カテゴリ:表沙汰
水たまりがあった。誰もそれを気にしなかった。だから、水たまりから何かが発生するのを、誰も見ることがなかった。水たまりからは何かの法則にしたがった、球体が次々と発生した。また、何かの法則にしたがったブラックホールもつくりだされた。 やがて、誰かが気づく頃には水たまりから生まれた球体が星へと変わっていた。ある球体からは光がうまれた。またある球体からは砂が生まれた。そしてその球体の砂は砂地になった。水が循環するようになった。雲と海ができた。雲と海の中間体として、神がうまれた。神が人間を創造した。人間が建造物や調度品を創造した。 そう聞かされた。神がまつられている場所では。だけど、その建物から十字路をふたつほど曲がった先にある、本がまつられている場所で本を開けてみるとどうなるか。 何も無いところで突然爆弾テロみたいな爆発がおきて、世界ができた。世界の廃棄物がぶつかりあって、星ができた。そのなかには地球の姿もあった。はじめは灼熱と氷河をくりかえした地球も、何度も廻るうちに次第に安定していった。そして水の中に生物の発端がうまれた。微生物だ。やがてそれは進化して、陸にあがった。色々な生物になった。猿もうまれた。猿がやがて人間になった。そう教えられる。 だが生きていることに対するそれらの問いはもう古いのだ。「一度も自分が何故生きてるのかなんて考えたことが無い」それが「何故自分は生きているのか」に対する本当の答えだった。 「国境を越えるには・・・」 片言の言語で話しかけられた。 「パスポート、身分、証明書?が、必要、だから・・・」 また片言の言語で話しかけられた。 窓から止まった列車の外を見てみた。なにやら雪がふっていた。雪が積もっていた。皮とその中身だけになった灰色の木々にのしかかっていた。 「この先、国、には入れません・・・」 僕は列車から外に出された。僕とその荷物は雪まじりの線路の前にちょこんと置かれた。数分後、列車は雪の粒がつくりだすブラックホールの奥へと消えていった。その反対側の深淵から、ひとがひとり、歩いてくるような影が、雪のあいだから見えた。 僕は足下をみた。雪と泥がまざりあっていた。空のほうをみた。真っ白だ。これは寒い。近づいてくる影のほうをみた。ぶかぶかのコートに耳を隠すニット帽と長いマフラー、赤と緑と白いフワフワにまみれた女の子だった。僕と同じパスポートの問題で、列車を追われたのだろうか。 女の子は僕の近くまで来たら立ち止まって、手にもっていた小枝を僕が今入ろうとしてた国のほうへむかって投げた。枝はみるみるうちに白い雪にすいこまれていった。 「この辺は、以外と足場が悪いから・・・・」 と、彼女は言ったのを見た。 「あれ?」 次に僕に見えたのは、僕の姿だった、そして、体の表面からぶかぶかのコートに耳を隠すニット帽と長いマフラー、赤と緑と白いフワフワを感じ取った。風と雪が円を描いて吹いていった。僕の身体は女の子の身体といれかわっていた。階段から一緒に転げ落ちたわけでもないのに。 「お気をつけて」 と、僕の身体に彼女が入ったと思われるものに言われた。 「いやいやいや」 僕は言った。鏡にうつった自分と対話しているような気には不思議とならなかった。 「なんでこんなのとなんってのよ」 と、僕は言った。 「・・・うーん、寝てな!」 「ぎゃ」 僕は身体の何処かを殴られて意識をなくした。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2007.11.11 22:11:21
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