・・ こんなにも苦しい現実から、自身の心を浄化するにはどうしたらいいの。 誰か教えて、どうしたら辛い葛藤を乗り越えられるのかを・・・ 約束と責任へ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2007/11/07 10:32:17 AM
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