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カテゴリ:【小説】鴉組
土方を港で見送る美和姉さん。
「土方殿、お世話になりました。ご武運を祈っております」 美和姉さんは深々と頭を下げた。ステもヒロイもそれに習った。 「お姉さんにお見送りいただいて、土方、恐悦です」 「土方殿は最後の武士となろうの」 不意に姉さん、涙を流した。ステもヒロイも泣いた。 美和姉さん、武家の女房である。男を送るのに涙を流すような人ではなかった。 だが、この土方歳三という若者に、武士という、日本の文化に等しい存在の最後の姿を感じていた。 そう、この男の姿に見える歴史の終わりに涙をしてしまったのだ。美和姉さんの家出の理由の完結であった。 「晴れの戦場(いくさば)に送るのに涙ではの、失礼した」 これには土方もぐっときた。 数日共に暮らしただけの3人だった。 まさに本当の姉のごとく美和姉さんは土方に接していた。 ステは寡黙に雑事をこなし、ヒロイは陽気に、日々沈みがちな旧幕軍の連中相手に寿司などを握っていた。 ここ数日、土方は姉のぶと一緒にいた日々を思い出していた。近藤さんや総司と会った頃に・・・皆に会って、そして斎藤は最後会津で別れたきりだが・・・。 美和姉さんは掃除などをしていると、 「土方殿。そなたの横になっている姿は格好悪いの。人前では見せぬ方が良い。せっかくの男前が台無しじゃ」 などと話しかけてきたりした。 「すいません、お姉さん」 そう謝って座り直す土方に、 「台無しだが、楽であればよい」 などと、禅問答のようなお説教が多い。 だがそれが真実で、真心であることは分かる。 くそったれの奥州サムライと思っていた。根性なしが、と。 そんな時この三人に出会った。 この三人が、わずか数日前に会ったとは思えない懐かしさを土方に与えていた。 「死ぬ気分としては最高じゃねえか」 土方は船上にて、見送る三人を眺めながら呟いた。 10月12日仙台折浜、現石巻港を榎本艦隊は出発、同月20日函館に着いた。 人気ブログランキングへ くる天 人気ブログランキング お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2008/12/28 10:39:22 PM
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