カテゴリ:日ノ本は言霊の幸はう国
◇ 6月7日(日曜日); 旧五月十五日 癸未(みずのと ひつじ): 先勝、東京鳥越神社例大祭
美和子さん; 今日は鳥越神社の夏の例大祭の日ですね。 ここしばらく入梅間近のはっきりしない天気が続きましたが、今日は朝から晴れて暑い陽気になりました。この陽気の中、朝からお神輿が路地から路地へと、又練り歩いているのでしょう。 あのお神輿は「千貫神輿」というのだそうです。千貫というと4トン近くもの重さになるのですが、実際それほどの重さがあるのかどうか。他の土地にも千貫神輿というのは幾つか有るそうですが、鳥越神社のそれは元祖として、とにかく都内では一番重い神輿のようです。狭い路地を大きな神輿(一辺が4尺3寸もあるそうです)をお渡しするために担ぎ棒が短くなっているので、余り大人数では担げない。だから担ぎ手一人あたりの負担は大きく、その意味でも「都内では一番重い」というのです。 担ぎ手も下町ッ子の意地をかけて練り歩くのでしょうね。 先週だったと思いますが、たまたま通りがかった池之端で「元黒門町」のお神輿を見ました。黒門町も今では上野一丁目などと呼ぶのかも知れませんが、お神輿はちゃんと伝来の町名で担がれているのは嬉しく思いました。鳥越神社のお神輿もずっと続いていって欲しいと思いますね。 そういえば先日ブックオフで、井上ひさしの「浅草鳥越あずま床」(新潮社)という本を見つけて、思わず買ってしまい読みました。浅草橋駅の北側に広がる商店街に、床屋、銭湯、千代紙屋など小さな商いを営む、6人の還暦間近のオジサンたちを主人公にした「オムニバス小説」とでもいうものです。6人は小学校からの友達でご近所同士。全員が鳥越神社の氏子でもあり、誰かに何かあれば我が事のように怒り、喜び、悲しみ、又おせっかいを焼き、という絵に描いたような下町の庶民たちです。 中に含まれる8話は順に、「浅草鳥越あずま床」、「上野西郷花ふぶき」、「忍ぶ恋路は柳橋」、「踊る金髪浅草寺」、「はり毛はり紙花川戸」、「迷う心の待乳山」、「すまじき恋を駿河台」、「あぶらかだぶら泪橋」と、タイトルを見れば話の舞台はすべてあなたのお馴染みの場所ばかりでしょう? 意外かも知れませんが、最近の僕はこういう本に癒しを求めてしまいます。下町の風情とか、人情とか、昔は当たり前で今は失われつつあるものに懐かしさを感じてしまうようです。どうも人間的には弱くなったようで、ちょっと危険かもしれませんね。 それで、読み終わって奥付を見たら発行は昭和50年だと!もう34年も前なのです。本の装丁もページも綺麗だったので、まさかそんなに「時代物」の本だとは思っても見ませんでした。でも物語の中の情景描写などには少し「今とは違うようだな。いつ頃の話なんだろう?」と思わせるところがありましたがね。 34年前というのは、僕はアメリカの東海岸の田舎町で独り奮闘していた頃です。前ばかり見て一生懸命だった。それが今になってこの本に描かれている情景や、鳥越神社のお祭りなどを懐かしく思うようになっている。 懐かしくなった時には、ちゃんと残っていて欲しい。そこに戻れば、自分のアイデンティティを取り戻す事ができる。文化とか伝統というものはそういうものであるのでしょうね。 今頃あなたは浴衣姿で縁台に腰を下ろし、祭囃子を遠くに聞きながら軒先の江戸風鈴でも眺めていらっしゃるのでは、と勝手に想像しています。僕はお祭りに行けませんがどうかお楽しみくださいますよう。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2009.06.07 14:36:02
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