Toi toi toi !　指揮者 直井大輔のBlog

というNHKの番組を観ました。
サッカー日本代表の小野選手や川口選手らを育てた、大瀧雅良氏をクローズアップ。
高校サッカーの名門校、清水商業のサッカー部監督である氏は、
自らを「監督ではなく、教師」と言います。

挨拶や服装といった、人として当たり前なことを当たり前にできるように指導する。
かつて、サッカー部の主要選手が制服のシャツを出してたのを目撃し、
大切なインターハイのメンバーから外したこともあるほど。
ルールがある以上、それを破って勝ったとしても意味がない。
勝つことよりももっと大事なことがある。


その大瀧氏が赴任した頃、ただガムシャラにサッカーを教えていたそうですが、
容赦なく厳しい指導で技術や戦術を教えても、なかなか結果に結びつかず、
挙げ句の果てに「あのサッカー部に入ると、どんなに良い選手でもつぶされる」
とウワサがたってしまい、部員を激減させてしまったことも。

ある年、ドリブルの天才と呼ばれていた生徒「風間八宏」が入部してきました。
しかし、いくら練習を積んでも彼の良さが活かされることはなく、
大瀧氏は、ふとグラウンドの外に出てしばらく練習を眺めます。
すると、風間はせっかくドリブルが得意なのに、
先輩からパスを要求されてばかりで、ボールをほとんど持っていないことに気がつきました。
大瀧氏は練習を中断し、風間にむかって、
「お前の思うようにやってみろ」と、全員の前で言いました。

生徒たちは、どうすれば彼の良さが活かせるかを自分たちで考え始め、
部の活動時間外でも、自主練習をしたいと大瀧氏に頼みに来たとのこと。


「教師の仕事は、教えることではない。考えさせること」

氏の口からは、何度も『考えなさい』という言葉が生徒たちに投げかけられます。
教師が答えを教えてしまっては、生徒は考えることをせず何も身につかない。
全体に問いかけるのではなく、一人ひとりに問いかけます。
自分の問題として認識させるため。

「お前がボールを持ったとき、どうしてあの選手はこのポジションにいるんだと思う？」
「お前の弱点は何？」
そう問いかけられると、多くの生徒は黙ってしまいますが、
大瀧氏は「それはこうだからだろ？」とは絶対に言いません。

「考えなさい」

この指導法は時間がとても掛かると思います。
それでも生徒たちに考えさせることを徹底します。


名門校であるがゆえに、中学時代「天才」ともてはやされた生徒も入部してくる清水商業。
たとえ天才であっても、そのプライドにしがみついていては人間は伸びない。
そんな選手には、
「心が問題。それが変わらない限り、どんなにコンディションが良くてもお前は使わない」
とスバリ言い放つ大瀧氏。
自分を変えようとする人間だけが伸びていく。

『自分で見つけた答えだけが、自分のものになる』
生徒たちはきっと、簡単に答えを教わるよりももっと大きくて大切なものを掴むことと思います。