2022/07/19(火)08:35
愛宕山のきのこたち-3 イグチたち
傘の裏が管孔であるきのこを総称してイグチというが、多くは成熟すると傘のヘリがまくれ上がることから猪や豚の口に似ているとして名づけられたものだ。この40年近い野山のきのこたちとの出会いの旅でもイグチは激減した。森林遷移の更新と環境汚染の深刻化が同時にやってきたせいと思われるが、この日のつつじ尾根から月の輪寺への道筋でニガイグチの仲間(Tylopilus)がちらほらみかけられた。
こちらは大型のイグチの出始めで、キイロイグチかと思って近づいたが、ちらり見えた管孔はほんのり人肌色。明るい褐色の傘といい、柄の見事なフォルムといいヤマドリタケ(Boletus)の仲間であろう。どんな未来が待ち受けているかは神のみぞ知る段階の幼少期のきのこであった。
過乾燥の森がようやく一息ついたまさにその瞬間の旅で、大地のそこここからやがて顔をのぞかせると思われるが、気の早いきのこは待ちきれずにこうして顔をのぞかせている。
きのこはいずれもその一生を2~3日でビデオを早送りしたかのようにみせてくれるので、私たちの「きのこ展」では佐用町の瑠璃寺に伝わる重要文化財の『小野小町九相図』に例えて出展したことがある。
天台宗により弘められた止観のツールで、人生のはかなさを知り諸行無常と心得て悟りを開くためのものである。