手負い虎の今日、昨日、明日

全3270件 (3270件中 151-200件目)

< 1 2 3 4 5 6 7 8 9 ... 66 >

• 帰国便、タカ、確定。

  ４日にタカでロスへ。ロスで一泊して、５日、日本へ。６日成田着。日本に、ふろに入りに帰る。放置した家は、ゴキブリだらけかな。雨樋が詰まって、家が腐っていることだろう。１週間ぐらい大掃除。食物は、たしか、お米が残っていたはずだ。お米さえあれば、何とかなる。

  2012年06月27日

• 娘の言葉

  ６月２６日娘の言葉。先に描いて発表した３枚の絵のうち、２枚が借金のかたとして消えてから、私は腰が抜けたようになり、始めた４枚の絵がどうしても描けなくなった。素材が慣れた日本のキャンバスではないということもあって、絵の具は乗らず、構図はいいのに、全く絵にならなかった。なんだか気が抜けて描けなくなった…とぼんやりしてつぶやいたら、娘が言った。｢下降状態のときは描かなければいい。今はたくさんスケッチを描きためて、日本にいってから自分の慣れた素材で描けばいい。下降状態は、与えられた休息の時なのだ。奇跡はこれから起きるのだ。｣私はまるでゆうべの夢の続きを見ているような思いで、彼女の言葉を聞いた。そうか、と私は筆を置いた。それから彼女と外に出て、スケッチブックを買ってきた。路上で見かけた珍しいと思った植物を、私は片っ端からスケッチした。ところで私は再びつぶやいた。片っ端から絵をかけと言ったって口座に３０００円しかないのに、どうやって日本で生きていくのだ。娘は舌打ちをしていった。「だって、Ｔさんが１０万円くれると言ったんでしょ？お母さんの身の回りであり得ないことが起きているのに、なぜそれを見ないで、マイナスのことにばかりに目の焦点を当てるのだ。」そうだった。そのことをふと忘れていた。Ｔさんという、私の危急を知って以来、ずっと助け続けてくれた友人が、今回の帰国を知らせたら、当座の資金として１０万円を、入れてくれるとメールをくれたのだった。彼女は２年前がんを患った。同級生を次々送る年齢になっていた友人たちが、彼女の闘病生活を慰めるため、それぞれの仕方で彼女を見舞った。あるものは、ルルドの水（http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AB%E3%83%AB%E3%83%89）を送り、あるものはロザリオ（カトリックの数珠）の祈りを送り、あるものは念仏を唱え、あるものは、病床にいって、共に祈った。あのとき私はつえをついて、電車を乗り継いで静岡県まで行き、彼女の病床を見舞った。何も持っていかなかったし、大した言葉も発言しなかった。杖にすがってやってきた私を見た彼女は、がんで手術をした自分より、あなたのほう倒れそうだ、と笑っていたが、それがいつまでも心に残っていたらしい。私の今回の７１歳の瓦解の物語を見つめながら、倒れそうになると助けてくれた。そのことを娘がいう。「そういう友達が存在するだけで、もう奇跡なのに、お母さんは計算上生きていけないことばかり、悩んでいる。地下に生えた根っこは成長するのだ、これからどんどん、奇跡は起きるのだ。」日ごろはくだらんことばかり言っているヒステリックな娘である。自分が産んで育てた娘だから、あほらしいところばかりが目に付く。そのあほらしい娘がいったたまげるような言葉に、ゆうべ見た夢の意味が重なった。

  2012年06月26日

• 夜中に突然父を見た。

  夜中に突然父を見た。昭和２５年、私が９歳の時に亡くなった父の夢である。いや、｢父｣は｢姿｣としてできたのでなく、母に託した父の最後の言葉をが聞こえてきたのだ。寝る前に、自分の口座に３０００円しか残っていないのを確認したりしたからかもしれない。帰国後、いったいどうやって生きていくのだ、と、苦悶しながら寝たのだ。夜の明ける直前の夢の中に、破れ畳の上のせんべい布団にかばねのように病み衰えた父が、あえぎながら母に伝えてた「大蔵さんを許してやってくれ。｣その言葉だった。大蔵さんとは父の画家仲間の友人で、戦中戦後、困窮に苦しんだ父に、乞いもしないのに、金銭を融通してくれた。ところがあるとき、大蔵さんは、父を酔わせて白紙委任状に実印を押させ、家族の住んでいた土地家屋を詐取した。父は肺結核をわずらっていて、その病骨に鞭打って、詐取された家屋を取り戻すお金を作るため、教会で知り合った進駐軍、アメリカ軍人の肖像画を描きまくって、何とか｢借りた｣ことになってしまった金額を作ったが、大蔵さんに拒否され、土地家屋を取り戻せないまま、死んでいった。あのとき父が｢死に物狂いで｣絵を描いて稼いだことが、たぶん、今の私に重なったのだろう。自分も今死に物狂いで絵を描いていて、苦境を打破しようともがいている。その原因を作ったのが、去年の詐欺だった。自分も父の最後みたいに、餓死するがごとくこと切れるのか、と思ったときに、あの最後の父の発言が脳裏をかすめたのだった。｢大蔵さんを許してくれ。｣手に職を持たない妻と、６人の遺児をおいて、死ぬ間際、土地家屋を搾取した男を許せと、妻に言い残して逝ったのだ。しかしその妻、私の母は、｢尊敬する夫の遺児｣を生かすために、猛然と戦った。裁判を起こして示談に持ち込み、ある教会員から末っ子の私が大学を卒業するころまで返済を続けたほどの借金をして、土地家屋を取り戻した。あの時代の一家は、まさに臥薪嘗胆、思い起こすもぞっとするような苦労をして生き延びた。ところで、｢父の遺児たち｣の記憶の中に、母が｢大蔵さん｣を憎んだという覚えは全くない。母は常に思い出の中でも彼を｢さん付け｣で呼んでいたから、子供たちも彼を｢あの野郎｣などと思っていなかった。母は、｢常識的には理不尽な言葉を言い残して逝った｣夫を８８歳で生涯を終えるまで尊敬し続け、「思い起こせば、終戦前後のあの困窮のとき、大蔵さんが土地財産をああいう形で押さえていてくれなかったら、とうてい持ちこたえることができなかっただろう。あれがお恵みでなくてなんだろう。｣と述懐していた。夢の中で、｢大蔵さんを許してくれ｣という父の言葉が、突然浮き彫りになって浮かんできたとき、その言葉は、紀元３０数年、理不尽の極みで十字架上でこときれた、あるユダヤ人の死ぬ間際の言葉と重なった。｢父よ、この人たちを許してください。彼らは自分のしていることの意味がわからないのです。｣なんだか自分の心に奇跡が起きた。事実は何も変わらないのに、心がふわりと軽くなった。そうか、自分も父のように死ぬのか、破れ畳のせんべい布団の上で、｢許せ｣という言葉を歓喜のうちに唱えながら。

  2012年06月26日

• 

  聖体行列

  １０日ぐらい前かな。散歩に家を出たら、高々とのぼりを掲げた行列が近づいてくるのに出会った。よくよく見たら、昔子供の頃、｢聖体行列｣といっていた教会の行事らしい。教会の行事としては、一番美しく、荘厳で、好きだった。日本では交通渋滞になるとかで、教会のほうが自主規制したらしく、学校も公立中学に移ったため、いつの間にか見かけなくなった。東京四谷のイグナチオ教会中心に、東京中のカトリックの学校が参加して、千代田区中心に荘厳な行列をやった。１年に一度、王たるキリストの主日だった。神輿みたいに、うねりあるかないし、市民のほとんどを動員するわけじゃないから、たいして交通障害にならなかったと思うけれど、神道国家は他の宗教には厳しいらしいとその時思った。だから、エルサルバドルで聖体行列を見たとき、ひどく懐かしかった。規模は小さいし、ものすごくださかったけれど、ふと付いていく気になって、かなり長いこと行列の中にいた。でも、杖つきばあさんの足腰は続かず、最後までは無理だった。前の天蓋の下で、真ん中で男が金綺羅の容器をささげ持っているのが中心。その金綺羅の容器の真ん中に、丸い白いものが見えるのが、ご聖体と呼ばれるカトリックのご本尊。面倒くさいから説明を省く。どうせそんずらもん大事にしているの、馬鹿だと思われるし。

  2012年06月26日

• 

  魚は焼いたのがおいしい

  日曜だけある教会の前でたつ市で、中くらいのタイを３匹買った。マリに任せておくとみんな同じ料理にしてしまうから、炭火起こして焼き魚にしようと思った。魚は刺身にするか焼いたのが一番おいしい。刺身は経験済みで怖いので、パティオで炭を起こした。ここの家にはパティが二つあって、裏にあるのは大きくて整備すれば、使い物になりそうだけど、整備していないから唯ゴミだらけの蚊だらけの空間になっていて、近寄りがたい。焼いたタイはおいしかった。昨日、人を入れて、小さいほうのパティオの天井に蚊よけの網を張り、そこに鶉の放し飼いにしてしまった。鶉は小さいから、急に空間が大きくなって、隅っこによってあまり行動をしない。大きい方は蚊だらけのまま。私がもうすぐ帰国してしまうから、当分、整備されないだろう。

  2012年06月23日

• 

  この植物ヘンテコすぎて

  此の植物珍しいから絵にしたいのだけど、ヘンテコすぎて、構図が決まらない。

  2012年06月23日

• 

  3枚の絵が完成、しかし生がわき

  花とハチドリ１花とハチドリ２野に咲く花

  2012年06月21日

• エルサルバドルの天候も異変続き

  かつて私がこの国に住んでいた8年間、エルサルバドルに雨は少なかった。8月ごろ、雨季と言ってやたらに激しい雨が降り、あとはすべて｢乾季｣で、雨など降ってほしいくらいだった。日本から持っていった傘が役に立たなかったことを覚えている。当時買った傘は、骨組みがしっかりしていて、布も2重になっていた。しかし私の家族は二人とも、日本のへなへなの傘を持ち込んで日常的に使っている。日常的というのは、私がここに来た4月から、現在に至るまで、1日に1度は雨が降り、まるで日本の梅雨時みたいな天候が続いている。こんなこと、あの頃は、なかった。8月以外はいつもカラカラで、長袖などほとんど身につけなかった。しかも、蚊がそれほどいなかった。あの8年間、蚊帳など使ったことがない。其れが今天候はじめじめしていて、蚊だらけ。昔を知っているから、｢変わった｣ことを実感する。なんだか、今年起きることになっている、マヤの予言を思い出す。

  2012年06月20日

• 家族中病気で打つ手がない

  家族中病気で打つ手がない。孫は顔見ただけでも病気とわかる表情なのに、母親の娘は今日学校に出そうとした。私が止めて、家に残したのだけど、咳はする、熱は出す、吐いたり戻したりしながら、寝ようとしない。娘は病を押して学校に行った。今年卒業すれば来年就職が決まっている。そうすれば私を楽にさせられるという。私が楽にならなくたって、早く卒業してほしい。薬学10年かけてやっと最後の年だ。３か国語できるから、それを生かして就職だそうで、10年かけた薬学なんか生かせない。薬学に関しては彼女には彼女の夢がある。その夢のために、今は給料のいいところに就職して下地を作ると言っている。給料のいいところとは、日本政府が雇い主。日本人としての給料をこの国でもらえば、そりゃとんでもなくいいに決まっている。だから熱を押して学校に行った。孫が学校休んで家にいる間、彼の病状は悪化して、とうとう、娘に電話した。早く帰って来い。緊急事態だ。主人にも電話した。この家のこと、私の手に負えない。助けが必要だ。実は、娘は医者を信用せず、息子の病気にも薬の手配は娘が決める。医者の処方した薬を息子にやらない。其れにマリは従うから、私の手が出せない。存在価値が私にはない。だからと言ってみていられない。孫の咳は異常な状態。ほっといたら死んじゃうぞ。娘に電話でかみついた。やっと娘が帰ってきた。彼女も同じ症状。

  2012年06月20日

• 本当は家族ビザがとれるはずなんだけど

  エルサルバドルに来てから、不安定な状況を打破しようと思って、家族ビザを取ろうとしていた。まず、無犯罪証明というものを日本から取り寄せなければならないので、其れを大使館を通して申請したところ、来たのが、数日前。次にやるべきは、この国での無犯罪証明。其れをきょう申請しに行った。ところが私の行くところいつも付きまとう疫病神のせいで、警察署に行ったとたんに、｢その地域だけ｣が停電」。インターネット使えないから、みんなお手上げ。ボーっとして回復まで待った。この私の疫病神、家族中に付きまとっていて、なかなかあきらめない。一緒に行った主人も、かなりいらいらしている。仕事休んで付き合ってくれているので、いくらなんでも異常だと言って、誰彼問わずつかまえて、どのくらいで復旧するんだと、彼らの知ったことでないことを聞きまくる。日本の友人で、ファナティックなカトリック信者、というか、「もと」カトリック信者からメールが来た。全ては神様のお恵みとして受け入れろだと＾＾。感謝感謝と文字がならぶ。勝手に一人で感謝していろ。他人のことは痛くないだろ。たとえそうでも、渦中にある友人に対して、いう言葉じゃないよ。あほんだら。苦労ならオメーより私のほうが経験が多い。いつそれで私が棄教したと言った？勝手なこと言うんじゃない。あほんだら。ひどく腹が立った。まあ、腹が立つというのは生きている証拠。まだまともな感情が残っているな。そのことに感謝でもすべいか。返事は書かなかった。書かないことが返事だと、理解できる感性があるかな。あの馬鹿、わかんないべ。ところで、そのビザ、なかなか取れない。まあいい。帰国している間にとれるかも。絵を3枚描いている。2枚は何とか完成間近。1枚は手こずっている。

  2012年06月18日

• かつて私は

  かつて私はすべてに立ち向かう人間だった。いま私はすべてから逃げ出したい。頬かむりをし、気弱く無責任に、全てを放置し、全てを忘却し、自分を知らない、自分も知らない、そんな世界に逃げ出したい。帰国しようとしている日本は、私を苦しめる世界だということを知っている。そこに帰るのは、義務でもなく、責任感でもなく、問題解決の努力でもない。あのいつも最後に押し寄せてきた、抗いがたい｢波｣による。そう。私は私の考動の源泉を、再び三度、あの｢波｣のせいにしようとしている。逃げたい。唯逃げたい。逃げたい。逃げたい。波が来る、あの波が来る。

  2012年06月18日

• いろいろある

  いろいろある。いろいろある。書いていたらきりがないほどいろいろある。いちいち感じたり、苦しんだり、悩んだり、嘆いたり、そういうことをに明け暮れているうちに、人は逃げ込むように認知症になるのかもしれない。何も意識しないで済む状況になりたい。

  2012年06月18日

• ７月5日に帰国の途に就く。

  さて、帰りの切符は7月5日となっている。フリーのつもりでいたが、切符は日付がそうなっているのに気がついた。じゃあ、帰らなければ。郵便受けを覗いてもらうことを頼んだ友人が、督促状の写しを送ってきたので、急きょ、帰国を思い立った。しかし、問題がある。ここにいれバ、少なくとも食事は毎食できる。日本に行ったら、どうしようと考えた。たぶん、1日1度、コンビニ弁当でも買って食いつなぐかな。家にまだ保存食があったかもしれない。口座はわずかにプラスを保っているけど、カードを使うことの危険を体験したばかり。娘と孫は、熱が上下し、一進一退。その中を娘は、どうしても今年卒業したいからと、試験勉強をしている。就職はほとんど内定しているから、そりゃ、卒業したいだろう。友人が企画してくれた個展。実は、松戸の自宅にこの前の残りがあるけれど、ここで描いたのは3枚だけ。売れるかどうかもわからないから、ここで、コーヒーや、装身具を買って行って、日本でまたガレージセールでもするか。と、死に物狂いで生きる方法を考えています。

  2012年06月18日

• ぎょ！娘も熱…

  次は私の番だぞ。

  2012年06月17日

• 今度は孫がデング熱

  昨日、いろいろな書類上の手続きのため娘と、大使館にいった。かなり時間を食ってしまった。娘はＪＩＣＡのあるメンバーの送別会に誘われていて、その足で送別会に行った後、私は一人で家に帰ったら、孫がテーブルに突っ伏していて、触れても全く目を覚まさない。こういうことあまりない。不思議だなと思った。マリが出てきて、心配して熱を測ったら、平熱をわずかに超えていた程度。だからその時は大して気にしなかった。朝、何か騒々しかった。へやからでてみたら、娘がいて、孫がデング熱にかかっている、という。手をそっと触れてみた。高熱だ。体温計で測ったら、8度を超えている。車はない。マリは今日は休暇の日で、朝の4時に出て行った。そのあと来たのがエルサルおしん。娘が彼女と二人で、息子を抱えて医者に連れて行った。みんな・・・。もう、いうべき言葉を失った。

  2012年06月16日

• ああ、あの学校の卒業生

  6月15日日本は昨日が15日だった。15日とは、年金が支給される日。いまの私にとって、それ以外に意味がない。息をひそめて入金を待っていた。そこに届いたのが、年金機構からのお知らせ。松戸を発つとき、住所を海外に変更せざるを得なかった。主人の留守宅を守っていて、全ての書類上の仕事は私がやっている間は問題なかったが、主人の誕生月が5月で、現状届というものを5月いっぱいに出さなければ年金がストップしてしまう。私は4月に急きょ立たねばならず、だれにもそんなこと頼めない。年金を扱っている社会保険庁に相談したところ、転居届を出せというので、国外転居の旨書類を出してきた。しかし、私は転出届を市役所に提出する時間がなかったため、市役所のほうは松戸市民のままだから介護保険料が取られる。其れは案外悔しい。ところで社会保険庁から来たお知らせには、支給日が遅れると書いてあった。其れを読んだとき、私は慌てふためいた。実は、とんでもないことが起きていた。ライフラインの引き落とし口座である主人の口座がマイナスになっていることを、三菱銀行から知らせられていた。何が何だか分からなかった。私はライフラインの引き落とし口座であることをいつも意識していたから、主人の口座を空にしたことなんかなかった。カードだって、主人の口座のカードなんか持っていない。問い合わせをしたところ、どうも国外からの引き落としらしい。だったら主人本人がやったことだ。あわてていろいろ書類を照らし合わせてみた。それでわかったのが、娘のがん手を受けて、私の友人たちがカンパしてくれた全ての金額を、私は日本を発つ前に自分の口座から娘の名前でエルサルバドルに送金したから、私の口座はからっぽになっていて、どうにも融通が利かなくなっている。ところでエルサルバドルに到着してから判ったことだが、娘が自分で書類を照合させて受け取りに行かない限り、だれが行ってもお金を引き出すことができない。娘は手術中で動けない。支払いに困った主人が3回にわたって、日本の自分の口座から現金を出したらしい。其の3回の引き落としが、一挙に6月11日に決済になって、未払いの通知が来てしまったのだ。動かせるお金は私の口座にもない。頼みの年金が遅れる通知に、蒼白になったのはそのためだった。私はすでに185万円の借金をしている。無職で年金暮らしの71歳。途方に暮れた私は返すためにいろいろな画策をして、すべて失敗した。原因はすべてさかのぼれば去年の債権詐欺によって老後資金をすべて失ったこと。自分の責任、自分の責任。友人の個展の誘いの乗って、絵を描いてはいるが売れる保証はない。大体、帰国して生きていくための資金がない。こんなことで、帰国なんかしていいのか。その時思い出したのが、手元に持っていた日本円6万円だった。おせん別やお見舞いにいただいたものの一部だけど、帰国するときの当座の費用のために私は換金しなかった。私はとうとう、友人たちに目くら滅法メールを書いた。現在手元に6万円の日本円を持っている。主人の口座をマイナスでなく、少なくとも0にするために、誰かできる人、頼む。手元の6万円をかたに、どんな方法でも必ず返すから、主人の口座に6万入れてください。みっともないことを知っていた。非常識もわきまえていた。こんなこと許されないことも、そんなお人よしがいないかもしれないことも知っていた。でも必死の0作戦。応じてくれる善意の天使がいた！ありがたい！と感じたら、どっと疲れが出て、正体もなく眠った。夜中に起きて口座を覗いたら、入金と同時に決済がなされ、きちんとあくまで０に近いプラスの数字に転じていた。良かった！とは思うものの、感情はまるで凍結していた。ところが、それからしばらくして、朝になり、娘が自分のメールを覗いていて、けたたましい声を上げた。何事？娘が、ちょっと間をおいてから言った。ＳちゃんがＳちゃんが！彼女もすごく興奮していた。Ｓちゃんという、彼女が中高をともにした友人がメールをよこして、世界中に散らばっている同級生たちも含めて、みんなに娘の治療費のカンパを呼び掛けた、何か役に立ちたいと思って。。。そこまで聞いたとき、私の涙腺が決壊した。涙燦然と頬を伝い、声をあげて泣き出した。ああ、やっぱり、ああ、やっぱりあの学校！ああ、やっぱりあの学校の卒業生たち！娘が出た学校は、私が大学大学院を過ごした学校の姉妹校だった。札幌にある中高一貫校で寮生活者が多い。そこに一人娘を放り込んだとき、私には思いがあったのだ。かつて、私は自分が出た大学など、評価していなかった。裕福な家庭の子女が多く、苦学をしていた私とは交友関係もぎくしゃくしていた。この馬鹿、といつも私は思っていた。学費値上げのことで、学長相手にかなり抵抗して、停学経験などを経ながら、肩いからして生きていた。学長とはいつも対峙していた。その当の学長が、学費免除で、私を大学院に迎えたときも、私は感謝などしなかった。免除された学費を私は就職第1回目の給料で返そうと思って、大学を訪れたとき、あの学長は言った。そんなことを期待して免除したんじゃない。返せるものがあったら、社会に返せ。私ならいうであろう、「馬鹿野郎」とは言わなかった。あいつは私より上だった。あいつはやっぱり教育者だった。私は尻尾を巻いて引きさがり、はじめて彼女の後姿に一礼をした。内戦の巷から、日本に帰った1年後、エルサルバドルに大震災が起きて、首都が壊滅した。私は友人だとも思っていなかった同級生から、あなたのご主人の国が大変な災害にあっているなら、みんなで助けよう！という声をかけられた。彼女たちは同窓会を動かし、100万円の寄付を集め、私に手渡した。このお金はあなたに託すから、もっとも貧しい、最も救済の必要な人に、あなたが知っている最善の方法でわたしてほしい。私はその時感動し、はじめて自分の母校の教育を受けた人々の育った姿に涙した。その後再びエルサルバドルに大震災が起きたとき、私は油絵を描き始めていた。友人たちは再び終結して、私をそそのかした。絵を描いて売れ！必ず協力者がいるはずだ。半信半疑、私は初めての個展をやった。その時はすでに二科展に関与していたし、私の絵のテーマである「内戦の語り部」絵画も数点展示できた。小中高大学の同級生が集まって見に来てくれ、実にその時、23枚の絵が売れた。いくらなんでも！いくらなんでもこれは私の実力じゃない、そう思った私は、売り上げのすべてをエルサルバドルに寄付した。手数料も、経費も何も取らず。そのお金は日本人協力隊に教育を受け、日本人と結婚して神戸に住む彫刻家の手を通して、エルサルバドルに届き、学校建設の一部になったらしい。私はあのけんか相手の学長の最後の言葉をこうして成就した。娘が今朝読んだメールで、同じ系列の学校で学んだ娘の同級生のカンパの報を知った時、私はこのすべてを思い出した。涙燦然、私の膝は濡れそびれ、嗚咽が窓を揺るがした。

  2012年06月15日

• いま午前2時55分

  部屋の外というか天井というか、何かが動く音がする。認知症の舅がまたおかしな行動を始めたのかと、私は主人を揺り動かし、起こした。ところが、彼は起きて、天井を見つめ、蛇が這っているんだという。その音がものすごい音なので、もし蛇なら、アナコンダじゃないかと思うほど、その体重を感じた。ずわっ、ずわっ、ずしーーんずしーーん。しゅわっしゅわっ。なんだか怖かった。主人が、杖で天井を叩いて、落ちてくるといけないからそこを離れろとか言っている。天井をしたからたたく音に、驚いたのか、見えない生き物は去って行った。

  2012年06月13日

• 久しぶりのガーデニングをやったのに

  あまりにも多くのストレスにさらされていて、楽しみがなかった。そこで、私は中庭の整備をして、植え替えた植物たちに毎朝水をやるのが楽しみだった。それだけが唯一の楽しみみたいに、私は自分がきれいにした庭の土を耕し、酸素を入れ、石ころを取り除き、次に植える備えをした。鶉は時々場所を変え、糞を土に混ぜて、土の手入れもしたのだった。昨日は、娘と一緒に大工道具も買い、ついでに植木ばさみを買ったので、少しずつ私の空間を取り戻し始めていた。ところで今日の朝、ある友人からメールが来ていた。すごく宗教的な友人で、よくわけのわからないことを口走る癖がある人なのだが、すごく親切で、娘の治療費カンパにも加わってくれた。その人のメールが久しぶりに来たので、そうだそうだと思い、昨日買った植木ばさみを取り出して、表の庭木の一部をきり、木の枝で質素な十字架を作った。娘もいちおう信者だし、孫もカトリックの学校に入っているが、中南米の教会の現状を見て、彼女は教会から離れている。だからそれらしいものが家の中に何もない。なくたっていいけれど、例の友人のメールを読んだら、ちょっと十字架がほしくなった。縦と横に、枝をくんだ、どうでもいい貧しい十字架を自分の机の前につるしてから、今日はネット回線の障害で、まるでネットがつながらなかったので、そのままふらりと眠り込んでしまった。しばらくして目が覚めたとき、私は中庭で木の枝細工をしたまま、掃除していなかったのを思い出して、行ってみて、驚いた。私が整備した庭の植物が、醜く切り落とされていた。まるで、庭を美しく飾ろうという感覚のない人間が、置いてあったハサミを使って試し切りしたとしか思えない、乱雑な切り口だった。あっけにとられ、それから怒りが込み上げてきた。この家に、私は居場所がない。日中、ほとんどネットの前かベッドの上で過ごさざるを得ない、用のない人間が、わずかに見つけた場所だった。この葉っぱは汚いから切ろう、この葉っぱは残そうと考えて整備したものを、何の考えもなくなんでこんなにみっともなく切ってしまったのだ。私が見つけたささやかな空間をだれが、こんな風に、踏みにじるのだ。ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー私には、こういうことがショックだということ、それほど今の私の神経は弱くなっているということ、それを説明することもわからせることもできない。たかが、8歳の孫のいたずらに、こんなに心が傷つき、踏みにじられたと感じるほどに、私は今、弱っている。ある者にとって、大切なものは、別のものにとってはどうでもいいものだ。価値観とは、そういうものだ。そこに孫が大事にしていたプラスチックの飛行機が転がっていたのを、私は拾って、やにわに床にたたきつけた。庭の植物がお前にとって切り刻んでもいいものなら、おまえのこの飛行機のおもちゃは、私にとってはごみなのだ。これはお前が私にしたことと同じことなのだ！と、叫びながら。

  2012年06月13日

• 湯船に入りたい

  日本に帰るのなら、数か月湯船がない生活でもなんとか我慢できる。死ぬまでここにいなければならないなら、湯船がない生活は、ためたストレスを絶対に解消できないまま一生を終えるに等しい。湯船に入るためにだけでも日本に帰りたい。

  2012年06月10日

• 日本からの郵便物

  娘がこの国に来てからの8年間、私は絶やさず連絡を取り、日本の懐かしい味や文化を小包にして送り続けてきたが、郵便配達は別に日本と同じように問題がなかった。そのつもりでいたのに、なんだかおかしくなっている。初めの小包に異常はなかった。ところがそのあと、税関から日本から荷物が届いたという通知が来て、なんだか意味がわからないけれど、主人が取りにいったところ、役人が難癖付けて渡してくれない。荷物の内容が怪しいから化学調査に1月かかると言われたという。それは私の同級生の一人が娘の健康を心配して送ってくれたアロエジュースとプロテインだった。普通に届けられた1通めにも同じものが入っていて、別に問題がなかったのに、今回引っ掛かった。主人が抗議してかなりやりあったらしく、疲労困憊して帰ってきて、その時口を利かなかった。どんなものだって、容器を開けて1月も留め置かれたら、使用不可能になる。ましてこんな細菌のうようよする国で、無知蒙昧な役人が、ただもの珍しいから開けるだけの、そういう「化学調査」なるものをされたら、たまったものではない。以後2通の日本からの通知が来ていて、いずれも税関留め置き扱いになっている。通知を配達する郵便配達夫に聞いてみたら、去年の12月からの制度の変更でこうなったのだとか。それも係官の気まぐれで、今まで通り配達するものと、留め置きになるものが決まるので、自分たちには、まるでわからないという。そういえば去年のあの騒動で、私は去年荷物を送らなかったから知らないのだ。おそらく、私宛の荷物は、「要注意」扱いになってしまったのだろう。友人たちの思いやりが、無知蒙昧のサルのせいで、手元に届かない。もう私には、昔みたいに不正に対決してやりあう気力が残っていない。

  2012年06月09日

• なつかしいグアカチーョ

  飼い始めた鶉は小さくて、そんなに大食とは思えないのに、餌がよくなくなる。おかしいなあと思っていたら、マリがスズメが食べに入るんだという。中庭は、防犯用に上から下までがっちり遮断されているから、別の鳥の侵入を見たことがなかった。でも毎朝、姿の見えない小鳥の声が、きれいな音色で歌ったいるのを聞いていた。あれはスズメなんかじゃない。昨日中庭の土を耕して、すっかりきれいにしたのだけど、自分が整備したところをときどき見に行っていた。そうしたら天井の桟に何か動くものが見えた。脅かさないように身動きしないで、よく見た。白い顔に斜めに筋の通った尾を立てて良く動く鳥、グアカチーョだ！色はスズメに似ている。でもあの尾は確かに、昔庭によく来ていて、写生もしたし写真にも撮った懐かしい鳥だった。たぶん、日本名、ミソサザイ。

  2012年06月09日

• そうであったらよかったこと

  こちらの国と、あちらの国そういう区別が明確だったころ、電動自転車を持ってきたかったな。ノートパソコンの自分用のがあればいいと考えていた。あちらの国の文化をこちらの国に持ってきたかったな。家畜のえさ入れ見たいな食器を眺め、やっぱりあの国にあこがれるそうだ。昨日、畳1畳ほどの中庭で、ちょっと土をいじってみた。中に生き物がいたよ。あの国で見たのと同じような虫けらが。

  2012年06月09日

• はた

  誰が何を言おうと、私はそういう人生を、「選んだ」覚えがない。人生は過酷で、だから「はた」から見ると、面白いらしい。「はた」とはなんだ？深い深い溝の向こうの、うようよする生き物の、まぼろしのようなかげろうのようなさざめく笑いを送ってよこす、またはそう感じさせるような、そんな世界の中にいる、私とは無関係な「はた」の生き物たち、「はた」

  2012年06月09日

• 日本という国が梅雨に入ったと便りがあった

  島流しにあったみたいな遠い国から、そんなニュースを目にした。日本という国が太平洋の向こうにあって、梅雨に入ったんだそうだ。あの国で私は71年前に生まれたんだけど、もうあれから数世紀たったみたいな気がする。何も決意はできていないけれど、うすどろどろの未練が体中にまつわりついているのを知っているけど、私は細菌と蚊の大群の中で、鉛汚染の水道水を飲みながら、ここに骨を埋めるらしい。誰が何を言おうと、私はそういう人生を、「選んだ」覚えがない。

  2012年06月09日

• 

  市場で鶉を

  教会の前の公園がにぎわっていた。日曜だけ市が立つらしい。帰ってから、娘に行ったら、面白そうだからと一緒に見に戻った。ところで、生きた鶉と、肉にした鶉と、鶉の卵が売られている店で、卵を買いたかったのに、娘は生きた鶉を買った。番（つがい）だそうだけど、怪しいもんだ。でも生き物を飼うのはうれしい。生体は小型の鶏と同じで、食物もいっしょ。子供の時飼っていたから知っている。２羽持ち帰って、とりあえず籠に入れた。砂浴びをするから、土のあるところに人間が残した食物の残りと水をやったら、さっそく砂浴びしていた。かわいい。

  2012年06月04日

• 

  教会に行ったけれど

  教会に行ったけれど、時間が早すぎて、ミサにあずからなかった。ところが私の目を引いたのが、教会の前の公園に生えていた、不思議な寄生植物。近くで花だけ写した。

  2012年06月04日

• 

  山路きて何やら怪しお化け草

  中米は日本で温室栽培している蘭が多い。でもこれなんだろう。

  2012年06月04日

• 火山公園に行った。

  主人の甥と姪が、誘ってくれたので、火山公園に行ってきた。山の花は、なかなかいい。小鳥を題材に絵を描きたかったが、昔慣れ親しんだ小鳥は姿を見せない。だから山の花でも描こうと思って、写真を撮りまくったのだが、縮専のインストールに失敗して、小さくできない。ここに載せたかったのに。主人と娘のパソコンのうち、主人のものがほとんど壊れた状態で、1台しか使えない。彼らはスペイン語しか入力できない小さなパソコンを持っているから、私は東芝のこれを占拠している。ところが、うまく使えない。撮った写真をパソコン画面で見ながら、今日絵を描き始めた。コピー機も使えないから、パソコンに出して、眺める。山の花。といっても、エルサルバドルの山の花だから、山路きて、何やら床しというような楚々とした花ではない。ちと化け物っぽい花。3点一度の描き始めた。でも油絵のにおいは、私の心を落ち着かせる。やっと自分の世界に戻ってきた。

  2012年06月02日

• 一人で餓死してもいいから日本に帰りたい

  自分が主体になって生きられるなら、自分が自分の時間割で行動し、自分の食事を時間通りに食べ、体操をしたり、自転車散歩をしたりする生活にもう一度戻りたい。文字通り無一文だから、かなりやせるだろう。でももう、餓死してもいいから松戸の家に戻りたい。近所の農家の野菜を食べ、100円ショップで生き抜くことは別にすごく目新しきことではない。あの家なら大工道具もあるし、外回りに植えた花を見まわったりして健康的に生きられる。お金があったら、この家族を鉛汚染地帯から引っ張り出して住む地域を買えるのが理想だった。でもそれは叶わない。かなわないなら、私はここで食客になって何もしないで過ごすより、一人で誰の手も煩わせず生きていきたい。生きて死にたい。借金があるから、年金は使えない。蓄えがないのに年金も使えないとなると、すごいことだろうと思って、ここにとどまる考えも持っていた。でも日干しになってもいいから、一人になりたい。一人で自分の行動を自分で決めたい。生きるも死ぬも、自分が主体でありたい。ああ・・

  2012年05月31日

• 102歳の舅の話

  生きているのはつらいだろう、と舅の生活を見ながら思う。夜中に起きて、エンマ、エンマ、と15年前に他界した姑の名を呼び、うつろな目をして徘徊する。杖に頼り、あたりの壁につかまりながら、よたよたと歩く。いつか、姿が見えないので、探したら、裏の土間にひっくり返っていた。誰かを探していたんだろうけれど、私が昼寝をしている間、家人が誰もいなくなっていた。腰痛病みの私の手に負えない重さなんだけど、何とか抱き起して杖を渡し、歩くのを手伝った。彼がいつも眠っているロッキングチェアまで連れて行ったら、彼、普通の表情に戻って、ありがとうとあいさつした。なんだか知らないけれど、私のことは認識しているみたいだ。私を見ると、時々ふっと昔の表情が戻る。私の主人である、彼の息子は、5人の息子のうち、大のお気に入りだった。そのお気に入りの息子が青春時代、女難によって苦しんだ。舅が苦悩し何とか助けようとしていたときに、登場してきたのが太平洋の向こうの国のおなご、私だった。舅にとって、私は天の使いだったらしい。その私が消えたのを、彼はよほど悲しんだらしい。おまえは嫁をどこにやったのだと、毎日毎日言っていたそうだ。今その私がここにいる。舅は昔の表情に戻って、時々私に「まともな」挨拶をする。誰にも見せない、「まともな」表情を見せる。でも、だれも見えなくなると、彼は夢うつつにさまよい始め、エンマ、エンマと大声で叫ぶ。エンマ母さんは楽園にいますよ、と私は舅に話しかける。舅は、じっと私を見、それから楽園の彼方に目がさまよう。エンマ母さん、そろそろ迎えに来てあげたらいいのに。のどに痰を絡ませて、いつも苦しんでいる舅を見て、そう思う。

  2012年05月29日

• 油絵の道具を探した

  4月娘の腎臓がんの知らせを受けてから、３日後の飛行便を捕まえ、出発の前日に来たスーツケースに、とりあえず夏物の衣類と使用中の薬やサプリメントを入れたとき、実は、油絵の道具を一式入れたのだけど、あとでスーツケースの重量を測ったら、オーバーしていたため、油絵の道具は使い慣れた筆だけにしてみんなおいてきた。エルサルバドルは、中米一の工業国だそうで、内戦の後ほとんどアメリカの支配下に入ってから、ドル経済になって物価も跳ね上がり、食べ物まで、アメリカ型ジャンクフードにとってかわった。エスニックと日本じゃあ言っているかもしれない衣類も姿を消し、もう、どうしようもない衣類ばかりで、アメリカ文明なんかに鼻っから興味のない私には、居心地が悪い。油絵の道具はこっちで調達できると思っていたけれど、「中米一の工業国」という意味は、絵を描くなどという軟弱で頭の悪そうな趣味は評価されないということで、近所にある美術専門店でも、ほとんどほしいものがなかった。ところで、絵を描くということは、ものすごく静寂の中で、身動きせずにできるものだから、それだけ、蚊の集中攻撃を受けやすい。そういうことは想定外だった私は、エルサルバドル→常夏の国→衣類は半そで→旅行で移動するときだけ、ジャンバーでもあればよし、てな考えできた。ところがじっとしていることが多い私は、有名なデング熱を運んでくる蚊の大群に襲われ、毎日生きた心地がない。仕方なく、歩いていける場所にある衣類品屋を数件覗いたが、女性のものは裸に糸を巻きつけているようなものしかなくて、冗談じゃない。手ごろな長袖のシャツがないか探したが、長袖なんか男物のワイシャツしかない。たぶん作るっきゃない。昔は洋裁ができた。この国で暮らした8年間、自分のものだけでなく、娘の衣類、帽子から靴まで自作だった。ところが、日本に帰国してから、娘のために使っていた古い足ミシンを、ある時主人が親切にコンピューターミシンに買い替えてくれたため、全くミシンが使えなくなり、以後、20年くらい洋裁をしていない。昔型紙で原型を作り、そこから応用であらゆる衣類の型紙を作ることを、公立中学の家庭科で、高校の時は数学3の代わりに取った被服の授業で習ったから、本を見なくても自分のブラウスくらいできた。ところが20年も、裁縫をせずに、安売りのＴシャツで生きてきた私は、もうすっかり裁縫を忘れた。どうしよう、長袖がほしい。主人が自分の、これも日本で仕入れたトレーナーを貸してくれたが、熱い。水道水に鉛を垂れ流す工業国の美的センスの何もない、蚊と細菌に満ちた国で、私はあの、繊細な文化をいとおしむ。

  2012年05月25日

• 油絵のにおい

  やっと、油絵のにおいを嗅いだ。4枚同時に下塗り。エルサルにいるんだから、エルサルの自然が題材と思っているけれど、ちょっと別のものにも目が行っている。しかし蚊の大群と戦いながらの作業は、容易ではない。昼、あまりに眠かったので、例の蚊帳の中で寝たのだけど、どこからか蚊が一匹侵入して、かなり刺されて気がついた。こちらの蚊は、デングを運んできてくれるから怖い。昔ここに暮した8年間、あらゆる伝染病にかかったけれど、治ったら案外元気に暮らしていた。今は精神的にも、経済的にも、立ち直る見込みがないので、デングにやられたら、ひとたまりもないだろうなあ。なんて、絵を描きながら考えた。

  2012年05月25日

• 初めての重労働

  台所の食器棚のドアに、煽り止めをつけようと思った。ところが錐がない。一応置いてある大工道具の箱を覗いた。その道具箱は、絶対に道具の使い方を知っている人の持ちモノとは思えない状態なので、勝手に整理しだした。整理には分類の箱がほしいと思って、今度は箱を探し始めた。それで乱雑にいろいろな容器が入れてある台所の物置を開けてみた。扉を開けたら、度々っと出てくる仕組みなっている物置で、ものと同時に、ごきぶりだの、もっと小さな米つきバッタに似たやつだのが、ぞろぞろぞろぞろ列を作って出てきた。ぎょぎょ！そこには、料理に使ういろいろな容器や、食材だって詰め込んである。むらむらと腹が立ったとたんに、私は椅子を持ち出して、その食器棚の最上段に届くところまで登った。なかに入っているすべてのものを放り出して、調べたら、そこは虫の巣窟だった。ゴキブリをペットとして飼っているのか？がみがみスペイン語で怒鳴った。台所の食器棚がこんな状態で、どうやって健康を保てるんだ！全てのものを出してから、殺虫剤をかけ、しばらく扉を閉めて待った。それからまた椅子にのぼり、最上段の上に手をかけたら、そこは５ミリばかり、真っ黒な泥が敷き詰められていた。洗剤とたわしと、雑巾を使って、拭き取ったが、白くなるまで雑巾を３枚４，５回洗いながら使った。３段にわたってゴキブリが喜びそうな環境で、衛星感覚の全くない、家政婦が８年間ゴキブリを養っていたらしい。それにしても家政婦の雇い主は、何してんだ！たてたむかっ腹が治らなかった。全ての泥をこそぎ取ってからもぅ一度殺虫剤をまき、ドアを閉めて、中から出したすべての容器を洗うように、家政婦に指示した。不要なもの、半端なものは捨てるように、虫の食料になりそうなものは密閉した箱に入れるように、指示するだけでなく、自分でもどんどん片づけた。それで午前中ずっと働きづめ。ふと、持病の腰痛が鈍く湧き出すように感じられた。この国に来て、１ヶ月半、日課だった運動をしなくなってから始めて、やった重労働で、自分の持病に気がついた。で、あとの半日、伸びていた。

  2012年05月22日

• 絵を売ります。

  ミクシフォトにある絵を売ります。価格は交渉に応じます。娘の治療費、療養費稼ぎたい。オーダーがあれば帰国して対応します。手負い虎gulliver344rme@gmail.com

  2012年05月19日

• シイタケと水虫

  エルサルバドルで日本の干しシイタケが手に入る。娘が菜食主義者になってから、料理のおはちが私に回ってきて、日本の味にこだわる私は、良くこのシイタケを使う。ところで、シイタケは、日本の食材だと思うけれど、スペイン語では「オンゴ」といい、「菌」をあらわす言葉と同じだ。シイタケは「菌」には違いない。シメジもマツタケも「菌」である。でも有り難いことに、日本語では食材となった品物を生物学的分類名で呼ぶ習慣がない。スペイン語の「オンゴ」は菌だから、菌としては同格の水虫のことも「オンゴ」という。「オンゴ」と言われてシイタケをたべるのと、「シイタケ」という呼び名で同じものをたべるのとでは、「うまさ」そのものにも格段の違いがある。水虫は同じ菌でも食欲をそそらないからね。ちょうど、現在「トイレ」と呼ばれている場所を、その昔、厠と呼び、雪隠と呼び、便所（便は本来、糞の意味はなく、用事を足すという意味）と呼び、手水と呼び、ご不浄と呼び、お手洗いと呼び、決して「脱糞尿場」とは呼ばなかった、それと似て、日本語の床しさを深く思う。この国では、ププサとよばれるすごく一般的なエルサルバドルの料理がある。グアテマラではまったく同じものを「ドブラード」と呼ぶ。グアテマラのレストランで、エルサル人が「ププサ」と言って注文すると、ウェイトレスの女の子が恥じらいながら、「あの～、ドブラードですね」と聞きなおす。不審に思って「ププサ」とはそもそも何ぞやと、聞いたことがあるんだけど、ぎょ！で、実は、今日娘は半日実験の日で、昼も弁当がいるから、おにぎりでも作ってくれというので、さしあたって、ある食材で、手巻きずしを作ってみた。干瓢も梅干しもないから、オンゴを大量に使った。今誰もいないから、暇。足が痒い。靴下脱いでよくよく見たら、足の裏にシイタケが生えていた。

  2012年05月15日

• 蚊

  この国は細菌大国で、蚊もすごい活躍をする。暑いのに長そで長ズボンで過ごしているのだけど、蚊は容赦なく長そで長ズボンのうえから刺してくる。娘がベッドの上に蚊帳を作ってくれた。蚊帳のおかげでちょうど二畳ぐらいの部屋ができ、ノートパソコンを持ち込んでベッドの上に胡坐をかいて、打ち込んでいる。足腰悪いから、ちょっとこの姿勢は苦しいが、蚊の大群からは逃げることができた。今日はまた主人が出張で、２台のベッドを一人で、部屋として使うことができる。ゆうべはすごかった。日本時間の日中に合わせて私がパソコンを操っていたら、舅が起きてきて、とうとう一晩中舅と付き合った。彼の世界は過去の世界。これ書いたのいつだろう。今は１２日土曜日、朝８時近い。とうとう昨日から、私はばてた。恐れていた細菌感染。下痢で体力消耗。でも、娘が作った蚊帳の中で、少なくとも蚊に刺されず、伸びている。でも夜中に方向音痴になり出口を探しているうちにハエが侵入したらしい。とにかく生き物はみんな菌を持っている。私も＾＾。

  2012年05月11日

• われようてやすまんとほっす、きみしばらくされ

  に～わの畑でポチがなくうう正直じいさん掘ったらばあああ大判小判がざっくざっくざっくざく意地悪じいさんポチ借りてえええ裏の畑を掘ったらばああああ鉛に水銀がド～ロド～～ロど～ろどどろおおおおおおおあほれ、すいすいすいだららった、すらすらすいのすい～～すいすいすうだららった、すらすらすいのすいいいいいいいい　と

  2012年05月10日

• 私の手に負えることなんか何もないじゃん

  基準値の２８倍の鉛入りの水を２年間飲み続けた娘と孫は、まず腎臓がんが発症し、肝炎が発症し、腎臓のほうは結石も発見され、いろんな治療を毎日している。住んでいる地域は、工場が林立する地帯だそうで、工場廃水が垂れ流しらしい。対策として治療よりも何よりも、まず引っ越せと人はいう。いくら娘がいてほしいと言ったって、私がここにきて、できることなんかありゃしない。日本に帰ってもできることなんかない。巫女さんに頼んで、いかがわしい祈祷でもしてもらうべいか。なんて、考えている。キリスト教はそういうの向いていないから、やっぱ、神道だね。そういうの得意だし。花咲じじいが犬貸してくれないかな。裏の畑掘らせてみたい。

  2012年05月10日

• 娘、再手術を拒否した

  この家のなか、４人が病人になった。娘、舅、孫、そして家政婦。この、歩けば普通に足の裏でゴキブリがつぶれ、数分タオルを放置しておくと蠅がびっしりたかる、何がどこに置いてあるかわからないこの家で、いきなり、すべてを任されても、私は超人じゃない。台所のものはすべて半端で使い物になるものはなく、切れる包丁もなく、焦げ付かないようにコーティングされた鍋もフライパンもすべてがりがりはがされ、コンロは私の胸の高さでしかも手前のコンロは壊れていて、奥のコンロしかつかない。冷蔵庫には１０年前くらいの古い物がぎっしり詰め込まれていて、この中で５人のメンバーのうちの４人が病気になったからって、冷笑する以外にない。私は８年間、内戦のさなかで６回も家を変えて暮らしたが、ただの一度もこんな不潔で不便な家に住んだことがない。ところで、昨日、娘が息子を連れて、鉛汚染の検査にいった。帰った時娘の顔を見た。結果がわかる顔だった。娘も孫も、肝臓に障害があり、娘はもしかしたら膀胱を人工膀胱に替える手術が必要だと言われたらしい。彼女はそれを拒否した。自分のやり方で癌と戦うという。自分のやり方は食事療法。それは私の腕にかかっているという。このゴキブリの巣で、そんな責任を持たされたって、果たせない。だいたい、自分の知っている食材がない。代替品もない。コンロもなければ鍋もない。水はすべて鉛汚染されていて、私には買い物さえ主導権がない。

  2012年05月08日

• 怨念の凝縮を見た

  5月６日ゆうべは舅の大騒ぎのため眠れなかった。朝は、私が驚くほど、彼は正気で、昔私が世話になったころの表情に戻って、私を私と認識して挨拶もし、私が作った朝食を食べてありがとうと言ってくれたので、まるで、今までの態度は、他の家族にはわがまま言って演技していたのではないかと思うほどだった。主人は金曜日から出張で、日曜日まで帰らない。緊急事態に必要なエクストラのお金稼ごうとして、週末だけ契約したんだけど、家族が集う週末が留守なので、舅は不安らしい。それでも初めは、主人がいないから、自分がなんとかせねばならぬという意識があるらしく、よたよたものを伝って歩きながら、ドアのカギが閉まっていることをたしかめたりしていた。夜中、１時頃、激しい物音に、私は起きた。なんだか、杖で、そこいらをぶったたいているようだ。大声で叫ぶ声も聞こえる。すわっと起きて、ドアを開けたら、一時的に来てくれているエルサルおシンが舅の世話をしていた。こりゃ大変だと思った。いくら一時やといのお手伝いでも、大暴れする舅を夜中の１時まで面倒みさせるのは忍びない。もういいから寝なさいと言おうとして舅の様子を見たら、見たこともないただならぬ表情。おばあさんが死んだお婆さんが死んだ、みんなを招集しろと言い続けているのだそうだ。もう５０年前に死んだ人のことだけど、言っているのはそれだけでもない。女はどこだ女はどこだ、いないのか、逃げたのか、と言っている。どうも私のことらしい。エルサルおシンが私を招くので、部屋に入った。ほら、いるでしょ、と言って私をさす。舅はかつて、私を助けた。彼の協力がなかったら、私の結婚生活は成り立たなかったほどに、彼は私の保護者だった。私の仕事に対して最大の評価をしてくれ、電化製品や家具が壊れると、直せるのは私しかいないからといって、私が来るのを待っていた。その私の姿が見えなくなったことに、たぶん一番心を痛めたのは、この舅だったのだろう。肝心の夫は何も心なんか痛めていなかった。七夕夫婦を続けることに、まるで不具合を感じていなかった。その舅が、朝見せた昔ながらの優しい表情と、夜中杖を振り回しながら叫ぶ魔に憑かれたようなすさまじい表情とは、同一人物には、見えなかったが、表裏一体のような気もした。彼は時々過去の世界に戻っていた。その過去を私は知らないが、魔に憑かれた時代があったのだろう。自分も今、まさに魔に憑かれて生きている。ここ数年間の、孤独だったが充実した日々を思い起こし、いきなりドン底に突き落とされてあえぐ今を重ね合わせると、なんだか舅の大暴れが理解できる。私だって、今の闇の中を杖振り回して叩きつぶしたい。胸ひっ掻きむしって、あらゆる人間を呪いたい。あの表情、それはまさに闇を呪い、自分の「今」をたたきつぶそうとしている執念の、切羽詰まった執念の、怨念の凝縮だ。

  2012年05月08日

• 変な性教育

  5月3日日本は4日だろうか。時の感覚がくるっていて、わからない。自分のできることを考えた結果、やっぱり一度とった杵柄にすることにした。孫が3人の国際結婚家庭の子供と一緒に、日本語教室で日本語を勉強している。日本大使館関係者がやるのだけど、それが人数が減ったということで、実は、この家で毎土曜日開催している。その授業風景を見ていて、気になった。孫は、母親が日本人だから、かなり有利だが、母親が現地人の子供は、日頃日本語に接していない。だから繰り返して言葉を話すことが必要だけど、どうも聞いていて説明ばかりが多すぎるようだ。余計な口出しはできないから、何も言わないけれど、カードを作ってあげようかと思った。出来合いのカードは、どうも、言葉が日常語からみると不適切だ。もっと日常語の練習をさせたらいい。５月５日今日は日本では子供の日。端午の節句。私の年齢では「子供の日」より「端午の節句」のほうがしっくり入る。数年前私は確か、鯉のぼりを孫のために送ったはずだ、あれを飾ろうを娘に言ったが、彼女、学校の試験勉強に忙しくて、それどころじゃない表情。とにかく送ったものを出せ、私が撮りつけるから、といって、出させた。処がそれを見て驚いた。丸で組み立てたことも、出したこともないみたいだ。私は自分が孫のために送った節句の飾りを娘が評価しなかったことにショックだった。私が娘をこの国で育てていたころ、私は実家とうまくいかず、雛祭りのお雛様のかわりに、私は日本人形を自分で作った。材料を集めるのが大変だったが、当時あった中国人の店で帯の生地になりそうな布地を見つけ、赤い布を買って刺繍をして、体裁を整えた。あの頃私は日本文化にこだわった。雛人形が実家から送られてきたら、どんなに私なら喜んだことだろう。そう思ったら娘が憎たらしくなった。娘は自分の息子の成績を気にするあまり、毎日怒鳴り散らして勉強ばかりに追い立てている。本人が受け入れ態勢でもない、学校から帰ったら休みもとらせず、食後だって休みも与えず、すべての時間をただがみがみおこって勉強とやらをさせている。大人が押しつける勉強に意味がない、といくら私が言っても聞こえない。息子はおびえて意味も考える暇なく、与えられた文章を書きうつしたりしている。おんの白くないから進まない、進まないから娘が逆上する。そもそも教育法が間違っている。男のこの祭りなんだ。男の子の成長を願う祭りなんだ、下らん勉強よりもっと大切なんだ。怒り心頭に達して私は鯉のぼりを組み立てた。今日は日本語補習校のクラスがこの家で午後ある。子供が２人来るから孫入れて３人分、小さなプレゼントも用意した。娘はそれを見て怪訝な表情でいる。変なやつ。少しは気づかえ。ばか。鯉のぼりを組み立てていて部品がないのに気がついた。それを孫が、どこかで見たというからその「どこか」を探したら、見つかった。できた鯉のぼりを立てるのは、重心の関係で腰痛持ちのばあさんにはきつい。外なんかに出したら、一瞬のうちにとられてしまう国だから、中庭のに置いてある壊れたワゴンにくくりつけて、やっと立てた。初聖体のための勉強とやらから帰ってきた孫が、やっと取りつけられた鯉のぼりを見た喜んだ。孫は補習校で、鯉のぼりのことを知っていた。今まで自分のうちにそれがあることを知らなかったから、うれしかったらしい。ところで、孫のいっている学校は、シスターが経営しているカトリックの学校なんだけど、とんでもなくあほらしい行事があるため、土曜日曜駆り出され、月曜が休みなんだそうだ。その行事、「美人コンテストだぞ」。小学校で、しかも修道院経営の学校で、「美人コンテスト」が大々的にあって、それで土曜日曜返上で両親が駆り出され、小学生の女の子の「美」を競うのだそうだ。ばかじゃねーの？この修道院。いくら修道院がストレスの発生源の代表だからって小学生の女の子に、美人を競わせることないだろ？あきれて言う言葉も出ない。だいたい美人コンテストというのは、男にとっての美人だからね。それを小学生に強要するというなら、それはたぶん性教育の一環なんだろう。気持ち悪いね～～。

  2012年05月05日

• こんな切迫した状況にも関わらず

  こんな切迫した状況にも関わらず、私はここでただ惰眠をむさぼって生きている。こんな事態を、私はかつて自分に許したことはない。にもかかわらず、私は自分が取るべき何物をも、ここでは見出すことができない。心配し、やきもきし、おろおろし、処がいつの間に、私はベッドの上で伸びていて、ときにはパソコンの前で、とんでもなく無駄な時を過ごしている。買い物や掃除や炊事は、田舎に残した20人家族を一人で120ドルそこそこの給料で養い引き受けている、家政婦の仕事で、それを取り上げるのは、自分の良心が許さない。だから、どうすりゃいいか、わからない。

  2012年05月03日

• 目に見えないからわからない

  基準値の28倍の鉛が自宅の水道水から検出されたといったって、目に見えないからわからない。水道水は、浄水器のフィルターを通った水だから、浄水器が作動しなかったことになる。私はその水道水を1月飲んだが、家族は2年飲んでいた。おまけに娘は、水の摂取にこだわり、1日2リットルくらい飲んでいたらしい。自分は健康に気を使い、計画を立てて生きてきた。それなのに腎臓がんになった。医者は遺伝も関係あるというけれど、自分の家族に一人もそういうのがいない。だったら他に原因があるはずだと、彼女は考え追求した結果鉛の検出だった。彼女は水俣病とか、さまざまの汚染が原因の社会を騒然とさせた病気を想像し、愕然としたらしい。息子にもそれを飲ませてしまった。健康に気を使うあまり、息子にも自分と同じ健康法を強要した。そのことを彼女は心配した。今うちでは、水を買って飲んでいる。私が内戦時代に経験した水の問題は、まだ生きている。あのときは、汚染していようが汚染していなかろうが、生命線の水道の水が出なかった。夜中でも水道に水の繰る音が聞こえると、がばと跳ね起きて、あらゆる容器に水をためた。あの水は「大切な」水だった。汚染しようが、糸みみずが出てこようが、生命線だった。その生命線の水が、鉛汚染とは、見えないからわからない。私は71まで生きたからいい。その私を見て、娘が言う。「自分は少なくとも60くらいまではいきたかった。いいなあ、71まで生きられて！」

  2012年05月03日

• 時はこうして過ぎていくらしい

  癌の発覚以来、娘は何とかして前向きでいようと、「努力」していた。がんの発症した「理由」を突き止め、自宅の水道の水の鉛汚染を発見し、癌が自分を鉛から守ってくれた、などと言っていた。彼女は癌にさえ感謝していた。少なくともそういう状況を、前向きの方向に自分に言い聞かせながら生きてきた。でも彼女の心の中は、不安でいっぱいだということは、時々突発的に見せる苛立ちによる逆上から、私にはわかった。逆上は、幼い息子に向けられた。間に飛び込んでいって、彼女を犯罪から守り、息子を危険から救うため、渾身の力を込めて私は彼女を取り押さえた。再手術の可能性が浮上してきてからは、彼女は目に見えて、弱ってきた。自分の研究から、動物性のものを接種すると、癌を増殖させると言い始め、体内に入った鉛のためには、熱い物は摂取できないといい、極端に食物を制限した。今、体を変えてやれない「他人」である私は、破たんしそうな経済を、どのように立て直すか、ということしか頭にない。たぶん、こういうときに人は犯罪にさえ走るのだろう。

  2012年05月03日

• 餃子と肉まん

  今日は世界的にメーデーらしい。学校休みだし、仕事も休み。みんな家にいると、家政婦は、朝怠けている。私は1年休み人間だから、いつだって5時に起き、ご飯を食べ、できれば体操をするから、勝手に起きて、勝手に自分のだけ朝食作って、食べた。そうしたらみんな起きてきて、なぜみんなの作らないんだという。だって、みんな9時ごろ起きてくるのに、私はそういうことに合わせる気がないと言って、いつもと違う朝食をうまそうに食べた。やっと家政婦も起きてきて、朝食を作る気になったらしいが、娘は息子と約束したと言って、遊園地のあるファーストフード店に行って朝食するという。休みなのに、みんな勝手な行動をするということになった。ところが、主人が、私に餃子を作れという。昔内戦時代、私が作った餃子が忘れられないらしい。この国には、餃子の皮など売ってないから、皮から作らなければならないし、調味料もニラも白菜も、それらしい野菜がない。私がこの前行ったスーパーで、代用になるものを買ってきたのを知っているから、みんなが集まった今日、作れという。餃子の皮は1晩寝かすのだけど、仕方ない、じゃあ、と言って、始めた。めん棒を買ってきてもらい、何とか具を準備して、形だけ餃子になるような体裁のものを用意した。1人6個ぐらい当たるように、何とかこしらえ、冷凍庫に入れたら、10時半になっていて、久しぶりになれない仕事をしたので緊張したのか、どっと疲れて眩暈がした。そのうち、肉まんも作れと、娘が言う。エルサルおシンが、私が作った肉まんをもう一度食べたいなどというものだから、自分もほしいらいい。内戦時代以外に、私は肉まんを作ったことがない。蒸し鍋はないし、作り方忘れたなあ。なんか、みんなで過去の再現を迫っている。やれやれ。

  2012年05月01日

• 

  レストランで見た花たち

  これ、アーチのくぐり戸に咲いていた花。名前は知らない。これも別のアーチのくぐり戸。鮮やかな赤。

  2012年05月01日

• 

  レストランで見たタイヤの飾り

  これ、タイヤでできている。なかなか面白いオオハシ。これもタイヤ。ケッツアル。

  2012年05月01日

• ここ数日のこと

  ４月２９日この国に残っている唯一の友達、マルタ　ケサーダが、朝食を一緒にしようと誘ってきた。あまり朝食を誘われたことはない。面白いから付いて行った。それはちょっとしたショッピングセンターの中にあるこぎれいなところで、コーヒーにサンドイッチみたいなものを注文し、１時間ばかりを過ごした。あまり｢朝食｣を誘うという習慣は日本になないから、面白かった。ついでにショッピングセンターで食料を買い込み、帰ってきた。４月３０日不思議に日本の連休と同じ時期に、こちらの国も連休らしい。明日はメーデーだから、世界的に行事があるだろうけれど、今日は一体何だろう。とにかく休みで、主人も休暇。散歩がてら、感じのいいレストランがあるから、コーヒーを飲みに行こうと主人が誘うので、危ないなとは思いながら、つえを片手について行った。坂が多いだけでなく、交通規制があるのかないのか、道路を横断するのがものすごく怖い。神経をとがらして歩いているうちに、足が疲れた。日本にいた時から、自転車で慣れたこの足、ほんの少しの散歩にも耐えられないほど弱くなっている。やっとレストランについたけれど、変なレストランで、面白い植物がたくさんあるのだけど、彫刻や装飾品があまりにアンバランスで、ちょっとものを言いたくなる。マリア様だの天使だのの中に、大黒さまみたいな像が入っていて、人魚もいる。周りの植物はどう見たって、マヤの世界。コーヒーは別にこの国のものだけど、なにもないので仕方なく注文したパイはまずかった。

  2012年04月30日

• 

  グロテスクだけどおいしい実

  この前幹に直接なる実というのを写真に撮った。ちょうど良く実ったというを家政婦が二つ見せてくれた。姿はグロテスクだけど、中身はなかなかおいしい。ジュースにしてくれたけれど、ジュースもおいしい。中の白いところがしっとりした綿みたい。種は小さくて少ないから、実をたっぷり食べられる。「ぐあなば」という。日本には来ないな。

  2012年04月27日

• ああ、痛恨の

  ここの家は日光が射さない。これだけ私が回復しないのは、5時に起きて自転車に乗って、朝の太陽を浴び、テレビ体操をして、規則正しい生活をしていた日本の生活から一変して、日光の射さない暗い家で、まったく自分が主体になることなく、二人の病人のなかで、パソコンを相手に暮らし始めたからだ。自転車が恋しい。日光が恋しい。じじばばクラブの体操が懐かしい。３食自炊の自分の味が恋しい。自分のパンツ、自分で洗いたい。自分流儀に整理した一部屋がほしい。ゴミ捨て女に頭に来ながら、外回りを花だらけにしていたあの生活に戻りたい。そう思うと、失ったものはとんでもなく、すばらしいものばかりだった。私が植えた花たちは咲いているだろうか。桜が散って、たぶん、雨どいはつまっているだろう。あの家、私の住みか、あそこに私は魂を置いてきた。それにつけても金がない。去年から、私は乞食になった。娘の癌が発覚してから、どんなに私は自分の起こした不祥事に痛恨の念を抱いただろう。あれがあったら、こんなに苦労しなかった。あれがあったら、あれがあったら、あれがあったら、１０２歳の爺さまの新聞代まで節約して、けちけちしなくてもよかったものを。慙愧の思いに心はひしゃげ、何をやっても立ち直れない。

  2012年04月26日

全3270件 (3270件中 151-200件目)

< 1 2 3 4 5 6 7 8 9 ... 66 >