テーマ:英語・英会話のヒミツ(80)
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That's it!
That's it. というのは極めて便利な表現である。英辞郎で調べると、「6つも」意味がある。だがまあ上の2つと下の4つでおおざっぱにくくってしまえば、「その通り」という意味と「以上でおわり」という意味のだいたい2つと言ってもいい。しかしこういうフレーズが日本人の英語学習者には一番難しい。That=「あれ」 it =「それ」 だと思いこんでいるとますます難しい。 「あれはそれだ」 ……???? もっとも「あれ」とか「それ」というのは日本語でも難しいですね。 「まあ、それはね、アレですよ」 なんぞと曖昧にごまかすような言い方を外国人が簡単に習得できるとは思えない…、 …というのは話がそれました。 元に戻す。 Thatは「あれ(相手からも自分からも遠い)」である場合もあるが、相手の近くにある場合、つまり日本語での「それ」にあたる場合もある。That's it.におけるThatは後者である。とにかく、自分の手元から(少しでも)離れたものを「指し示して」いるのがthatだ。 That's it.というフレーズにおいてはたいがいの場合、指し示しているのは具体的なモノではなく、言葉やアイデアや状況を指しているのだが。 では「it」のほうは? 「それはそれだ」 じゃますます分からない…。 前項でも言ったが再度言う。 It は「それ」ではない。 実はitには日本語で対応する語がないのである。 Itは何も「指して」いない。なぜなら、 「すでにお互いが分かっていること」 こそがitなので、改めて「指し示す」必要がないのだ。 だから「それ」ではない。 すでにお互いが分かっていることを、日本語では言葉にしない。 「私、チーズケーキ好き」 「あ、私も好き!」 英語にしたら "I like cheesecake." "Oh, I love it too!" 必ずここにitが入る。I love! だけでは不完全である。 だがこれを再び日本語に訳すとき、中学生などはしばしば 「私もそれが大好きです」 などとやる。しかしこれは日本語として自然だろうか? 否、である。普通はこんなふうに「それ」とか言わない。 前項でしつこく出した "What's this?" "It's a pen." にしても、 「これはなんですか?」 「それはペンです」 では、いかにも「訳しました」という雰囲気になる。普通の会話では 「これはなんですか?」 「ペンです」 だろう。これまたこれを再び英訳して "What's this?" "A pen." …これでももちろんいいのだが、ネイティブはかなり自然にIt'sをつける。しいて言うならば「です」の部分がbe動詞のisにあたるわけで、上のやりとりを「正確に」またしても和訳したら 「これはなんですか」 「ペン」 …と、そうとうぶっきらぼうな響きである。 実は it だけではない。他の人称代名詞のhe やsheや、I やyouでも、それらは 「どれ(だれ)を指しているのかすでに分かっている」もの(人)について使うので、日本語ではたいがいの場合表さない。 "Who is that man?" "He is the new teacher." 「あの人だれ?」 「新しい先生だよ」 ここに「彼は」とか入れるととたんに「翻訳くさく」なってしまう。 "I'm hungry." これにいちいち「私は」などとつけて訳す必要がないのは明白だろう。 "You are late." 「あなたは遅刻です」などとは言わず「遅刻ですよ」だけで済む。 「言わなくても明らか」 なものは言わないのだ、日本語では。 かつて私は、日本語には「主語」がない、省略する、と思っていた。では実はそれは正確ではなかったようだ。主語だけでなく目的語であっても、「自明なもの」を省略するのが日本語のクセなのである(逆に言えば、主語でもその場において自明でなければ当然コトバとして持ち出す)。 それはつまり日本語では「文型とか語順はどうでもいい」からなのだ。「てにをは(助詞)」で必要なパーツをくっつけていけば成り立つ。 しかし「文型・語順がイノチ」の英語は、自明だからといってやたらと省略してしまうわけにはいかない(省略できるところも多々あるが)。文型が崩れてしまうから。 だから、「代名詞」というものがたくさんあることになるのである。文型を成り立たせるために、そこにとりあえずダミーを(?)置いておかなければならないからだ。 逆に言うと日本語では「代名詞」というのは本来はないはずなのである(そこにむしろ、自分を表す言葉…僕とかワシとかおいらとか…や、相手を表す言葉…君とかオマエとかあんたとか…が他種類出現する余地があったのだとも言える。) Itに話を戻す。 つまりは、お互いすでに分かってしまっている自明の(特定の)モノのうち、he,she,I, you,we,theyという代名詞で表せるモノ以外の「すべて」をitは受けている(「指している」のではない!)。 「天候・時間・寒暖・距離のit」などと習ったことがある人も多いと思う。そして 「そういうitは日本語に訳さない」 などと言われる。 だがこれまで述べてきたことでおわかりのように、it は「いつだって訳さない」のが自然なのだ。 問題は、英語から日本語を考えるときitを訳さないというのは、まあ意識すれば簡単としても、その逆はかなり難しいと言うことだ。日本語では言ってさえいないものを、ダミー扱いとはいえ、英語では改めて持ち出さなければならないのだから。 これに慣れるのが英語習得の上ではひとつのキーポイントである。 日本語に本来存在しない概念をマスターするのだから、ことはそう簡単ではない。 だが、効率的な攻略の第一歩は「敵を知る」ことだ。これをキーポイントとして意識することで習得の効率はよくなると期待される。 とりわけここでとりあげている「it」と、 もうひとつ「you」も重要である。これまた you=「あなた」ではない! からなのだ。 (さらにいえばthey=「彼ら」でもない) 英語学習はオベンキョウではなく、運転免許を取るのと同じような、「技術の取得」である。 理屈だけ分かっても使いこなせないが、やみくもに暗記してもやはり使いこなせない。 「理屈を知って、かつトレーニングする」 のが正しい「技術の取得法」である。 ということで、日本語に存在しない「代名詞」、とりわけitとyouについて、次項以降でもう少し掘り下げてみていこう。That's itについての謎解き(?)もそちらでまた。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
Mar 21, 2009 12:03:21 AM
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