2010/05/04(火)17:58
皐月
☆ 5月1日(土曜日) 旧三月十八日 辛亥(かのと い) 友引:
今日から五月。今年も既に三分の一が過去になってしまった。
五月の古名は「さつき」で「皐月」と書く。
「皐」と言う字は難しい字で、他にこの字を使う用例は殆どといって良いほど見ない。この字は俗字で、本字は「皋」と言うのだそうだが、この字も私は知らなかった。
字の意味は「白い気が立ち上る沢」というのだそうだが、何となく深山幽谷を思い浮かべることが出来そうだが、それがどうして五月の名称に使われたのかは分からない。
金田一春彦という言語学の先生がいらして、今はお父さんの京助さん共々雑司が谷霊園に眠っていらっしゃる。この春彦先生の「ことばの歳時記」によるとさつきの「さ」は田の神様に因んだものに使われる音だそうだ。
「さなえ」も「さおとめ」もやはり田の神様に関係しており、「さなえ」(早苗)は田の神の苗、つまり稲の苗のことであり、「さおとめ」(早乙女、又は五月女)は、その早苗を神のおわす田に植える乙女のことをいう。
田植えが終わると、田の神は安心して天に昇りお帰りになるが、それを「さのぼり」と称してお祝いをする。この「さのぼり」は「さなぶり」(早苗饗)と転訛して、未だに地方の農村では祝われているところがある。
つまり、「さつき」とは「田の神の月」という意味に違いない、と金田一先生は仰る。・・・なるほど。
ところで、こういう月の名称を考える時には、これらが古名であることを思えば、当然旧暦で考える必要がある。旧暦の月は今の暦より進みが遅いから、今年の場合、旧五月はいまの暦の6月12日から7月11日までの期間になる。そうなると、旧皐月の頃はもう田植えも終わっており、水田では稲の葉が青々と茂る頃である。すくすく育てば次の月、つまり文月になる。文月は「穂含み月」に由来すると言われ、稲が穂を付け始める頃とされる。だから皐月は、稲の結実に向けての大事な月だったのだ。
因みに、「さみだれ」(五月雨)も、やはり「田の神の雨」という意味で、皐月に降る雨のことだ。つまりは梅雨の頃に降る雨と言うことになる。
「さつきばれ」(五月晴れ)も本来は、梅雨の頃の貴重な晴れ間の意味であったが、明治時代に暦が改められて以来、ちょうど今頃の新緑まぶしい晴れの天気を言うことがむしろ普通になった。
今行われている様々な行事も、お盆のように、地域によって旧暦と新暦が混じりあっていて、いささかややこしい。総じて云えば農業中心の生活からの離脱が、季節感にも影響していることなのだろう。