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Selfishly

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 [Distance of love]] part.1



     [Distance of love]] part.1






    ・・・【 Start of love 】・・・

 
「Merry X'mas!」「Happy X'mas」の声があちらこちらから上がっている。
 エドワードとアルフォンスは、綺麗に飾り付けられた食堂の入り口で唖然としたまま立ち尽くしていた。




「ちはぁ~」「お久しぶりです」の揃った挨拶と共に、二人は久しぶりの司令部の部屋へと入って行く。
「あれっ?」
 定時から然程過ぎたわけでもないのに、部屋は閑散としていていつも居るメンバーも見当たらない。
――― 訂正。独り机に頬を付けて突っ伏しているハボック以外は。

「よぉ~ぉ・・・」
 見たままの覇気無い声で返ってくる挨拶。
「・・・・・どしたの? ハボック少尉」
「どこか体調でも悪いんですか?」
 とことこと歩いて近付いていけば、ハボックはのっそりと倒していた上半身を上げ、二人に苦笑を見せる。
「いんやぁ~。・・・別に体調は悪くない。――― ちっと、腐っていただけさ」
 そう言いながら火の着いていないタバコを咥えて溜息を落すハボックの様子に、兄弟二人は首を傾げて互いに見合う。
「・・・ふぅ~ん? ―― なぁ、他の皆はどこ行ってんだ?」
 最初の疑問を口にしてみれば、ハボックはまたも、今度は先程より大き目の溜息を吐き出し。
「食堂」
 とポツリと答えてくれる。
「食堂? 皆で?」
 司令部では殆どが交代制で休憩を取っていた。それがハボック独りを置いて、皆食事に行ってるのだろうか。
それに・・・、まだ夕食の時間にはやや早いような気がするが・・・。
「そぉ~お、み~んなで! ――― 俺、独りだけ残してぇ・・・」
 不貞腐れた声音でそう告げると、ハボックはやるせないとばかりにタバコに火をつけて煙をふかしたのだった。

 ハボックの話はこうだ。
 
 24時間体制の司令部では年末だと云っても、全員が揃って忘年会だ納会、
ニュイヤーパーティーなどを催す事は出来ない。
で、いつもはそんな楽しみもなく淡々と年最後の月も仕事に明け暮れて終わるのだが、
今年は司令官の計らいで二手に分かれて慰労会を開く事になったそうだ。

「でよぉ。年末は普段揃ってニューイヤーを迎えられない事も多いってンで、
所帯持ちが主の家族参加組み。で、今日が・・・・・くっ、そぉ!!
 な~んで俺って、こんなにくじ運わるいんだよぉぉぉーーー!」
 と悲しげな雄叫びを上げる。
 要するに独身者達の殆どは、今日のX'masパーティーの方に参加しているわけだ。
ハボックとしては、ぜひとも麗しの女性陣とお近づきになれるチャンスの多いこの日に
参加を熱望していたのだが、何せマスタング組は全員独身者ばかり。司令室を空にするわけにもいかないので、
公平にくじで留守番を決めたのだが・・・。ハボックがその当たりを引いたわけだ。
「あっ・・・そぉなんだ・・・・・・」
 何事かと思えばそんな理由で、兄弟二人も思わず拍子抜けしてしまう。
「代わってくれよって言ったのに、あいつら誰~も代わってくんなくてよぉ。
大佐が『私が代わろう』って言ってくれたのに、軍の女性陣から猛抗議でよぉ・・・・・。
んで、結局俺が留守番てわけだ」
 はぁ~~~とまたしても盛大な溜息と紫煙を吐き出して、ハボックは落胆の大きさを知らしめる。

「僕達が代わって上げられると良いのにね」
「だな。―― けど、留守番が俺らじゃ・・・無理があるしな」
 いつも旅から旅の忙しい生活を繰り返しているが、今回は情報整理を兼ねて立ち寄ったから
比較的時間には余裕がある。ハボックがそこまで行きたいパーティーも
兄弟には特に関心を引かないものだから、代われるものなら代わってやりたいと思ったのだが。
 兄弟の思いやりある会話に、落ち込みからちょっぴり浮上したハボックは。
「ありがとうよ。お前らの気持ち、めちゃめちゃ嬉しいぜ。大丈夫だって。
ニュイヤーの方でも独身者が全く居ないわけじゃないしさ」
「ハボック少尉・・・。そうだ! 家族連れで参加されるんなら、
娘さんも連れて来られる人も多いんですよね?」
 そのアルフォンスの言葉に、ハボックは目をパチクリと開く。
「そっか・・・、そうだよなぁ。―― アルぅ~、お前、何て良いことに気付いてくれたんだよ!」
 アルフォンスの手を取りそうな勢いで浮かれ始めるハボックに、二人もホッと安心する。
「よっしゃーーー! そっちなら大佐も居ないし。
考えてみれば、今日参加したって軍の女どもは殆ど大佐のファンばかりだから、
毒されてる可能性の少ない一般人を狙った方が確立は上がる! よぉっし! それならいける!!」
 何が?とは問い質さず、兄弟はハボックの喜びに水を差さないように、そうそう、
うんうんとにこやかに相槌を打って返したのだった。
「やぁ~、悪かったな。愚痴につき合わせちゃってよ。お前らも丁度この時期に帰って来たんだ。
今日のパーティーに参加してこいよ」
 上機嫌になったハボックは、漸く溜め込んでいた仕事を片付ける気になったようだ。
「俺らが?」「僕たちも?」
 ハボックの言葉に戸惑いを見せる兄弟に、明るく請け応える。
「おお。今回のは軍に所属している人間なら誰でも参加出来る。どうせ晩飯まだだろ?」
「・・・ ああ。こっちに顔出してから宿に行ってと思ってたから・・・」
「なら、ぜひ行ってこいよ! 料理も奮発して豪勢なもんが出てるらしいぜ」
 行って来い、行って来いと勧めるハボックに、兄弟は互いに顔を見合わせて思案する。
「どうする・・・?」
「参加させてもらおうよ、兄さん。どっちにしても、皆に挨拶するにはそこに行かなくちゃいけないんだから」
「ってもなぁ~。飯食いたさに顔を出すってのもな・・・」
 パーティー等に縁の無い兄弟だから、少々敷居が高そうで気が引けてしまう。
「いいじゃねぇか。何かX'masとかに出すケーキとか菓子も一杯用意されてるって言ってたから、
こんな機会でもないと食えねえぜ?」
「ケーキ・・・お菓子・・・・・」
 甘いものに目が無いエドワードが、ハボックの言葉に目を輝かす。
「X'masって、どんなお菓子作るんだろうね?」
「ああ。―― 大体、X'masって何の行事だ?」
「さぁ?」
 アメストリスには宗教が無い為、X'masと言われてもピンと来ない兄弟だった。
「さぁ? 俺も良く知らないが・・・。まぁ別にいいんじゃないか。美味い飯に珍しい菓子に。
挨拶がてら、腹一杯食ってから帰えりゃいい。
 楽しんでこいよ」


 
 そうハボックに言われ、会場になっている食堂に足を向けた二人だったが。

「すっーげえよなぁ・・・」
「いつもと全然違ってる」
 二人は感嘆の思いで、会場を見渡していた。
 会場は大きなカラフルなリボンで飾られ、金銀の月や星に鐘を象った
装飾が至る所に散りばめられている。
 そして圧巻は・・・・。高い天井すれすれに聳えているツリーだ。
 雪を模しているのか、ふわふわと白い綿がトッピングのように載せられ、チカチカと点滅する電飾が
幻想的な様を見せている。
 軍のメインの食堂だから広さは十分ある筈なのに、部屋が狭く感じるほど人が集まっている。
軍服のままの者も少数はいるが、殆どの者が綺麗なドレスやお洒落な服を着て、
このパーティーを楽しんでいるようだった。

「・・・やっぱ、俺達場違いじゃないか?」
「そうだね。司令室の他のメンバーも、これじゃ判んないし・・・」
 会場の様子に気圧された二人が、戸惑いのまま中を見渡していると。
「大佐だ」
 エドワードが一角に集まっている人々の中心に立つ人物を見つける。
「えっ? どこに?」
 アルフォンスの方が背が高い筈なのだが、エドワードの言った人物を見つけられずにキョロキョロと周りに視線を巡る。
「あそこ。ほら、あの奥のやったら女の人が集まってる真ん中」
「ん――? あっ、本当だ。わぁー、格好良いよね、今日はタキシード姿なんだ」
 向うはエドワード達に気がついてはいないだろうが、華やかな女性達に囲まれて楽しく談笑している白一点は、
確かに日頃からお世話になっているエドワードの後見人だ。
「いいなぁ~、大佐もてもてだね」
 同じ男として素直に憧れを抱いたアルフォンスの賞賛の声に、エドワードはフンと鼻を鳴らし。
「・・・全く。にやけた面してるぜ。あんな奴のど~こが良いってンだ」
 と辛らつな言葉を吐き出す。
「兄さんったら・・・。大佐は僕の目から見ても格好良いよ? それにあれはにやけてるんじゃなくて、
微笑んでるって言うんだよ」
「アル! お前の目がどおかしてんだよ。あ~んな奴・・・」
 エドワードの悪態は、自分を呼ぶ声で中断させられる。

「エドワード君、アルフォンス君。帰って来てたのね」
 凛と良く通る声に呼ばれて視線を向けた二人は、暫し茫然と見惚れてしまう。
「どうしたの?」
 黙りこんだまま自分を見つめている兄弟に、ホークアイは怪訝そうに首を傾げて見せる。
こんな時に咄嗟に受け答えできるのは、弟のアルフォンスの方だ。
「ホークアイ中尉、凄く綺麗です!」
 手を胸の前で組んで、アルフォンスは素直に思った事を口にする。
「あら・・・。ありがとうアルフォンス君」
 仕事の時には冷静な彼女も、装った時にそう褒めてもらって悪い気がするはずもない。嬉しそうな微笑に、
アルフォンスはまたうっとりとする。
 その横で薄っすらと頬を染めて自分を見つめている兄の方へと、ホークアイは視線を向けて声を掛ける。
「エドワード君?」
 自分を見つめたまま黙り込んでいるエドワードに不思議に思って声を掛けたのだが、
エドワードは驚いたように目を瞠り視線を逸らすと・・・。
「あ、あのぉ・・・き、綺麗だよ中尉」
 と蚊の鳴く様な声で呟きを零した。
 ホークアイはそんなエドワードに目元を和らげるが、照れ屋な彼が困る事のないようにさらりと礼を告げて、
会場の中へと導いてくれる。
「でも良い時に戻って来れたわ。今日はご馳走も一杯だからしっかり食べて行ってね」
「ありがとう。でも凄いよなー。この飾りつけもX'masに関連しているわけ?」
 テーブルの上に飾られている小さなツリーを指で突きながら、エドワードは興味深そうに眺めている。
「ええ。勿論、全部じゃないんだけど、飾り付けの中には色々な意味合いを籠めた物や色があるそうよ」
「へぇー」
 案内されて見回る目は、真ん中にある大きなツリーに辿り着いて行く。大きく枝を伸ばした木は、
アルフォンスが背伸びしても天辺には全く手が届きそうもない。
兄弟は丁度自分の頭の上に枝を伸ばしている葉に飾られた赤い実と、小枝を振り仰ぐ。
「あらそこは・・・」
 言いかけた言葉を止めて、ホークアイは微笑みながらエドワードの頬にキスを贈る。
「貴方に幸せが訪れますように」
「!! ちゅ、中尉っー!」
 真っ赤になって驚いているエドワードをおいて、ホークアイは横のアルフォンスにも同様の口付けを贈る。
「二人ともこの小枝が付いている場所の下に立つ時は気をつけてね」
「「へっ???」」
 顔を赤らめたまま驚いている二人に、ホークアイは楽しそうに種明かしをする。
「この小枝・・・、やどりぎと言うんだけど。この小枝の下に立った人には、
この実の数だけキスしてもいいって言われてるの」
 そう説明して小枝に付いている白い小さな実を二つ取ると、それぞれに手渡してやる。
「そ、そうなんだ・・・」
 受け取りながら恥かしそうに頷いているエドワードを、彼女は優しい目で見つめる。
「じゃあ、気をつけないと・・・」
 小枝の付けられている枝の下から出ようとした矢先。

「「「よぉ~~~、二人とも!! 俺らからも祝福のキスを贈ってやるぞぉ~」」」
 と見慣れたメンバーが詰め寄ってくる。
「ブレダ少尉にファルマン准尉! フュリー伍長までぇー!」
 どっと押し寄せてくるメンバーにたじたじと後ずさるエドワードを、逃がさないとばかりに押し寄せてくる。
「やめろってぇ~」
「い~いや! 俺達からの祝福のキッスも受け取れ~」
「ホークアイ中尉からキスを贈られるなんて・・・、羨ましすぎますね」
「エドワードさん、アルフォンスさん、ずるいですよぉー」
 要するにホークアイにキスしてもらった二人へのやっかみだ。
「受け取れ~」「嫌だぁ~」
 何としてもエドワードにキスをしようと迫るメンバーに、抵抗するエドワード。
アルフォンスは既に要領よく枝の下から逃げ出してしまっている。
「さぁ~、観念しろぉー」
 ファルマンに羽交い絞めにされ身動きが取れ無くなったエドワードに、少々酔いが回っているブレダが
ん~と唇を突き出して近付いてくる。
「げぇー、気色悪いぃ~」
 逃げるのを観念して、せめて迫り来るブレダを視界から外そうと目を閉じた瞬間。
 
 ふわり~。
 と身体が自由になり、温かな体温に包まれる。

「こらお前達。未成年への悪ふざけは犯罪だぞ」
 自分の頭の直ぐ上で聞こえた声に、エドワードは慌てて目を開いて声の方へと顔を上げる。
「大佐!」
 自分を包み込むように抱きしめているロイに驚きつつ、彼が窘めた相手たちを見ると、皆一様に大人しくなっていた。
「ほら、鋼の。そいつらの傍は危ない。こちらに来なさい」
 身体を抱えるようにして歩き出すロイに連れられて、エドワードも言われるままに足を運んで行く。


「ここなら少し寒いが妙な連中はいないからな」
 そう言って連れ出された先は、食堂傍の中庭だ。食事時の憩いの場所だけあって、大小様々な木々も植えられ、
 昼にはランチを食べれるように東屋やベンチも配されている。
「あ、あのぉ・・・」
 危機を回避してくれた事に感謝はするが、何故いつまでも抱きしめられた格好のままなのだろうか。
 エドワードは気恥ずかしそうに、もぞもぞと身動きをして離してもらえる様にアピールする。
「寒いのか?」
 なのにロイはエドワードのそんな行動をどう取ったのか、自分のコートを広げてその中にエドワードを包み込んでしまう。
「た、大佐! だ、大丈夫! 俺、そんなに寒くないから」
 そんなロイの行動に更に慌ててそう言い募るが。
「・・・君は温かいな。――― 大人は子供より体温が低いんだ。私が寒いから君はそのままじっとしてなさい」
 そう言うロイの顔がやたらと嬉しそうだったから、いつもなら子ども扱いに憤慨するエドワードも思わず反抗しそびれる。
「無事・・・帰ってきてたんだな」
 じっと自分を見つめる視線に耐え切れず、エドワードは視線を落して答え返す。
「あっ・・・うん。今日着いたばかりだけどさ。―― 連絡するの忘れてた」
 と一応謝罪を籠めた言い訳もしておく。
「君が連絡なしなのはいつもの事だが・・・。
 そうだね。今日帰ってくるなら、連絡をくれてれば嬉しかっただろうな」
 そう告げて思案顔するロイを、エドワードが不思議そうに見上げてくる。抱き込まれてる羞恥の所為でか、
 エドワードの頬は外の寒空に居ると言うのに、夜目にも薄っすら赤らんでいる。
 ロイはじっと自分を見つめている金の瞳を見つめ返す。きらきらと光を弾くエドワードの瞳は、
 その奥にも外の光に負けない灯りを宿しているようだ。
「――― そう言えば・・・。先程、中尉にキスを贈られていたようだが?」
 先程の光景を思い返しながら、ロイは何気ない振りで尋ねてみる。
 途端、耳まで真っ赤に染め上げたエドワードが、口早に先程のことを説明して行く。
「し、知らなかったんだ。ツリーがあんま大きかったから、飾りを良く見ようと近付いて見上げてて。
 まさか、小枝の飾りにそんな変わった意味があったなんて」
 恥かしそうに話すエドワードに、思い当たったロイは「ああ」と納得したように頷く。
「やどりぎか・・・」
「そ、そう! あの枝の飾り付けに、そ、そんな意味があるなんてし、知らなくてさ」
 しどろもどろに告げてくるエドワードを見つめながら、黙り込んでいたロイがポツリと独り言を零す。
「―― 先を越されたか・・・」
 小さく呟かれた言葉は、エドワードの耳には聞き取り難く。
「大佐?」
 聞き返そうかと相手を呼んでみる。
「・・・・・いや」
 ロイはそう返して、エドワードの髪を撫でる。
「なっ、何?」
 いきなりのロイの行動に、エドワードが驚いたように声を上げる。
「髪がぐちゃぐちゃになってるぞ」
 そう答えてやり、絡まっている髪を解くように直してやる。
「あっ・・・サンキュー。さっき少尉たちにもまれてたから・・・」
 笑って礼を告げてくるエドワードの頬にそっと唇を触れる。
「―― 君に神とやらの祝福を・・・」
 そう祝福を与え、ついっとエドワードの髪に手を伸ばすと、白い小さな実を1つ取って見せてやる。
「・・・・・・・・・・・・ なっ、な・な・なぁ~~~!?」

 驚き慌てるエドワードを腕に力を込める事で封じ込め、ロイは顔を落して次は瞼へと口付ける。

「君ら兄弟に神の奇跡が訪れますように」

「!!!!!!!!」
 もう驚きすぎて絶句しているエドワードに、ロイは微笑を絶やさぬまま二つ目の実を摘む。

「君が私の想いに気付いてくれますように」

 祝福は願いへと変わってゆく。少し赤くなった鼻の頭に触れながら、離れる時にチロリと舌で嘗める。
 それは3つ目の実。

「君が私を好きになってくれますように」

 4つ目の実では額に。

 そして・・・、最後の実。
 ロイは自分の腕の中で固まってしまったエドワードを愛おしそうに見つめ、
 首を少し傾けゆっくりと覆いかぶさって行く。

 最後の願いは祈りに変わる。
 ――― 君が私の愛に応えてくれますように・・・―――




 ふらふらと会場に戻ってきたエドワードを、アルフォンスが見つけて近付いてくる。
「兄さん、どこに行ってたのさ、もう! あれっ? 兄さん、頭に葉っぱが付いてるよ?」
 鎧の手で器用に兄の髪に付いた小枝を取る。
「これって・・・さっきのやどりぎの小枝? 
 でも変だよね。これ、全然実が付いてないよ?」
 弟がかざす小枝を目にして、エドワードの顔はどんどん赤くなる。
「ねぇ兄さん? えっええ~、どうしたのさ? 顔真っ赤だよ。熱でもあるんじゃ・・・?
 ねぇ、兄さん。兄さんってばー」
 兄を気遣う弟の声をどこか遠くで聞きながら、エドワードは止められた思考の隅で、
 先程囁かれた祝福を繰り返し続けていたのだった。



【あとがき】

 新年でのプレ本の「吉」話~♪
 続きは順次、更新して行きますね。v(^o^)
 3部作で一部しか読めなかった皆さん、スミマセンでした・・・。
 一応、どのお話も短編で読めるようにはしていたつもりなんですが。
 前後があるなら、やっぱ読みたいよねぇ。(えっ・・・そんな事無い?(^_^;)
 と、取り合えず1話目のアップをしておきますです。m(__)m





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