きょういく ユースフル! ~ 僕は触媒になりたい ~

2017/10/01(日)10:34

聴覚過敏対策に、音楽の超高音と超低音をカット!(運動会ダンス曲で耳をふさぐ子のために)

特別支援教育(188)

​​9月と言えば、体育祭や運動会。 聴覚過敏の子どもたちにとっては、「かけっこのピストルの音がイヤで泣き出す」「ダンスのBGMがイヤで、逃げ出す」といったことも、起こりやすい行事です。 ピストルを使わずに笛に変える、ということは、わりと当たり前におこなわれていると思いますが、ダンスの曲がイヤ、となった場合、さて、どうしますか? 今回は、「もしかしたら、これで対応できるかもしれない」と考えて実施した取り組みを、書きます。 本当は運動会前にこの記事を書けばよかったのでしょうが・・・。 今からでも、お役にたつ部分があれば、幸いです。 ~ここからは、私がこの9月に実際に実践した取り組みです。~ 運動会ダンスの曲のうち、1曲目は大丈夫だけれど2曲目はとてもいやがる、という聴覚過敏の子がいました。 耳栓などの使用も考えられるのですが、こういった、ある音楽はだめだけれど別の音楽はOKという子の場合、どういう音楽がだめなのかがわかれば、「だめな音楽」自身に音響処理を施して、駄目じゃなくすることが可能かもしれない、と思いました。 具体的には、パソコンで専用ソフトを使って音楽を編集する時に、ハイパスフィルターとか、ローパスフィルターとか、ある周波数以上とか以下とかをカットするなどの処理ができます。そういった処理で、流す音楽自体を処理してしまうことで、曲そのものを変更しなくても、大丈夫な音楽にならないか、と思いつきました。 イヤーマフのようなもので、人の周波数帯以外の周波数を落として聴こえるように工学処理するものは実際にあるようです。(▼参考文献:聴覚過敏者のためのディジタル聴覚プロテクターの開発 - 精密工学会 ​http://sotsuken.jspe.or.jp/2017/pdf/J06.pdf​ ) もし仮に、本来人には聞こえないはずの高周波を聞き取れてしまうが故にその音楽を嫌がっている子がいたとすれば、聴こえない高周波をカットするフィルタリングで、その子もほかの子と同じようにその音楽を普通に聴けることになります。 ​そういうわけで、実際にやってみました。​ 周波数帯域によって聴こえる音量を調整するソフトは、有料・無料を問わず、かなりあります。 パソコンを使わずとも、プレーヤーの再生時の機能で、「ポップス」とか「ロック」とか「重低音ブースト」とか、あらかじめ決められた音響処理を施したうえで再生する機能をもっているものもあります。 ただ、今回は聴感上の変化を思い切ったものにするため、ソフト上で処理します。 僕が普段使っているのは、フリーソフトの「wavy」です。 以下、wavyの画面写真も使いながら、解説していきます。(ソフトのダウンロードは「むし工房」さんの​ホームページ​で無料で行えます。なお、ソフトのバージョンによって、この記事内の画面と全く同じ画面にならない場合があります。ご了承ください。) wavyで音楽ファイル(wav形式)を開くと、下の写真のように、波形が表示されます。 波形内を右クリックすると、「全範囲選択」というのがありますので、全範囲を選択状態にします。 (Ctrl+Aのショートカットキーでも、できます。) もう一度右クリック。今度は、「エフェクト」の中から、「グラフィックEQ(エコライザ)」を選びます。 グラフィックエコライザは、周波数帯域ごとに音量を任意のレベルに上げたり下げたりできます。 今回は、以下のように調整しました。 ・ダンス1曲目よりも音量が大きくならないよう、全体的にバーは上げすぎない。 ・低域と高域を段階的に落としていく処理をしたかったので、以下のような山型に。 以上のように処理することで、前掲の「聴覚過敏者のためのディジタル聴覚プロテクター」のように、人の声を中心とする部分以外の高周波と低周波を低減することに成功しました。 曲としては十分その曲に聞こえるものの、極度にきついと感じる音の成分は除去できたように思います。 この作業にかかる時間はわずか5分程度!(慣れれば1分(笑)) 割と簡単にできます。 同じことで悩まれているケースがあったら、試しにされてみては、と思います。 今回の運動会ダンスのケースでは、私の方で「超高周波と超低周波を落としたバージョン」をCDにして担任の先生とおうちの方にお渡ししました。 周波数をいじっていても、曲としては全く問題なく聞こえますし、元の曲と聞き比べないとわからないレベルなので、クラスや学年全体でダンスを踊るときに、加工済みのバージョンCDを使っても、全く問題なく踊れます。 なので、クラスでダンスの練習をするときや、給食の時間に曲を流してもらうときには、私が加工したバージョンを使用してもらいました。 ご家庭でも何度もCDを流していただき、結果として、加工したバージョンを使ったからかどうかはわかりませんが、その子は音楽を嫌がることが全くなくなり、ダンスも完全に参加できるように。 運動会本番では、とても楽しそうに踊っていました。 聴覚過敏と周波数の関係は、完全に関係あると言い切れるものではありません。 音楽を再生するスピーカーが関係していたりもします。 本人が何を嫌がっているのかは、本当に個々それぞれ、ケースバイケースであるとも聞きます。 今回の対応が必ずしも他の子にも有効かはわかりません。しかし、自分としては有効な対策の1つであると感じますので、一つの仮説として、今後も検証をしていきたいと思っています。 同じような対応をされた方や、これを読んで新たにやってみた方がありましたら、この記事へのコメント等で、情報をお寄せください。お待ちしております。 <補足> 音程と周波数の関係 ・オーケストラは「ラ」の音でチューニングするが、その「ラ」の周波数が大体440Hz(ヘルツ)。 ・1オクターブ上がると、周波数は2倍になる。 ・1オクターブ下がると、周波数は半分になる。 ​​

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