映画『未来を写した子どもたち』を観て~アカデミー賞受賞作品
97.未来を写した子どもたち■原題:Born Into Brothels:Calcutta's Red Light Kids■製作年・国:2004年、アメリカ■上映時間:85分■字幕:桜井文■鑑賞日:12月13日、シネスイッチ銀座(銀座)スタッフ・登場人物(本人)□監督・撮影・編集:ロス・カウフマン□撮影:ザナ・ブリスキ□音楽:ジョン・マクダウェル□編集:ナンシー・ベイカー◆コーチ◆アヴィジット◆シャンティ◆マニク◆プージャ◆ゴウル◆スチートラ◆タパシ【この映画について】インドには「カースト」という身分制度がある。1950年に全廃されているが、5000年以上もの歴史を持ち、ヒンドゥー教との結びつきが強いために、実際には人種差別的に根付いている。抜け出るのは難しいが、その手段のひとつに「教育」がある。しかし子どもたちの親はたいてい貧しく授業料を払えないし、教育の必要性にも理解がない。手助けがあれば、多くの子どもたちを救えることを教えてくれる。それにはまず社会の理解が大切なのだが…。1998年に撮影目的でインドの売春窟を訪れたニューヨークの写真家ザナ・ブリスキ。学校に通うことなく買春の手伝いをして暮らす子供たちが彼女と出会い、写真撮影を学ぶことで希望を取り戻してゆく姿を捉えたドキュメンタリー。第77回アカデミー賞最優秀長編ドキュメンタリー賞をはじめ、世界中で数多くの賞を受賞している。(この項、gooより転載しました)【ストーリー&感想】(ドキュメンタリー)1998年、売春婦の姿を撮影する目的でインド・カルカッタの売春窟を訪れたフォトジャーナリスト、ザナ・ブリスキは、そこで暮らす子供たちに出会った。子供たちと仲良くなった彼女は、カメラを与えて写真撮影を教え始める。売春窟の子供たちは学校に通わず、母親たちの売春の手伝いをして暮らす。そして、いずれ女の子は売春婦に、男の子は女たちの世話をする運命にあった。だが、カメラを手にした子供たちは、それを使って自分を表現することを覚え、写真を撮りながら外の世界に触れてゆく。動物園を訪れ、浜辺で嬉しそうに遊ぶ子供たち。その姿を見ながら彼らの将来を案じたザナは、子供たちを売春窟から救い出そうと行動を始める。それは、彼らを学校に通わせることだった。子供たちを受け入れてくれる寄宿学校を探し、入学のために役所の複雑な手続きをクリアしてゆく。その一方で、ザナは子供たちの学費集めのために、子供たちの撮った作品の写真展をニューヨークとカルカッタで開く。自分たちの撮った写真が展示されているのを見て、喜びで顔を輝かせる子供たち。しかし、ザナの努力だけではどうにもならない運命が子供たちを待ち受ける。アムステルダムで開催される写真展に招待されたアヴィジッドは母親の死に動揺。スチートラは家族に売春を強要させられそうになる。タバシは母親になじられながらも、幼い妹の運命を心配する。やがて、彼らの境遇は明暗が分かれる。数名の子供たちは現在も寄宿学校で勉強を続けているが、それ以外は学校で姿を見ることができなくなっていた。2002年、ザナは引き続き子供たちを援助するために“KIDS WITH CAMERA”と称する基金を設立。写真を学ぶことを通じて、社会から置き去りにされた子供たちを救おうとする取り組みである。この基金は現在、カルカッタに加え、エルサレム、ハイチ、カイロへ写真家を派遣、子供たちの援助を続けている。インドでは公式にはカースト制度は廃止されたことになっているが、現実には未だにこの制度が根強くインド社会には残っていて、貧困と共にインドの発展を阻害している。この映画でも一人のカメラマンが、自らの活動を通じて一人でも多くの子供たちが現状から脱却出来るようにと骨を折っている。子供たちの屈託のない笑顔をみていると、売春窟の中での生活とは言え健気にそして力強く生きている様子がカメラを通じて伝わってくる。子供たちの明るい笑顔とエネルギーだけでは難しいが、こういう活動をしている人が居ることをこの映画を通じて始めて知った。それでもこれを観た人が、では子供たちの手助けをするために何が出来るかと問われると、身分制度の無い日本に住んでいると私もそうだが何も出来ない。せめて、こうした映画を通じて、こういう世界があるのだという現実を知ったことで、何時の日か行動に移せる時が来たら、この映画を観たことが役に立ったと思いたい。最後に、この映画に出ていた子供たちだが、撮影後、周りの協力もあってアヴィジットは渡米し私立高校へ入学し、スチートラとタパシは結婚した。こども支援団体の寄宿学校で学ぶ者がいる反面、親の意思で今でも売春窟で生活している子供もいる。