KINTYRE’S DIARY~旧館

2009/03/01(日)17:23

映画『接吻-Seppun』を観て

映画・邦画(57)

34.接吻-Seppun ■制作:ランブルフィッシュ ■製作年・国:2006年、日本 ■上映時間:108分 ■鑑賞日:4月1日、ユーロスペース(渋谷) ■公式HP:ここをクリックしてください □監督・脚本:万田邦敏 □脚本:万田珠実 □製作:仙頭武則 □照明:和田雄二 □撮影:渡部眞 □録音:臼井勝 □美術:清水剛 □音楽:長嶋寛幸 キャスト ◆豊川悦司(坂口秋生)住宅街の親子三人を殺害した殺人犯 ◆小池栄子(遠藤京子)家族とは疎遠で職場でも孤独な28歳のOL ◆仲村トオル(長谷川)坂口の弁護を担当する国選弁護士 ◆篠田三郎(坂口の兄)坂口唯一の肉親である兄 【この映画について】 「出逢うはずの無かった男女三人が織り成す”究極の愛の物語”」がこの映画のキャッチコピーである。更に、「映画史上稀に見る”接吻”の衝撃。そして激情のヒロイン=小池栄子の驚くべき新境地!」と加えられている。 この2つのキャッチコピーの前者はこの映画の3人の登場人物の出逢いを短く語ることに成功している。後者は小池栄子の「女優」としての見事なまでの演技力という陳腐な表現を超えた、このキャラクターがもつ複雑で多面性を持ち合わせた性格を見事に表現している。 小池栄子を「TVタレント」とか「巨乳アイドル」(確かに物凄い巨乳です!)とか「プロレスラーと結婚した新婚妻」とのイメージしか持たないで見たら、良い意味で衝撃を受けるでしょう。ミニシアター系の邦画に興味のある方にはお勧めしたい映画です。 【ストーリー】(一部ネタばれあり) 都内の某住宅地。白昼の閑静な住宅街でその異様な事件は発生した。坂口秋生は、何の当てもなくこの住宅街を彷徨い歩く。坂口は片っ端から玄関のノブを回している。 その中の一軒家に侵入し、親子三人を鈍器で皆殺しにしたのだった。 まもなく、坂口は警察とマスコミに自らが犯人であると告白する。そしてTVカメラが河川敷で坂口を取り囲んでインタビューをする生映像を流しているとき、警察は地団駄を踏んでいた。そうした最中に駆けつけた警察官によって坂口は逮捕され、その際に「ニヤリ」と薄笑みを浮かべた坂口の表情がアップで全国に流れた。 その逮捕の瞬間の映像をみていた一人の女性がいた。28歳の遠藤京子は家族とも疎遠で、会社でも同僚達から孤立し一人さびしく残業をする毎日だ。 京子は坂口がにやりと笑った映像をみたその時から、何かに取り憑かれたかのように坂口に一瞬で恋をした。坂口に関する記事を隅々まで読みスクラップブックに貼り付ける京子。 その頃、坂口は警察の取り調べにも黙秘を貫き、接見に訪れる国選弁護士の長谷川にもどうようだった。長谷川は何とか「私はあなたの味方です」と話しかけるが効果は無かった。 初公判から熱心に裁判を傍聴していた京子は、長谷川に近付き坂口への差し入れを依頼する。 最初は断った長谷川も京子の様子を察し、差し入ればかりか手紙までも託される。或る日、京子に少しずつ惹かれていった長谷川は、二人で群馬に住む坂口の唯一の肉親である兄と会う。そこで報道では分からなかった不幸な生い立ちを知ることになる。 長谷川の心配をよそに、京子は自らの境遇と坂口の境遇に何かを感じたことで、遂に、獄中の坂口との面会を果たす。始めは戸惑っていた坂口も徐々に京子を受け入れ、やがて、京子は坂口と毎日のように面会に訪れ「結婚」を申込むようにまでなった。 死刑判決の控訴期限が近付く中で、或る日、京子は長谷川を通して刑務所長の許可を得て面会室ではない所内で「直接面談」出来るように懇願し許可された。 やがて、その日が訪れた。長谷川と二人で刑務所は向う途中で、京子が長谷川にあるものを感謝の印として渡した。 そして、念願叶って刑務所内で坂口と二人で会うことになる。しかし、その時、長谷川も巻き込んで三人は破滅的な運命をこのあと辿ることになるとは...。 一体、その運命とは?是非、映画館かDVD発売時にご覧下さい。 【鑑賞後の感想】 この映画は出演者がトヨエツ、小池栄子、仲村トオルと知名度の高い3人が揃っていながら、何故か都内では1館だけでの上映で、後は川崎での上映だけだ。これは製作会社が大手ではないのが原因だろうが、特筆すべきはオリジナル脚本で勝負した点だ。 ここ最近のパターンとして子供用アニメは除いて、人気TVドラマの映画化やヒットコミックの映画化などが目立つなかでオリジナル脚本で勝負した心意気を買いたい。 さて、この映画を観て感じたのは「小池栄子」の演技力というか表現力には驚かされた。普段TVのバラエティ系番組でのイメージが定着し、最近プロレスラーの夫に一目惚れして結婚したばかりの彼女の女優としての才能がこれほどまでに豊かだったとは(胸も豊かですが...)知らなかった。 まず、第一にセリフの少ない主役のトヨエツ相手に堂々たる演技だ。トヨエツは口数が少ないキャラで、一方の小池栄子の役は普段は寡黙なOLだが、トヨエツと面会しているときの彼女の表情は豊かだし表情の使い分けも出来ている。 ストーリー的には、彼女が女の勘で一瞬にしてトヨエツの生い立ちに自らの境遇との共通点を動物的に察知する。そこからの彼女は毎日のように面会室でまるで長年連れ添った恋人のようなムードを漂わす。最初は煩わしく思っていたトヨエツも彼女の純真さに惹かれて行く。 しかし、この映画が単なる殺人犯とその男に恋した孤独なOLとの間の話に終始しなかったのは見事。国選弁護士役の仲村トオルは、彼女からトヨエツに関することで色々と相談に乗っているうちに、何時の間にか彼の方が彼女の存在を無視できないまでになっていた。 この弁護士が彼女の願いを骨を折って実現してきたことが、驚愕のラストシーンへと見事に繋がっているのだ。 弁護士とOLが殺人犯と面会するために刑務所に向う途中で、彼女があるものを彼に渡したことが大きなポイントだった。 このラストシーンは、その直前の二人のやりとりを注視していると察知出来るが、まさかこういう終わり方をするとは...。そして、エンディング直前に弁護士が彼女に放った一言と、その時の彼女の何ともいえない表情がこの映画の醍醐味であった。 中々の名画なのだが、残念ながら前述のような理由で全国拡大公開の可能性はない。従って、近くの映画館で上映されていなければDVD発売時かケーブルTVなどでの放映を楽しみにしてください。 【自己採点】(100点満点) 95点。今年一番の素晴らしい内容の映画でした。 人気blogランキングへ←映画の話題がザクザク

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