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テーマ:「愛」・「命」(2791)
カテゴリ:Life*Live*Love
ポン、ポーンと、 呼び出しチャイムが鳴った。 『待合室306号室でお待ちの薬袋家ご一同様…………』 静かな館内に、親族達のお喋りと、放送が響く。 薬袋家の親族達が、ぞろぞろと火葬炉に向かって歩く。 『それでは、薬袋博史様の納骨の儀を行います………』 あぁ………… おじいちゃんの骨は………白く、ぱりぱりしていました。 所々、抗がん剤のせいなのか、青緑色にぽつりと染まっていました。 『埋め込まれていたと思われる金属が出てきましたが、 こちらはご一緒に納骨致しますか?』 『いいえ、こちらは結構です……』 史子おねーちゃんが答えた。 ………10年前。 あれはね、北海道への修学旅行の前日だったよ。 『あんりちゃんっ、すぐ病院へ行こう!』 『おかーさん、どしたの?』 『おじいちゃんが………………!』 この時も、私は物凄くショックでした。 いつも元気なおじいちゃんが、鉱石を掘るお仕事場で、 腕が機械に巻き込まれて、手術をすると言うのです。 『……やだ……いやだよぉ、おじいちゃん………!』 『あんりちゃん、泣かないでおじいちゃんのお見舞いに行こう? 大丈夫、おじいちゃん大丈夫だから…!』 『いやー、怪我しちまったよー』 おじいちゃん、は。 いつも通り、ニコニコしながら、病室にいました。 痛いはずなのに。 腕に金属が入っているのに。 ちっとも笑顔を絶やさないんですよ………… 私は、ぼろぼろ泣きました。 『なーに泣いてんだいあんりは~…泣くな、泣くな。』 ………おじいちゃん……… あれから10年だよ。 おじいちゃん…………… お箸を使って、二人一組で、おじいちゃんの骨を骨壺に納める。 『……ひぃ、かいがらみたいだね』 まーくんが、言った。 まるで貝殻のように、儚く、白く、 おじいちゃんは、小さな骨壺に納められてゆく。 小さなハプニングが起きた。 おじいちゃんの骨が、骨壺に入りきらない。 『ヒロっさん、骨太で健康だったんだね……』 和坊おじちゃんの奥様、寿子さんがそっと言って、涙した。 そして、 照幸おじちゃんは、 そっと、火葬場の職員さんに渡された棒で、 おじいちゃんの骨を、少し砕いた。 あぁ……おじいちゃん………… あなたは、本当に元気で、お日様みたいな人でした。 あなたを形作る骨も、それを象徴していました。 おじいちゃん……………………… 薬袋杏梨は、薬袋博史の孫です。 私は、あなたの孫であることを、非常に誇りに思います……。 薬袋博史の血を引く自分を、誇りに……思います…………。 あたしに、感傷に浸る暇は与えられていない。 お父さんに見送られ、あたしは葬儀用スーツのまま、新幹線に飛び乗った。 新幹線に乗って、ふうっと一息ついた瞬間、 涙が流れて止まらなくなった。 おじいちゃん…………… 博史おじいちゃん…………… おじいちゃ…………………… 胸の中で、繰り返し呼ぶ。 薬袋博史、私を育て上げてくれた祖父の名を。 ………………――――――――――――――――――――――――――――。 『次は、終点、東京です…………』 …………って、 ぇえっ!? そう、私は、 すっかり新幹線の中で、寝てしまったのでした…………… わわわ、ロープレの中身、覚えてないよぉぉぉ! 私は、乗り換えのために、東京駅の中を走りました。 『お父ちゃん……あんりちゃんに知らせようか?病気のこと……』 『いいいい!!知らせなくていい!!知らせるな!!!! あんりがしんぺぇしちまうべ? 友子、あんりにも、みんなにも、言わねぇでいいんだぞ? 知らせなくていいかんな…?』 おかーさんから聞いたよ、おじいちゃん…… あんりがこういう性格だから、心配させたくなかったって。 あんりが東京でがんばってるから言うなって… そう言ってたって…聞いたんだよ、おじいちゃん… だから、ねぇ、 ―――――見守っててね、おじいちゃん……! 今これ観たら、きっと泣いてしまう。 母が言ってました。 『葬儀場の方の仕事ぶりは、本当にこの映画のようだった』と。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
March 21, 2009 11:33:41 PM
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